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一戦ごとに上昇カーブ/スプリングS

  • 2016年03月22日(火) 18時01分


トップ3と比べてどのくらいのランクか

 3月中旬の「弥生賞」を終えた時点で、この世代の男馬の制した芝の重賞は短距離戦も含め16レース。その勝ち馬はことごとく別であるとしたが、あのあとトウショウドラフタがファルコンS1400mを勝ち、「スプリングS」を勝って新たに重賞勝ち馬の仲間入りしたのは新星マウントロブソン(父ディープインパクト)。またまた、重賞1勝馬が加わった。

 このあと、3月26日には「毎日杯」1800mが組まれている。そこでも新星が台頭するようだと、今年の「皐月賞」は、現在のところ「サトノダイヤモンド、マカヒキ、リオンディーズ」の3頭を中心にトップグループが形成されているものの、これだけ重賞がありながら、エース級とて2つ勝った馬はいないという、珍しい年になりそうである。日程の上では桜花賞の週の「ニュージーランドT」組も皐月賞に加わることは可能だが、ふつう、それはない。

 重要なトライアルを制して【3-2-0-0】となったマウントロブソンは、現時点でトップ3とされる前出の3頭と比べ、どのくらいのランクだろうか。

 春のクラシック路線は、たとえば今回沈んだロードクエストドレッドノータスのようなタイプが本番になって巻き返すこともなくはないが、この時期に大きく上昇しなければ皐月賞を勝てないのがふつうである。最近10年の皐月賞の前走は、8頭までが重賞かOP特別の勝ち馬。あと2頭は共同通信杯2着のドゥラメンテと、弥生賞4着の08年キャプテントゥーレ。

 マウントロブソンの母ミスパスカリ(その父ミスターグリーリー)は、クロフネの半妹。金子ブランドそのものであり、金子オーナーは、弥生賞のマカヒキ、スプリングSのマウントロブソン。今年は、2頭の最有力候補をそろえることになった。

「どっちが強いと聞かれても、そんなことは答えられない。タイプが違い、どっちも自分の形で勝ってくれた」とコメントしたと伝えられるが、金子オーナーに、「どっちが……」と聞くのは、少しも失礼ではないが、野暮である。最強運の金子オーナーは2005年、ディープインパクトが日本ダービーを2分23秒3で独走したとき、「ああ、キングカメハメハ(前年の勝ち馬)のダービーレコードとタイ記録で良かった」とつぶやいている。

 小さな順位などつけても意味はない。並び立つエース級なら何頭いてもいいのである。だから、日本のサイアーランキングのトップを形成する「ディープインパクト、キングカメハメハ、クロフネ」の競走時代のオーナーは、みんな金子真人オーナーである。

 マウントロブソンは一戦ごとにどんどん上昇カーブを描いている。断然人気のロードクエストを下して候補に加わった新星は、美浦の堀厩舎の3歳馬のエースに浮上である。本番に向け、さらに上昇があるだろう。とはいいながら、マイネルハニー(父マツリダゴッホ)、すっかり評価の落ちることになったロードクエストと、「クビ差、クビ差」では、候補ランキングは上位の3頭より現時点ではワンランク下。マウントロブソンはここまで5戦、すべて異なる騎手が乗ってきた。4月になってA.シュタルケ騎手が続けて短期免許申請の可能性は低い。本番で乗り替わるとしたら、よほどの騎手でなければ苦しい。そういう候補はいるだろうか。

 マイネルハニー(父マツリダゴッホ)は、同じマツリダゴッホ産駒の人気馬ロードクエストよりもっと寸詰まりのマイラー体型に映ったが、前半1000m通過60秒3の平均ペースに持ち込んだあと、巧みにペースを上げつつスパートし「11秒6-12秒0-11秒6…」、坂上では振り切ったかと思えたが、最後の1ハロン「…12秒6」で捕まってしまった。直前に良馬場に回復したとはいえ、高速馬場ではないから、持ち味のしぶといねばり腰をフルに発揮できた。

 先行タイプの少ない今年、本番の2000mでも同じように楽に行ける可能性があるが、クラシック登録はないと伝えられる。ファミリーは日本のクラシック血統として1時代を築いたイコマエイカン一族。3代母クインリマンド(父リマンド)は、アグネスタキオンの祖母アグネスレディーの全姉である。ふつうに考えれば善戦可能。でも、勝機は少ないと思われるが、大の巧者だろう道悪なら分からない。有力候補は良馬場を好むディープインパクト系が大半。追加登録はオーナーサイドの判断ひとつである。

 断然人気のロードクエストは、素晴らしい状態に近かった。だんだんマイラー体型に映るようになった印象はあっても、日本ダービーの東京2400mならともかく、中山の1800mで距離うんぬんはない。ここを勝つとき、その内容がよほど平凡でなければ最有力グループに再び加わると思えたが、「クビ、クビ」の小差とはいえ、完敗。ゴール寸前の印象が良くない。届かなかったというより、あの形勢だとマウントロブソンにはあのあともっと「差を広げられていた危険がある」のではないか。そういう迫力負けに映ってしまった。救いは、テン乗りだった池添騎手が「本番で巻き返したい。過去に乗ったいい馬にひけはとらない」と、少しも悲観的ではないことだが、トライアルで確かめたかった課題をクリアしたとはいえない気がする。

 スタートが良くないから仕方がないが、後方から外を回って皐月賞を勝てるほど能力上位なのだろうか。また、急坂の部分でさして差が詰まらない死角も残った。外を回ったとはいえ、速い脚が長つづきしなかった印象もある。たしかにこの程度のはずではないが、対戦したマウントロブソンは明らかに強くなっている。マカヒキ以下も強くなっている。しかし、ロードクエストはそうではない心配が生じてしまった。

 2番人気ながら、大きく出遅れて5着止まりのミッキーロケット(父キングカメハメハ)は、これで500万下からの再出発になるが、馬はいい。500万下なら確勝級か。3番人気のドレッドノータス(父ハービンジャー)は、休み明けで初の遠征競馬。レース前から激しく高ぶりイレ込んでしまった。止まって見せ場もない7着に終わる力関係ではないが、まだ心身ともに幼さすぎる。完成されるのが早いタイプではない。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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