スマートフォン版へ

キンカメの三角関係と0.2秒

  • 2016年05月19日(木) 12時00分


「シンハライト(スリランカあたりで取れる宝石)を運んでくるのは、ジュエラー(宝石職人)だ」。

これだけで、チューリップ賞と桜花賞は凌げた。根多として凌げた。

しかし頼みの綱の宝石職人がオークスにはいない。
今度はシンハライトをいったい誰がエスコートするのだろう。

馬名の字面がジュエラーに似ているジェラシーか。
ジェラシー=嫉妬。
悪くない。宝石の輝きは感情を揺さぶる。そこには羨望もあれば、妬みもある。シンハライトの輝きが高貴なものであればあるほどジェラシーに火がついても不思議じゃない。

うん、わかった!
シンハライトをエスコートするのはジェラシーだ。

でもなんかしっくり来ない。
エスコート感というより、嫉妬感だ。

てなことを鴨川と神田川を地下で結ぶ秘密の寄合所で語っていたら、ロッテンマイヤーでいかがでっしゃろと言われた。
ロッテンマイヤーとはアルプスの少女ハイジに出て来た執事ですよと。

上手い!
執事ならエスコート感もいっぱいだ。

なんて思いつつ、他にもいい感じの馬はいないかな?と想定メンバーを眺めていたら、キンカメ3頭の鞍上チェンジが目に入った。

アットザシーサイド 福永から福永
エンジェルフェイス 福永からルメール
チェッキーノ    ルメールから戸崎

ふつうに考えると、福永騎手が騎乗するアットザシーサイドでいいはず。
福永騎手はエンジェルフェイスとアットザシーサイドに騎乗経験があって、アットザシーサイドに騎乗する。
ルメールはエンジェルフェイスには騎乗経験がないのに騎乗する。
ふつうに、本当にふつうに考えたらアットザシーサイドだろうし、チェッキーノよりもエンジェルフェイスだろう。
でも、単なる先約優先の可能性もある。でないと藤沢和厩舎があまり接点のない戸崎騎手を招聘する説明がつかない。レースをあきらめていない感が漂ってるからだ(馬主主導の乗り替りだとしてもだ)。

なんだか気になる三角関係。
キンカメの三角関係。
甘酸っぱい青春の三角関係。
感情ほとばしる大人の三角関係。
騎手に逃げられて、内心穏やかでない関係者はいるかな?
後ろ髪引かれる思いで馬を手放した騎手はいるかな?
ああ〜強烈なジェラシーが飛び交ってるような、飛び交ってないような、単なる思い過ごしのような……。

おっとまたしてもジェラシーの登場だ。ダメだ。もはや逃れられない!
よし!わかった!今度こそわかった!
シンハライトから執事(ロッテンマイヤー)と嫉妬(ジェラシー)の2点勝負だ!

と、自作自演の前フリ、お気に入りのフレーズ(キンカメの三角関係)にケリをつけたところで、オークスだ。

----------------------------------------------
はじめに オークスは、いつだって単をスカッと決めたいレースだ。
----------------------------------------------

ダービーは1番人気に最大の敬意を払い、オークスは1番人気を少しナイガシロにして、別の馬の単でスカッとした気分を味わう。

去年も2年前も3年前も4年前もそれを書いたけれど、書いても書いてもそれは途切れてないから、もう十分だろう。

以下は過去15年の1着馬の単(カッコ内の数字はオークス前までの成績)

01年 1着レディパステル(2-3-1-0) 5人気 単1760円 448キロ(+4)

02年 1着スマイルトゥモロー(3-0-0-3) 4人気 単1050円 434キロ(+6)

03年 1着スティルインラブ(3-1-0-0) 2人気 単560円 442キロ(0)

04年 1着ダイワエルシエーロ(2-1-0-1) 6人気 単2140円 430キロ(0)

05年 1着シーザリオ(3-1-0-0) 1人気 単150円 460キロ(+6)

06年 1着カワカミプリンセス(3-0-0-0) 3人気 単670円 484キロ(-4)

07年 1着ローブデコルテ(2-2-0-3) 5人気 単1170円 456キロ(+2)

08年 1着トールポピー(2-3-0-1) 4人気 単970円 462キロ(+2)

