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やがてはもっと高いところにあるレースで対決を/ユニコーンS

  • 2016年06月20日(月) 18時00分


ダートの重賞クラスは少々のことでは簡単にくずれない

 ゴール前は1番人気のストロングバローズ(父マインシャフト)と、2番人気ゴールドドリーム(父ゴールドアリュール)の息詰まるマッチレースになり、ライバルを追い詰める形になったゴールドドリームがクビ差競り勝ち、JRAの3歳初のダート重賞を制した。

 3着にも3番人気のグレンツェント(父ネオユニヴァース)が押し上げた結果、3連複も、3連単も驚くほどの低配当(レース史上最低払い戻し金額)になったが、こればっかりは仕方がない。人気上位馬のレベルが高かったと同時に、みんな東京ダート1600mに好走歴を持つ同士の組み合わせだったからである。

 これでユニコーンSは、10年連続して人気馬(3番人気以内)の勝利となった。また、今年のJRAダート重賞は1月の東海SからこのユニコーンSまで、1番人気に支持された馬の成績【3-3-1-0】となった。ダートの重賞クラスは、体調や距離適性を別にすると、少々のことでは簡単にくずれないのである。

 勝ったゴールドドリームと、2着ストロングバローズの初対決となった2月の「ヒヤシンスS」は、これで、この世代のダート戦最大のポイントレースとなったのは間違いない。お互いにまだ初期の成長段階だったとはいえ、1-2着したのは今回と同じゴールドドリーム、ストロングバローズであり、3着は【2-1-1-0】で急死したスマートシャレード。4着が兵庫チャンピオンSを独走したケイティブレイブ。5着がベルモントS3着の芦毛馬ラニ(父タピット)である。

 7月13日のジャパンダートダービー(大井)での再対戦になるライバルも少なくないが、やがてはもっと高いところにあるチャンピオンレースで対決するのだろう。

 ゴールドドリームは、兵庫チャンピオンSの園田1870mは、体調や距離ではなく、小回りで深いダートが合わなかったか。大跳びのストライドで、力馬というよりスピードや切れを問われるダート向き。次に目標として掲げる大井のジャパンダートダービーは、直線の長い大きなコースだが、できれば締まったダートコンディションの方がいいだろう。まだ脚長の体型に映るから、ダートならどこでも平気とはいい難い。

 父ゴールドアリュールは、毎年キングカメハメハとマッチレースを続けるダートのチャンピオンサイアー。ファミリーは、3代母がダートで一時代を築いた種牡馬ジェイドロバリー(父ミスタープロスペクター)の全妹。サドラーズウェルズ、ヌレイエフ、サッチなどがファミリーの近いところに名を連ねる名牝系であり、ノーザンダンサー、牝馬スペシャル、ターントゥ、二ジンスキーなどのクロスが入り混じる血統背景は、一族の日本の代表馬エルコンドルパサーを連想させるものがある。2000m級までは距離はまったく心配ない。

 一方、クビ差及ばなかったストロングバローズは、また一段とたくましくなっていた。外枠でスタートが良すぎたこともあり、2番手でレースを作ることになったが、自身の前後半「47秒6-48秒2」=1分35秒8なら、負けて強しである。同馬の前半1000通過は「59秒6」。そう苦しいペースではないが、最初からゴールドドリームの格好の目標になりながら、ヒヤシンスSで2馬身差だったライバルとの差は、今回は同タイムのクビ差だった。着差通り、能力互角だろう。

 父マインシャフトは、カジノドライヴで知られることになった「A.P.インディ」系。今回のユニコーンSにはこの父系の出走馬がパイロ産駒など6頭もそろったのは驚きであり、遠い昔、セクレタリアトのボールドルーラー系として巨大な時代を作ったあと、3冠馬シアトルスルーを経て存続し、現代ではアメリカを代表する種牡馬タピットを中心に、再び大きな根幹父系となったからすごいことである。岐点となった「A.P.Indy」は、大種牡馬ボールドルーラーの「S4×M3」であり、母方にはセクレタリアトの母サムシングロイヤルのクロスがあったりするから、たしかに「ボールドルーラー」のよみがえりに近いのである。日本風にいうと、起点のサンデーサイレンスが、実はヒンドスタンの「3×4」だったというようなトーンかもしれない。

 人気馬2頭のマッチレースから、最後は3馬身以上も離されてしまったグループは現状ではちょっと苦しいが、3着グレンツェント、6着ダノンフェイス(父キングカメハメハ)以外の12頭は、実際は「900万」であり、これから地力をつけていこうという馬だから仕方がない。

 3着グレンツェントは、重量感あふれる馬体を誇り、前走も今回もマイルを1分36秒台。ただし、前回も今回も上がり3ハロンは同じ「35秒7」で伸びている。祖母ハトゥーフ(父アイリッシュリヴァー)が本物になったのは英チャンピオンS(10F)、米ブリーダーズCターフ(12F)2着などであり、もっと距離はあったほうがいいだろう。時計勝負になる東京ダート1600mはちょっと距離不足と思えた。4着ピットボス(父ゴールドヘイロー)も、どちらかといえば2勝を挙げている1800mの方が無理なく流れに乗れる平均ペース型か。

 5着クインズサターン(父パイロ)は、逆にマイラーに近い体型で一度は3着争いかとみえたが、今回はちょっと相手が悪かった。自己条件の1000万下ならすぐにチャンスがある。

 好気配、好馬体が目立ったダノンフェイス(父キングカメハメハ)は、スタートでつまずき気味。内枠だから痛かった。1600万下ならチャンスがあるだろう。復活し、直前の10Rで1000万条件を楽勝したミュゼスルタン(父キングカメハメハ)が同じダート1600mを1分36秒3(推定前後半47秒6-48秒7)だから、クインズサターン、ピットボス、さらに7着レッドウィズダムあたりまで古馬相手でもすぐ勝ち負けできる根拠がある。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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