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【的場文男×小牧太】『時代を築いた男たちの帝王学』(3) ―騎手はどこまででも巧くなれる

  • 2016年08月09日(火) 18時01分
太論

▲特別対談の最終回 「生まれ変わってもジョッキーになりたい?」この質問にふたりの回答は!?


『的場文男×小牧太対談』もいよいよ今週が最終回。鉄人からパフォーマンスを維持するためのトレーニング法を伝授され、小牧騎手も俄然モチベーションが上がった様子。また、最後にお二人に投げかけたのが「生まれ変わってもジョッキーになりたいですか?」という質問。「なりたい」と即答した小牧騎手に対し、はたして的場騎手の答えは…!?(取材・文:不破由妃子)

※本対談は、2014年5月29日に発売された書籍『小牧太の“太論”〜なぜ馬に乗り続けるのか〜』の特別企画として、同年3月31日に収録したものを、一部加筆・訂正して再掲したものです。

(前回のつづき)

「的場さんは42年目。まだまだ僕なんてひよっこですね」


小牧 的場さんは、今年の9月で58歳になられるんですよね(※2016年8月9日現在、59歳)。どうしてそんなに体が動くんですか?

的場 なんとなく動いてる(笑)。トレーニングも、あんまりしなくなったしなぁ。ただ、1年くらい前までは、半端じゃなくトレーニングしてたよ。本当はしたほうがいいのはわかってるんだけど、最近は逆に疲れちゃうんじゃないかと思ったり、気力ももうそこまではないからね。

小牧 でも、1年前まではかなりやってらしたんですよね。ちなみに、どんなことを?

的場 エアロバイクをひたすら漕いでたね。近くにクアハウスがあって、そこのトレーニングルームに置いてあって。騎手ルームにも2台置いてあるよ。俺が置けって言ったんだけど(笑)。

小牧 ああ、ありますね。的場さん用だったとは(笑)。若い頃からずっとやってたんですか?

的場 やってたね。毎日毎日、ヘタをすれば朝晩ずーっとやってた。とにかく太腿の筋肉が大事だと思ってね。締める力が大事だから。それこそ「的場さん、競輪選手にでもなるんですか?」って言われるくらい、汗水垂らして漕いでたよ。

小牧 やっぱり下半身の力が大事ですよね。僕の場合、汗取りも兼ねてですけど、エアロバイクはよく漕いでます。

的場 あれは本当に力が付くからね。筋肉を疲れさせることなく筋力アップができるから、馬乗りにはあれが一番いいような気がする。あと、若い頃はよく走ったなぁ。馬場を2周くらい毎日ね。砂が深いから、これがまたキツいんだ。息が上がっちゃってどうしようもなかったけど、馬が息切れするまで頑張ってくれているのに、俺が先に息切れするわけにはいかないからね。

小牧 やっぱり積み重ねてきたものがあるんですね。的場さんが動ける理由がわかったような気がします。

的場 いやぁ、さすがにもう年だよ。この前、大井で乗っているとき、腰がガクッとなってね。我慢してもうひとつ乗ったんだけど、とてもじゃないけど続けられなくて、後半のレースは乗り替わってもらった。腰痛で騎乗を取り止めたのは初めてだったよ。ひょっとして、これが老化現象なのかと思ったり。

小牧 鉄人でもそういうことがあるんですね。僕もね、実は最近、腰痛があって……。

的場 腰痛には腹筋を鍛えるといいよ。

小牧 あ、やっぱりそうですか。最近気づいたんですけど、どうも僕は腹筋が弱点みたいなんです。だから、ちょうど鍛え始めようかなと思っていたところで。

的場 人間は、腹筋より背筋のほうが強いんだよね。どうしても後ろからの力に前が負けちゃうから、腰が痛くなるらしい。でも、腹筋を鍛えると前からも押し返せるようになって、バランスが良くなるという話だよ。

小牧 なるほど。やはり腹筋も重点的に鍛えましたか?