09年 1着ブエナビスタ(4-0-1-0) 1人気 140円 446キロ(-8)

10年 1着アパパネ(4-1-1-0) 1人気 単210円 470キロ(-10)
   1着サンテミリオン(3-0-1-0) 5人気 単380円(実質850円) 460キロ(+6)

11年 1着エリンコート(3-0-2-3) 7人気 単3720円 456キロ(-2)

12年 1着ジェンティルドンナ(3-1-0-1) 3人気 単560円 460キロ(+4)

13年 1着メイショウマンボ(3-1-0-2) 9人気 単2850円 478キロ(+10)

14年 1着ヌーヴォレコルト(2-1-1-1) 2人気 単980円 444キロ(+6)

15年 1着ミッキークイーン(2-2-0-0) 3人気 単680円 430キロ(+4)


4年前までは600円以上つけばスカットできると書いたけれど、3年前から40円おまけした。
おまけすると560円は2回になるから、15年で13回スカットできたことになる(同着の10年も含める)。もちろん全部当ててればの話だ……。

この15年で1番人気は3勝(20年で5勝)。
勝った馬は桜花賞を1番人気で1着して、オークスでも1番人気だったアパパネとブエナビスタ、そして桜花賞を1番人気で2着して、オークスでも1番人気だったシーザリオ。
桜花賞1番人気で1着し、オークスでも1番人気だとスーパー敬意が必要だけど、このパターンでダンスインザムードは4着に負け、ハープスターは2着に負けた。

ここから言えることは「オークスを1番人気で勝つ馬は最低でも桜花賞で1人気に支持され、桜花賞で勝ち負けする必要がある。ただしそれは十分条件ではない」てなことか。
今年は桜花賞を1番人気で勝ち負けした馬はいない(桜花賞1人気4着のメジャーエンブレムは回避。桜花賞を3人気で1着したジュエラーも回避)。
だから言える。
カンタンに言える。

今年もオークスは単でスカっとできる!

では具体的にはどのあたりを狙えばいいか?
単560円くらいの馬から7番人気くらいまでの馬をいい感じでチョイスすればだいたいだ。
5年前、7人気で1着したエリンコートの単は37.2倍で、3年前、9人気で1着したメイショウマンボの単は28.5倍だった。人気を取るか、オッズを取るか?
ときには融通も必要だと思うけれど、基本的には単30倍までを視野に入れつつ、人気を取りたいと思っている。

予想オッズではこうなっている。

1人気 シンハライト    2.0
2人気 チェッキーノ    3.5
3人気 ロッテンマイヤー  8.7
4人気 アットザシーサイド 10.7
5人気 エンジェルフェイス 16.7
6人気 デンコウアンジュ  19.2
7人気 レッドアヴァンセ  23.9
8人気 ジェラシー     31.4

この人気どおりならば、3人気ロッテンマイヤーから7人気レッドアヴァンセなんだけど、あ〜〜惜しい! ジェラシーがもうちょっとだ!人気も単オッズももうちょっとのところにいる。あ〜やばい。ジェラシーがここでも顔を出してくるよ。
ジェラシーまで入れてしまっても6頭だ。このオッズどおりならば全部買ってもプラスにはなる。

よし!決めた!
3人気(6頭なら単600円以上つく前提)から8人気まで全部買ってしまおう!
執事も三角関係も嫉妬もみんないる。儲かるかはわからないけど、ぜんぶ買えば一件落着のはず。ひゃっほー!

う〜ん、我ながらちょっとフィーリングがすぎる気もするな。いつだって自分はフィーリングだけど、今回はそれがすぎるような……。
こういうときは1頭1頭精査して、絞り込みを試みるのがまっとうだろう。でも今年はあまり気が進まない。なぜだろう?

