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6歳馬ながらスケールアップしていたネオリアリズム/中山記念

  • 2017年02月27日(月) 18時00分


◆1〜2番人気馬の凡走は敗因がつかめない

 絶好調M.デムーロの騎乗した6歳ネオリアリズム(父ネオユニヴァース)が巧みに好位から抜け出し、昨年の札幌記念(GII)につづき重賞2勝目を飾った。

 M.デムーロ騎手は、前日25日の「アーリントンC(ペルシアンナイト)」につづいて連日のJRA重賞勝ちであり、なんと月間JRA重賞5勝(2度目)となった。

 テン乗りだったネオリアリズムの中山記念制覇は、素早く好位を確保して流れに乗り、ライバルが一気に動いた4コーナー手前のインでひと息入れるなど、6歳馬ながらまだ17戦【7-1-2-7】のネオリアリズムの可能性をフルに引き出すあざやかな騎乗だった。

 予測された以上のスローに陥り、後半1000mが「57秒3-46秒2-34秒6-11秒7」の高速決着になったが、巧みな先行策でモーリスを振り切った札幌記念2000mとは少し異なり、11秒台のラップが連続する上がりの速いレースを抜け出したネオリアリズムは、現在のデキの良さを生かし切っただけでなく、510キロ台に戻った身体は明らかにスケールアップしている。

 これでネオリアリズムは、「4月末の香港のクイーンエリザベス2世C、3月末のドバイターフ、4月2日の大阪杯」。陣営は3つの候補レースの中から、もっとも条件有利(相手関係有利)なレースを選択できる立場に立った。半兄アイルラヴァゲイン(父エルコンドルパサー)は、8歳時にもオープンで快走し勝っている。同じく上のリアルインパクト(父ディープインパクト)が海外のGIを制したのは7歳になってからのオーストラリア遠征だった。堀宣行厩舎のネオリアリズムはここまで無理使いすることなく大事に育てられてきたので、これからは中距離のビッグレースにマトを絞って挑戦することになる。

 昨年につづき、すでにドバイターフへの出走が決まっていた人気のリアルスティール(父ディープインパクト)は、最初は中位で流れに乗っているように見えたが、小差3着した昨年の中山記念とは行きっぷりが異なり、見せ場もないまま8着(0秒7差)の完敗に終わってしまった。

 乗り込み量に不足はなく、ここまで鉄砲駆けには【1-2-1-0】の良績があった。また、大敗記録がほとんどない馬だけに、矢作調教師も「正直、分からない」。戸崎騎手も「スイッチが入らなかった」と、敗因がつかめない凡走である。脚が長く、500キロ級の馬にしてはスラッとみせる体型のリアルスティールにしても、今回はやけにすっきり映りすぎた気もするが、少々もまれたくらいで凡走する組み合わせでもないから、不安を感じさせることになった。ペースが上がった3コーナー手前からもう一番手応えが悪かったのがリアルスティール。ドバイに向けての巻き返しの調整が順調に進むことを期待したい。

 同じく人気のアンビシャス(父ディープインパクト)も、4着(0秒2差)ではだいぶ物足りない凡走に近い。この日、阪急杯でも1〜2番人気馬はともに見せ場も作れない着外に凡走。そして中山記念でも1〜2番人気馬がそろって馬券圏内に食い込めなかった。調整の難しい時期ではあるが、それにしても…である。アンビシャスの場合は、昨年が同じような位置取りから「上がり33秒6」で猛然と伸び、勝ったドゥラメンテとクビ差の2着。今年も同じようにスパートして外に回り「上がり33秒8」で勝ち馬と0秒2差なので、アンビシャス自身のレースの中身はあまり変わりないともいえるが、それではこのあとの展望がしぼむわけで、このスローにしては結果的にタメすぎか。大きくスケールアップして欲しかったが、今回の相手に完敗ではやっぱりGI級ではない心配も生じた。

 2着に突っ込んだサクラアンプルール(父キングカメハメハ)は、今回がオープンに昇級して2戦目。昨年のこの時期はまだ500万条件を勝っただけの条件馬だったから、古馬になってからの上がり馬の典型だが、今回はコースロスを最小限にとどめ、デキの良さを最大限に発揮した鞍上の好騎乗によるところ大だろう。別定56キロのGIIで通用したのだから評価を大きく上げないといけないが、芝ではここまで中山コースだけに良績が集中するあたり、今回は全体のレースレベルも平凡だったから、真価を問われるのは次走か。

 巧みに先行して3着に粘ったロゴタイプ(父ローエングリン)は、今回はあまり状態がいいとはいえなかったことと、ずっとトップクラスで健闘してきた7歳にしては立派とはいえるが、本来のロゴタイプの粘り腰ではない。楽に勝っても不思議ない流れであり、相手の凡走に助けられた印象が濃かった。

 タフな牝馬ヌーヴォレコルト(父ハーツクライ)は、今回は返し馬の動きが重く、数字とは逆に馬体が緩く映った。このあとのレース選択にはきびしいものがあるかもしれない。

 好調ツクバアズマオー(父ステイゴールド)は、状態の良さは光った。ただ、結果的にレースレベルは高くなかったのに、ここに入るとスケールもう一歩の印象が残った。後半だけのレースになっては、展開も不利だったろう。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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