常石勝義&赤見千尋が見つけた 競馬の職人/常石勝義&赤見千尋

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なぜ残る?田辺裕信の逃げの極意

2016年11月22日(火)18時00分

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田辺裕信の逃げの極意

田辺騎手が語る逃げの極意とは



スタートからいかに位置を取るかが重要


田辺裕信の逃げの極意

武蔵野Sは、早め先頭で押し切りレコード勝ち(撮影:下野 雄規)


赤見:タガノトネールでの武蔵野ステークス制覇、おめでとうございます!

田辺:ありがとうございます。タガノトネールに乗せていただいたのは1月の根岸ステークス以来2度目だったんですけど、状態も良かったし、他の馬次第では逃げてもいいかなと思っていました。スタートは良かったですが、内のドリームキラリが主張していたので番手になりました。上がりが切れるタイプではないので、直線に入る手前から早めに追い出しました。

赤見:早め先頭で押し切るというかなり強い勝ち方でしたが、どの辺りで勝てると確信しました?

田辺:それはゴール板のところです。それまではわからなかったですね。でも、馬場もありましたがレコードを出してくれるとは…。相手も強かったですし、8番人気でしたが本当にがんばってくれました。次のチャンピオンズカップも楽しみです。

赤見:田辺騎手って、あの逃げ方、なんなんですか?ロゴタイプの安田記念もそうですけど、人気薄でしれっと逃げて勝つっていうか。魔法ですか?

田辺:そうですか(笑)?馬が走るからじゃないですか。

赤見:いや、馬たちのがんばりもあるでしょうけど、そのがんばりを発揮させる魔法のテクがあるんじゃないですか?

田辺:魔法のテク(笑)。僕だってペースは考えてますよ。ただ逃げてる訳じゃないです。何ていうか、後ろが嫌なペースを考えてますね。例えば今回みたいに早めに離すとか、引き付けて逃げた方がいいのもいるでしょうし、同じ逃げ切りっていってもいろいろなパターンがありますね。

赤見:馬によって違うと。あとは周りのメンバー次第?

田辺:そうですね。自分の馬と、その時のプレッシャーの掛かり方とかで判断します。例えば、早くからぴったり来られたとしても、自分の馬がリラックスしてたらそんなにプレッシャーは掛からないんですよ。見た目よりも道中楽だったりする時もあるので。

赤見:その判断が魔法なんですかね。逃げの極意が、何か他にもある気がするんですけど。

田辺:逃げの極意ですか。なんですかねぇ。極端な話、ずーっと先頭の状態でいられたなら、ゴール板手前まで追わなくていいんじゃないかって思うし、スローで逃げられてても自分の馬が力んでいるんだったら、流して、早めに抜けてた方がいいのかなって思います。逃げてるからスローに落とさなきゃとか、後ろが迫ってるから追い出さなきゃとか、そういうのは考えてないですね。

赤見:力んでる方が早めに離す?

田辺:脚質ですね。よく「この馬は速い脚がないから早めに動いてくれ」っていう人いるじゃないですか。それと似てる感覚なんですけど、あんまり引き付けすぎても、小脚を使えない馬は出し抜け食らうし、脚が余っていてもやられる可能性がある。追い出しを待てば待つほどいいってもんじゃないんです。あとは、本当のゴール板より、自分のゴール板を手前に設定してますね。

赤見:どういう風にですか?

田辺:本当のゴール板より100mくらい手前を自分のゴール板として設定してて、だから周りから見ると早めに追い出してるって見える場合があるんじゃないですかね。何でそんなことをするかといえば、そこで脚が上がったとしてもいきなりゼロ?になるわけじゃないじゃないですか。だいたいが1ハロン11秒台、12秒台で走ってて、最後止まっても一気に15,16にはならないから、止まっても13だから。自分の心の中のゴール板を過ぎたら、その後は馬の惰性でがんばりがどれだけあるかっていう風に考えているんです。だってそうじゃないですか?だから大逃げの馬が残るんですよ。ゴール前で必ずしも11秒12秒の脚を使う必要はないんです。

赤見:確かにその通りですね。

田辺:あとは、「やべ、手応えなくなったな」と思っても、自分が一生懸命になりすぎて、気持ちが入りすぎて、ガシガシ追ってバランスを崩すよりは、流してた方が止まるのも少しは軽減されるんじゃないかと思ってます。

赤見:そう言われてみると、田辺騎手の逃げ切り勝ちや早め先頭で勝つ時って、ガシガシ追ってるって感じはあんまりないですね。飄々と流してる感じがします。

田辺:まぁでも、結局勝ち切れるかどうかって最初のポジション取りで決まるんですけどね。スポッといい位置にハマったらだいたいいけるんで。勝負所って言われる3,4コーナーや直線よりも、そっちの方が大事だと思います。

赤見:なるほど。やはりスタートからいかに位置を取るかが重要なんですね。では今年もあとわずかになりました。ファンの皆さんにメッセージをお願いします。

田辺:たくさんいい馬に乗せていただいているので、もっともっとがんばります!応援よろしくお願いします。
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コラムニストプロフィール

常石勝義&赤見千尋
常石勝義&赤見千尋
常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

赤見千尋
1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミックシリーズ」の「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍中。