----------------------------------------------
シンハライトに0.2差 チッェキーノに0.2差
----------------------------------------------

アットザシーサイドは桜花賞でシンハライトに0.3差で敗れた。
でも桜花賞で0.3差ならば、オークスで逆転できる可能性はある。それは2年前にハープスターを心配したときのコラム「ブエナビスタでもハナ差じゃないか」で書いた。そのときの見立てでは0.4差までならチャンスありだった。で、自分はヌーヴォレコルトの逆転の可能性について書いたのだった。

実際、桜花賞3着だったヌーヴォレコルトはハープスターをクビ差おさえて1着した。桜花賞後の岩田騎手の逆転可能を示唆する前向きなコメントも印象深かった。
アットザシーサイドの福永騎手も前向きなコメントを残している。netkeiba.comの福永騎手のコラムでも通用する力はあるとアツく語っている(そんな印象を持った)。頼もしいかぎりだ。

だけど、福永騎手の頼もしいコメントを読めば読むほど、別の馬にも魅かれてしまう自分がいる。
阪神JFで狙って、4着に敗れたペプチドサプルに魅かれてしょうがないのだ。

阪神JFでペプチドサプルは4着で、アットザシーサイドは5着だった。
アットザシーサイドが通用すると言うなら、ペプチドサプルだって!とこれだけで思いたくなる。
競馬はそんな単純なものじゃない!と言われるのは承知しているけれど、阪神JFでのペプチドサプルはスタートしてすぐに外のブランボヌールに寄られ、4角でも外のブランボヌールとぶつかり、直線でも外のブランボヌールとぶつかる厳しい競馬だった(終始外のブランボヌールに蓋をされていたようなレースだった)。それでも4着した。なかなかの競馬だった。その印象が残っているからか、アットザシーサイドの活躍を見れば見るほど、ペプチドだって!とついつい思ってしまうのだ。

ペプチドだって!と思う動機はそれだけではない。

ペプチドサプルは紅梅Sでシンハライトに0.2差で敗れた。
アネモネSではチェッキーノに0.2差で敗れた。

オークスで1、2人気が予想される馬と距離1400(紅梅S)、1600(アネモネS)で0.2差で走った。ならば距離2400のオークスでなら、もうちょっと詰められるのではないか?とついつい思ってしまうのだ。

ついついついでに言うならば、忘れな草賞ではオークスで予想3人気に支持されているロッテンマイヤーに0.1差で負けている。距離は2000だった。ここでも2400ならと、ついつい、ついついだ。

つまり、ペプチドサプルはオークスで上位人気(1〜3人気)が予想される馬たちと別々のレースで、ちょっとずつ負けている馬なのだ。そして4人気とおぼしき馬には先着もしてるのだ。「ついつい」を期待してしまうのもむべなるかなだ。

これで人気になるのならば、ちょっと嫌だけど、人気はない。予想では11人気だ。ならば、距離が2400に延びるオークスで、差を詰められる方に賭けたくもなる。ついついと啄んでみたくなる。
シンハライトに0.2差の闘いができればチャンスはあるのではないか?

おっと、単勝を当てて、スカっとさわやかするはずだったのに、ペプチドには3着でも十分みたいになっちゃった。でもこの人気なら3着でも十分スカっとできる。
よし、今度の今度こそ決めた!
今年は3連系でスカっとさわやかだ!

----------------------------------------------
オークス注目馬
----------------------------------------------

ペプチドサプル とはいえ抽選対象馬だ。5分の4を突破してくれないと話ははじまらない。

もし、抽選に漏れたら、そのときは単5.6倍から単30倍を目安に、そこに該当する馬の単勝を買うことにしよう。該当馬をすべて買ってもいいけど、ふるいに掛けるなら、やっぱり、これまた例年通りの傾向にのっとって馬体重で判断してみる。今年は小さい馬が多いけれど、それでも430は欲しい。前走430のアットザシーサイド、レッドアヴァンセが420台だったら、1着はないと決めつけてしまおう。

シンハライトからロッテンマイヤーとジェラシーへの宝石エスコート馬券は取りあえず買う。
キンカメの三角関係馬券(3頭ボックス)は、ペプチドが抽選に漏れたら買う。抽選を通過したら買わない。買わないと来るような気がするな。買わずに来たら自分を嫉妬してやる!
ペプチドが抽選から漏れたら、馬券はニギニギしくなりそうだな。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

競馬専門誌・競馬王の元本紙予想担当。今は競馬王その他にて、変な立ち位置や変な隙間を見つけて、競馬の予想のようなものを展開中のニギニギ系。 著書はなし。最新刊「グラサン師匠の鉄板競馬 最前線で異彩を放つ看板予想家の鉄板録」に再び間借りして、4年ぶりに全重賞・根多の大百科的なものを執筆。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング