◆この馬にかける思いの強さ
馬場開場直後の調教コースには馬が殺到する。一番の理由はもちろん、いい馬場コンディションの時に追い切りたいため。一方であえて閉場間近を狙ってコースに出てくる馬もいたりするのだが、それにも明確な理由が存在する。
GIII中山牝馬S(13日=中山芝内1800メートル)に出走するフレイムコードは、他馬がいる時間に馬場に出るとテンションが上がってかかってしまい、スムーズな調教ができない。それゆえ、いつも出てくるのは閉場間近のウッドコース。坂路に出てくる“ラストホース”がハクサンムーンなら、ウッドのそれはフレイムコードというわけだ。そんな最後の時間帯の調整に普段から付きっ切りなのが、レースにも騎乗する菱田。
「所属している岡田キュウ舎は開門1時間前から運動を行っている。そこからスタートして、この馬の稽古が最後でしょ。追い切りだけじゃなく、普段の調教にもずっと乗ってくれているし、本当によくやってくれている」(フレイムコードを担当する木埜山キュウ務員)
予定していた小倉大賞典から急きょ、京都牝馬Sに矛先が変わったため、レースには騎乗できなかった時ですら、追い切りは自身がつけていたくらいだから、菱田のこの馬にかける思いの強さが伝わってくる。
今週の追い切りをつけた菱田いわく「すごくいいですね。左トモがネックの馬なんですが、今はその状態がいいし、気持ちも入ってます。あとは条件が揃えば」。
道悪が苦手なフレイムコードにとって近走は雨の影響が残る馬場が災いするケースばかりだったが、馬場は恐らく良馬場、そしてコーナー4つの小回り1800メートル…条件が揃った今回は、鞍上の日々の苦労が報われるような気がしてならない。
(栗東の坂路野郎・高岡功)