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自ら勝って減量を取りたい! と意欲いっぱいの松若騎手にインタビュー

  • 2015年02月10日(火) 18時00分
競馬の職人

松若風馬騎手



松若風馬騎手「競馬会の表彰式はすごかったです。毎年ここへきて表彰されるように頑張りたいと思いました」

 今週はビッグな嬉しいニュースと悲しいニュース両方が飛び込んできましたね。今年デビューする新人騎手の仲間に騎手免許試験合格が発表された外国人騎手M・デムーロ騎手とC・ルメール騎手が加わり、史上初の外国人JRA騎手が誕生しました。日本と外国との境界線がなくなり世界に向けての挑戦がますます面白くなってきます。より一層競馬が面白くなってきますが、日本人騎手にとっては厳しくなりそうです。若手騎手頑張れ! 良きライバルになってほしいと思います。

 そしてオルフェーヴルやゴールドシップなどを送り出したステイゴールドの急死には誰もががっくり肩を落としたでしょう。ご冥福をお祈りします。

 今週は、昨年47勝を挙げる大活躍をして、今年デビューする新人騎手に大きな希望となる松若風馬騎手に取材をお願いしました。

常石 今日は、よろしくお願いします。最多勝利新人騎手賞、おめでとうございます。

松若 ありがとうございます。僕のほうこそよろしくお願いいたします。

常石 まー座ってください。(大中で厚かましく座っている僕が声をかける…)

松若 大丈夫です、このままでお話しさせていただきます。

常石 謙虚ですね。

松若 いいえ恥ずかしいです。まだまだ未熟ですから回りの方にご迷惑をおかけし騎乗停止になってしまいました。周りが見えていない証拠だと思います。厩舎には、先輩がたくさんいるのでアドバイスをいただいて勉強します。ここからが大事なんですよね。今年の目標は年内に100勝を達成し自力で減量をとれるように頑張ります。

競馬の職人

松若風馬騎手



常石 先生も騎手だったし東田さんや小林慎ちゃんもいるからいいね。

音無秀孝調教師 まだまだあかんなー。周りが見えてないね。この騎乗停止がいい勉強になると思うよ。こういうのを一つ一つクリアしてうまくなっていってほしいね。減量が取れてからが大事だよな。もっと落ち着いて周りを見る余裕が出来てきたらいい競馬ができるようになるかな。(厳しい口調の中から音無先生の思いやりが垣間見えた瞬間でした)

常石 小林慎ちゃんからも一言メッセージをお願いします。

小林慎一郎調教助手 やー俺は何も言うことないよ。よー頑張ってるもんな。一緒にメシ行くだけだよ。

音無 じゃあ、昼はどうしてるんだ。夜はどこへ行くんだ。

松若 昼は寮でいただいて、夜は先輩や同期の小崎・義とかと行くことが多いです。関東の騎手とも一緒にご飯へ行くこともありますし、たまには自炊もしています。

音無 今日は、どこへ行くんだ?

松若 えーっと小林先輩たちともつ鍋です。

音無 俺も連れて行ってくれ(笑)。もつなら福岡から取り寄せが美味しいやろ。これから小倉が始まるけど滞在が減ったから美味しいもつ鍋屋さんへ行かれへんなぁ。なーつねちゃん、現役の頃はよく行ったやろ。あれが楽しみでもあったよな。

常石 音無先生がそうだからかもしれませんが、音無厩舎はいつも和やかな雰囲気ですよね。いろいろな先輩とご飯食べに行くっていいですね。そんな雑談の中にヒントがいっぱいあるんですよ。僕もよく連れて行ってもらい社会勉強もちょこっとしたかな?(笑) 1月開催の小倉は寒かったのでいつももつ鍋でしたね。また美味しいお店が多かったです。地方へ行くのは美味しい食べ物と出会えるのも楽しみの一つでしたね。いろんな開催地へ行き、競馬場の違いや美味しいものを見つけるのも楽しいのでどんどんチャレンジしてくださいね。

 話は変わりますが、お父さんが装蹄師さんと伺いましたが、お父さんと一緒の仕事をしようと思わなかったんですか?

松若 はい。馬が好きだったんで馬に携わる仕事がしたいとは思っていました。小学校1年生の時、自分から乗馬に行きたいとお願いし栗東ホースクラブに行きました。

常石 えーっ栗東ホースクラブですか? 僕が落馬して10年になるんだけどリハビリでずっとホースクラブで乗せてもらっていたんですよ。松若騎手に会っていたかもしれませんね。小さい子が馬に乗ってるなーと思っていましたが、その頃の記憶は全くないのでわからないんですよ。今、関学で乗馬をやってる子が一緒だったということで一昨年2人で淡路島へ乗馬に行ってきました。

松若 あのころは2、3人乗馬されていましたよね。馬に乗れるのがうれしかったです。今も調教でいっぱい馬に乗れるのが楽しみです。乗っていると馬によって違いがわかるので勉強になります。

常石 どんな違いが分かりますか?

東田幸男調教助手 車で言うと高級車のシートと軽自動車のシートのクッションの違いかな?

松若 はい、よくわかります。走るなーって感じる馬の背中が柔らかく乗り心地がいいのでいつまでも乗っていたくなりますね。

常石 外国人騎手が日本で同じように乗れるようになってどう感じますか?

松若 外国では経験豊富だしトップジョッキーとして活躍されている方たちなのでいいところはいっぱい自分にも取り入れていきたいし刺激にもなります。

常石 一番気をつけていることは、どんなところですか?

