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昨年のリベンジに大成功/函館記念

  • 2016年07月18日(月) 18時00分


次走にも注目したい

 同じマイネルミラノ(父ステイゴールド)とのコンビで挑戦した昨年の丹内祐次騎手(30)は、大外16番からの発走だったから、果敢に気合をつけて主導権を奪っている。しかし、前半1000m通過「58秒6」で飛ばしたあと、そこからさらに「→11秒9-11秒8」とピッチを上げてリードを広げる超強気な作戦に出たため、残念ながら後半失速。2分00秒6の8着(2番人気)に沈んでいる。今年は、そのリベンジ大成功だった。

「去年は自分の失敗で負けてしまった(丹内騎手)」というが、逃げ馬の強気な先行はかならずしも失敗とは限らない。今回は北村友一騎手のオツウ(父ハーツクライ)が逃げ作戦をほのめかしていたものの、引いたのは外の13番枠。マイネルミラノは内の6番枠。

 他の陣営も、昨年のマイネルミラノの強気な逃げはいやでも頭に入っている。今年、すんなりマイペース「60秒0-59秒0」=1分59秒0の逃げ切りが成立したのは、昨年の果敢で超強気な逃げ作戦も、抵抗できずに8着に沈んだ失速も生きている。昨年、ようやく復活した函館育ちの丹内祐次に期待したファンはいっぱいいる。だから2番人気だった。失速は残念だったが、あの強気な函館記念がさまざま意味で糧(プラス)となった可能性は否定できない。実際、昨年は丹内=マイネルミラノの逃げ切りに大きく期待しながら、今年は最有力候補にはできなかった人びとも多い。それもプラス、重圧のない挑戦者の立場に戻れた。

 丹内祐次騎手は、大ケガで休養が長引いた2008-2009年当時、年間の勝ちクラがひとケタに低迷する苦しい時期があった。でも、見事に復活した。昨年3月の「マーチS」のマイネルクロップにつづき、これが重賞2勝目。ずっと念願だった地元の函館記念を勝つことにも成功した。

 これからジョッキーとして完成期に近づく、まだ30歳の成長株である。マイネルミラノは「サマー2000シリーズ」を狙っている。つぎは8月21日の「札幌記念」か、9月4日の「新潟記念」になるはずだが、相手関係もあれば、他のジョッキーとの兼ね合いもある。新潟記念は、昨年は2番手から抜けだし1分58秒2「自身は推定59秒4-58秒8」の頭差2着(柴田大知騎手)だった。

 春の「新潟大賞典」は丹内騎手とのコンビで5着。メイショウナルトと前後して2頭でゆったりペースの先行で、自身はハンデ56キロで推定「59秒5-59秒0」=1分58秒5。最後は切れ負けして0秒7差だったから、もし、丹内騎手で新潟記念に挑戦なら、同じようなごく標準ペースの逃げは打たないはずである。そのあたりに注目したい。

 開催が短縮され、芝状態がいいため明らかに内枠有利の傾向も重なり、ただ1頭の4歳馬4番バイガエシ(父ジャングルポケット)が1番人気。3番レッドレイヴン(父スマートストライク)が2番人気になった。実際、このペースだから明らかに内に利があった。16番人気の1番マデイラ(父クロフネ)はスルスルとインから進出し小差4着。13番人気の8番ケイティープライド(父ディープインパクト)は好位からラチ沿いを衝いて2着に突っ込んでいる。9番人気のツクバアズマオー(父ステイゴールド)は、前半は行けなかったが、実に巧みにインにもぐり込んで伸びてきた。完全に内有利である。

 でも、先行=自在型には内枠有利でも、外から追い込みたいレッドレイヴンや、バイガエシには内枠は少しも有利ではない。後方に下がったレッドレイヴンはそれでなくとも脚の使いどころの難しい馬なので、オープンに上がってからは鮮やかに勝つか、不発凡走か極端な成績。今回はゆるい流れを読んで一気にまくったが、函館では形づくりにすぎない。「さすがにあそこから動くと苦しい(池添騎手)」となった。といって、前半から先に行っては集中できないから止まる。この流れで内枠は2重の不利だったろう。

 バイガエシも同じ。まだ1600万の条件馬なので、54キロのハンデは少しも軽量ではなく見込まれた(期待も重なっての)ハンデ。こちらは後方に下げた時点でアウト。3歳春、クラシック路線の伏兵とされた当時は追い込み型ではなく、競り合っての勝負強さが評価された期待馬だった。たしかに置かれたのは誤算だろうが、挑戦者らしい姿勢がなかったのはちょっと残念。「これからの馬なので…(藤岡佑介騎手)」というとおり、別に今後に黄信号がついたわけではないから、さすがに次は挑戦者のレースをしてもらおう。

 ベテラン8歳馬トーセンレーヴ(父ディープインパクト)も、背負い頭の57.5キロでは行けないから、ダッシュ一歩でかぶされる内枠は最悪に近かった。4番人気のネオリアリズム(父ネオユニヴァース)は、馬にとって函館は初コース。騎乗した若いK.ティータン騎手(26)にとっては慣れない函館コース。テン乗りで難しいコースの重賞はきつかったろう。道中ずっとかかっていたように映ったが、平然と「折り合って運べた(ティータン騎手)」とコメントするあたり、なかなかしたたかである。いきなり重賞の人気馬に乗せた陣営は、こういう凡走は織り込み済みか。ごく短期間の短期免許ではあるが、次週からの一変に注目したい。

 内田博幸騎手が遠征したファントムライト(父オペラハウス)は、当日輸送がない函館とはいえ、このペースで流れに乗って失速は、プラス14キロの太め残りが原因。初めて北海道に遠征すると、すぐ太る馬がいる。逆に2連覇の期待されたダービーフィズ(父ジャングルポケット)は、状態が戻っていないから気配平凡で、小さくこじんまり映った。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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