的場 うん、ずっとやってたね。腹筋を鍛えるマシンもあったし。トレーニングは、本当に続けたほうがいいよ。総合リーディングを獲ったときは、今の小牧くんよりもう少し若かったけど、それこそがむしゃらに頑張ったからね。

小牧 はい。僕も自分なりにやっているつもりでしたけど、今日、的場さんとお話させていただいて、もっともっと体を鍛えなくちゃいけないと思いました。的場さんが今でも第一線でご活躍されている理由がよくわかりましたよ。

的場 いやいや……。小牧くんだって騎乗技術は間違いないんだし、小牧くんじゃなきゃ動かない、小牧くんじゃなきゃ勝たせることができない、そう言われるような技術を持っているんだからね。中央という大きな舞台で、あとひと花、ふた花、パーッと咲かせてもらいたいね。

太論

▲「小牧くんには中央の舞台で、あとひと花、ふた花、パーッと咲かせてもらいたい」


小牧 ありがとうございます。僕は今年(2014年)でちょうど30年目なんですが、的場さんは42年目。まだまだ僕なんてひよっこですね(笑)。

的場 年齢に関係なく、騎手は一生勉強。どこまででも巧くなれるんだから。俺は、人間には限界はないと思ってる。だから、小牧くんも限界を決めずに頑張ってほしいね。

小牧 はい。もっと巧くなりたいという気持ちを持ち続けたいと思います。僕ね、50歳まで乗ることが目標だったんです。50歳まで乗れたらすごいなって。でも、その目標まであと3、4年ですからね(※2016年9月7日で49歳)。

的場 小牧くんなら大丈夫。きっと10年後も乗ってるよ。

小牧 的場さんこそ、佐々木竹見さんの7151勝を目指してくださいよ。さっき聞いたころ、あと584勝(2014年3月31日時点)とか(※2016年8月6日現在、あと249勝)。

的場 抜けない、抜けない(笑)。さっき40歳から大井以外でも乗るようにしたって話したけど、もう少し早くそうしていれば抜けたと思うけどね。

小牧 でも、去年(2013年)も年間150勝もされているわけですから。

的場 もうそれだけ勝てないもん。あとは落ちる一方だよ(笑)。

生まれ変わったら、中央のジョッキーに…


小牧 とはいえ、6566勝。すごい数字ですね。

的場 6500勝するのは目標だったから、「よし! あと何勝だ」と思いながら頑張ったんだけど、到達してしまったからね。どうせ竹見さんの記録は抜けないし、もういいかなぁなんて思うようになって。

小牧 的場さんにとって、6500という数字がひとつの区切りになったと。

的場 そうだね。たとえば、竹見さんの記録まであと100勝なら「よし!」って気合いも入るんだろうけど、今57歳で、あと580勝以上となると…。返す返すも、若い頃から大井以外も乗り行っていればねぇ。

──お忙しいなか、今日は本当にありがとうございました。最後におふたりにうかがいたいのですが、生まれ変わってもまたジョッキーになりたいですか?

小牧 なりたいです。この仕事が好きだし、楽しいですから。

的場 難しい質問だね。大変な仕事だからねぇ。そうだな……生まれ変わったら、俺は中央のジョッキーになりたい。小牧くんは今、その舞台にいるんだから、もっともっと頑張って! トレーニングもね。

太論

▲「生まれ変わったら、俺は中央のジョッキーになりたい」と的場騎手から本音が


小牧 はい。的場さんにも、まだまだ現役で頑張っていただきたいです。

的場 いつまで乗れるかわからないけどね。これからは自分に挑戦するつもりで、もうちょっと頑張ってみるよ。          

(2014年3月31日収録)

次回へつづく


【ユーザーからの質問コーナー】

Q.直線で追い比べになったとき、馬の余力以外に、勝敗を左右するジョッキーの技などはあるのでしょうか?

小牧 そうやねぇ、ヨレる馬であれば、いかに素早く鞭を持ち替えられるかも大事やし、ビッシリ併せにいくこともあれば、あえて少し離すこともある。

──あえて離すというのは、相手の勢いを削ぐため?

小牧 そうそう。勝負根性のある馬は、一度勢いが鈍っても、併せることでもう一度伸びてくるからね。そうさせないために、あえて少し離すのも作戦のひとつ。もちろん、自分の馬の手応えがあるときに限るし、大抵は併せにいくけどね。それ以前に、追い比べになったときに一番大事なのは、人間の気持ちですわ。人間がアカンと思ったら馬も諦めてしまうし、実際、人間の気持ちが途切れるとスーッと下がってしまう。楽に伸びてくるような馬は別として、馬は基本的に走るのを止めようとするから、馬に負けない気持ちが大事。だから、追い比べは自分の馬との闘いでもあるね。

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太論

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1967年9月7日、鹿児島県生まれ。1985年に公営・園田競馬でデビュー。名伯楽・曾和直榮調教師の元で腕を磨き、10度の兵庫リーディングと2度の全国リーディングを獲得。2004年にJRAに移籍。2008年には桜花賞をレジネッタで制し悲願のGI制覇を遂げた。その後もローズキングダムとのコンビで朝日杯FSを制するなど、今や大舞台には欠かせないジョッキーとして活躍中。

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