総合能力の勝負となる桜花賞
今年は1984年にグレード制が導入されて以降、初めて、3戦3勝以上の無敗馬が「3頭」も出走する。
また、目下4連勝中のディープインパクト産駒が「6頭」も出走して5連覇を狙っている。過去、8世代でわずか3頭(2着、3着、16着)しか出走馬を送っていなかった種牡馬マンハッタンカフェが、3戦3勝の
ルージュバック、3戦3勝の
クイーンズリングなど、今年は突然「3頭」もの出走馬を挑戦させるのも大きなポイント。
毎年のように「男馬より強いのではないか」と思わせる名牝の出現が続いている。今年のルージュバックは、もうすでに、皐月賞で印がつきそうなベルーフ(京成杯)、ミュゼエイリアン(毎日杯)を完封して、東京2000mを2分00秒8(上がり33秒3)の快レコードで圧勝している。この高い総合力を素直に評価したい。
坂のある新阪神コースになって以降、無理なハイペースがなくなったと同時に、桜花賞は総合能力の勝負に変わった。これと名牝の時代が重なり、いままた桜花賞の重要度は高まっている。
1984年以降、G1を4勝以上もした歴史的な牝馬が6頭誕生している。ジェンティルドンナ【7-3-1-2】、ウオッカ【7-2-3-5】、ブエナビスタ【6-7-2-3】、メジロドーベル【5-1-0-3】、アパパネ【5-0-2-4】、ダイワスカーレット【4-2-0-0】である。メジロドーベルと、アパパネ以外は、男馬相手にジャパンC、有馬記念、天皇賞・秋、日本ダービー、安田記念などを制しているから、文字通り男勝りである。これらほとんどの名牝は、距離は1600mから、2500m級まで平気でこなしてみせた。
注目は、この6頭の桜花賞成績である。順に「1、2、1、2、1、1」着だった。(ウオッカはダイワスカーレットの2着)。
G1を3勝した牝馬は計7頭いるが、そのうちスティルインラブ、ニシノフラワー、ファレノプシス、テイエムオーシャン、メジロラモーヌの5頭は、桜花賞を勝っている。
つまり、歴史に残るような牝馬は、適距離とか、短いとか、長いとかは関係なく、基本距離の桜花賞を勝ち負けできたから、名牝への道が開けたともいえる。
ルージュバック陣営は、百日草特別をレコード勝ちしたことにより、この牝馬のテーマは、できるだけ活力を消耗することなく春のクラシックを切り抜け、さらに広がる未来展望となったように思える。桜トライアルは、桜花賞を狙う牝馬の1戦。きさらぎ賞は、世代のトップを目ざす牡馬の重要レース。
後者を選んでの圧勝は、陣営に確信をもたらした。ルージュバックに桜花賞の距離1600mがどうかとかは、ほとんど重要ではない。マイルが心配なら、マイル戦に出走している。陣営のルージュバックへの展望は、そういう次元の期待ではないということである。
マンハッタンカフェは、なぜ14-15歳前後(種牡馬としては多くの場合、そろそろピーク過ぎに近い)になってブレークしようとしているのか。
同じサンデーのステイゴールドの代表産駒は、相手の牝馬の質の変化もあるが、オルフェーヴル、ゴールドシップなど、ほとんどが14-15歳になってである。だいたい、ディープインパクト、ハーツクライ、ネオユニヴァース、ダイワメジャーなどの大物は、サンデーサイレンスが、15歳に近くなっての産駒である。
サンデー自身からして、父ヘイローが15歳前後になってからの代表産駒だった。他の著名父系よりやや遅咲きがサンデー系の隠れた特徴に近い。マンハッタンカフェ産駒のブレークも、ちょうどそういう年齢になってだから、偶然ではないかもしれない。
誉め過ぎたかもしれないルージュバックの相手本線は、自在の
ココロノアイ、前回の切れが光った
アンドリエッテ、同じマンハッタンカフェの3戦3勝馬
クイーンズリング。