松若 ゲートを出るときを大事にするようにと音無先生にも言われています。ぼくも大事だと思うのでゲート練習はしっかりやっています。特に2歳馬のゲート練習にはよく乗せてもらい慣れることを大事にしています。今は、減量があるので先行策をとることが有利だと思って乗っていますが、馬に合わせていろんな乗り方ができるように馬の持つ力を見極めていきたいです。

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松若風馬騎手



常石 体格が小さいほうですよね。体重管理などはどうされていますか?

松若 オープン馬に乗るときは馬のパワーが違うので力負けしてしまうこともありますが、そのパワーに負けないよう、しっかり力をつけたいと調整ルームで毎日トレーニングをしています。あそこには馬に乗るために必要な筋肉を鍛えるための木馬もありトレーニングマシンもあります。特に下半身の筋肉を鍛えるのにいいですね。僕がやってると福永先輩がどこの力が必要かなどアドバイスをして教えてくれます。

 浜中先輩の言葉も印象に残っていて、絶対忘れないですね。初騎乗の時緊張している僕を見て「深呼吸をして肩の力を抜いて。すぐに終わるからね」と声をかけてくれました。さりげなく気配りしてくれる浜中先輩は格好いいです。緊張が吹っ飛んでずいぶん楽になりましたし、うれしかったです。身近な先輩からいろいろアドバイスをいただいています。正しい乗り方ってないかもしれませんが馬に迷惑かけないように乗っていきたいです。

常石 先輩からのアドバイスは、うれしいですよね。僕もいっぱい助けられました。騎手仲間からも助けられたけど助手さんや厩務員さんからもいっぱい助言があるんですよね。

松若 はい、うちの厩舎には元騎手だった方もたくさんいるので助言いただいています。

東田 アドバイスは、何にもできないけど僕が乗ってた頃はテンポイントやトウショウボーイなどいい馬がいて、馬とともに暮らしていたって感じだな。今の若い騎手は、厳しくなって大変だと思うわ。一頭でも多く乗って馬の魅力を自分の感触でつかんでほしいですね。言葉ではなかなか表現できないところがあるからね。背中がいいとか、腰が柔らかいとか言うけどどんな感じかと聞かれたら「うーん」と悩むよな。さっきも言ったけれど高級車と軽自動車の違いやな。

常石 その表現が一番わかりやすいですね。松若騎手は、一番印象に残ってるレースはありますか?

松若 やっぱり初勝利です。デビュー2日目(2014年3月2日)小倉競馬第2レースでした。レース展開から全部覚えています。それと競馬学校時代に初めて生観戦した皐月賞です。ゴールドシップが荒れた馬場の内側を後方から突っ込んできた時の迫力はすごかったですね。あのレースは見ごたえがありました。

常石 どんなレースを勝ちたいと思いますか?

松若 やっぱりダービーです。特別なものがありますよね。チャンスが来るまで頑張ります。

常石 昨年は47勝し特別レースの7月20日中京9Rマカオジョッキークラブトロフィーも勝ち大活躍でしたね。今年もスタートから活躍していますね。小倉開催初日の特別レース、早鞆特別ではトップボンバーで勝利を挙げていましたね。おめでとうございます。11日は高知競馬場へ小崎騎手と一緒に全日本新人王争覇戦競走に参戦するんでしょ。頑張ってくださいね。応援しています。高知競馬場はのんびりしていい競馬場です。中央と違って楽しく乗れるところですよ。

松若 はい、ありがとうございます。頑張ってきます。みなさんが応援してくれるのでうれしいです。

常石 話はかわって丸坊主ですね。競馬学校に入ってからですか? 僕も今は丸坊主がいいなーと思ってずっと坊主頭です。

松若 最初は切るのが嫌だったんですが慣れましたね。とりあえず騎手1年生は坊主で行こうと決めていました。

常石 なにごとに対しても真面目なんですね。親のしつけが厳しかったですか?

松若 父は、有名な馬の装蹄をさせてもらったりしていたので馬の命を守る仕事だと自分にも厳しかったです。特に人には迷惑かけるなとずっと言われていました。その時は、あまりわからなかったですが、今なら父の言ったことが少しわかるような気がします。

常石 新人賞受賞おめでとうございます。JRAの授賞式はどんな感じでしたか?

松若 競馬会の表彰式はすごかったです。毎年強い馬が出てきてその関係者が表彰されると思うとゾクゾクしました。毎年ここへきて表彰されるように頑張りたいと思いました。音無厩舎からは、強い馬がどんどん出てきます。早くこんな馬に乗りたいと思います。先生から認められるような騎手になりたいです。

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師匠の音無秀孝調教師と松若風馬騎手



常石 あの場に立つとまたここへ来るぞーって力がわきますよね。最後にファンへのメッセージをお願いします。

松若 負けん気を武器に頑張ります。競馬学校の時見たような感動のレースを皆さんにも伝えられるように頑張ります。応援してください。

常石 長時間ありがとうございました。

***
ずっと立ったまま話していただき、こちらが恐縮してしました。体が小さくあどけなさが残る松若風馬騎手でしたが内心はとってもしっかりし、馬に対する思いはだれにも負けませんという意気込みが伝わってきました。はっきりと受け答えをしてくれさわやかな好青年でした。今年も活躍楽しみにしています。つねかつこと常石勝義でした。

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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