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いよいよ今週の日曜日に開催、凱旋門賞展望

  • 2016年09月28日(水) 12時00分


日本馬だからと言って、贔屓目には見ないよう努めている筆者だが…

 いよいよ今週の日曜日(10月2日)に開催が迫ったG1凱旋門賞(芝2400m、シャンティイ)の展望をお届けしたい。

 凱旋門賞には実は、27日(火曜日)の現地11時30分(日本時間18時30分)に、フォーフィット・ステージと呼ばれる登録ステージが設けられている、5月11日に締め切られた第1回登録以来となるこの登録ステージで、出走メンバーはかなり絞り込まれることが予想されているが、この原稿はそれ以前に書かせていただいていることを、予めご承知おきいただきたい。

 すなわち、出走メンバーに不確定要素がある中で書いているわけだが、ここでネットケイバ読者の皆様にお知らせがある。今週後半、凱旋門賞の枠順確定後に、ネットケイバには改めて私の予想を出させていただく予定になっているので、確定版はぜひそちらをご参照いただきたいと思う。

 現段階でもそうだし、この馬が取り消さない限りは、確定版の予想でも本命にするつもりなのが、英国から参戦するポストポーンド(牡5、父ドゥバウィ)である。

 昨年のG1キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(芝12F)から、今年8月17日にヨークで行われたG1インターナショナルS(芝10F88y)まで、4つのG1を含む6連勝中という、欧州のこの路線の絶対王者で、ブックメーカー各社も1番人気に推している馬である。

 3月のG1ドバイシーマクラシック(芝2410m)で、レース前に右前の蹄鉄を落とし、打ち直すことなく裸足で走ったドゥラメンテを2馬身突き放しただけの競馬を見た段階では、秋の凱旋門賞で日本馬の前に立ちはだかる存在になろうとは思ったものの、決して負かすことが出来ない馬ではないという印象を持った。

 強烈だったのが、今季の欧州初戦となったエプソムのG1コロネーションC(芝12F10y)で、ほとんど馬なりのまま抜け出して、前年のG1BCターフ(芝12F)勝ち馬ファウンド(牝4、父ガリレオ)を4.1/4馬身突き放す競馬を見て、これは容易ならざる敵だと認識を新たにした。競馬が安定しているし、速い馬場にも重い馬場にも対応出来るし、そして24日にニューマーケットで行った最終追い切りも絶好の動きだったと言うから、死角が見当たらないのである。

 実は、そのポストポーンドが、直前走のG1インターナショナルSで、快勝だったもののゴール前で右に寄れる仕草を見せ、一方で、日本から参戦するマカヒキ(牡3、父ディープインパクト)がG2ニエル賞(芝2400m)で100点満点の試走を終えた段階で、ほんの少しの間、ポストポーンドとマカヒキのどちらを本命にしようか迷った時期もあったのだが、ゴール前で力のぶつかり合いになった時、相手をねじ伏せるパワーというか、生命体として持つ破壊力という点で、現段階でのマカヒキはポストポーンドに一歩譲ると見て、ポストポーンドを「上」と判断するに至った。

 逆転の可能性もある2番手候補が、マカヒキである。前述したように、G2ニエル賞の内容が完璧であった。今年の日本におけるこの路線の3歳牡馬世代は非常に水準が高く、その中にあって世代の頂点に立った同馬であれば、力量的に引けはとらないはずだ。そして、タイキシャトルやエルコンドルパサーの受け入れ厩舎となり、その後の日本からの遠征してきた馬をすべからく観察してきた現地のベテラン調教師トニー・クラウト師をして、「これほどリラックスしている日本馬は見たことがない」と言わしめた、メンタルの強さを持つのがマカヒキである。しかも鞍上は、フランス競馬とシャンティイ競馬場をよく知るクリストフ・ルメールである。日本馬だからと言って、贔屓目には見ないよう努めている筆者だが、マカヒキは凱旋門賞馬となる資格を十二分に備えた馬だと思う。

 逆に、若干の贔屓目を加味して、勝つ可能性のある馬としてもう1頭挙げたいのが、ファウンド(牝4、父ガリレオ)である。ここが今シーズン8戦目と、昨シーズンに続いてタフなローテーションを歩まされ、文句も言わずに(言えるわけもないのだが)駆け続けて、どのレースでも確実に脚を伸ばしてくる姿には、頭が下がる思いである。陣営に有力馬が多数おり、使い分けをする意味でも、それぞれの馬が目標とするレースがなかなか見えて来ない傾向があるのがエイダン・オブライエン厩舎だが、そんな中にあって、ファウンドに関しては「秋の目標は凱旋門賞」と早くから明言し、6月半ばから8月半ばまで2か月の夏休みを与えていることから、オブライエン師には『この馬で凱旋門賞を獲れる』との目論見があるように思う。最終的に、同厩のマインディング(牝3、父ガリレオ)もここを使うようなら、私の推論も根底の部分がぐらつくのだが、25日に改めてオブライエン師が「マインディングは他に廻る」とコメント。陣営がファウンドに相当篤い信頼を寄せていることは、間違いないと思う。

 伏兵は多彩で、前売りオッズを見ると思わず手を出したくなる馬が複数いる。牝馬優位という近年の傾向を鑑みれば、G1仏オークス(芝2100m)が半馬身差2着で、直前走のG1ヴェルメイユ賞(芝2400m)を制したレフトハンド(牝3、父ドゥバウィ)も不気味だ。昨年のこのレースの3着馬で、差し馬同士で決まったG1愛チャンピオンS(芝10F)で先行して4着となったニューベイ(牡4、父ドゥバウィ)も、見限れないと思う。仏国におけるこの路線の前半戦の総決算であるG1サンクルー大賞(芝2400m)と、古馬の前哨戦G2フォワ賞(芝2400m)を制しているシルヴァーウェイヴ(牡4、父シルヴァーフロスト)あたりも、現在のオッズ(21-26倍)なら買いたくなる。あとは、天候や枠順を見て、最終的な判断を下したいと思う。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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