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POG取材ピーク

  • 2017年03月29日(水) 18時00分


吉澤ステーブルでの合同取材

 先週から今週にかけて一連のPOG取材のピークを迎える。今年は他の町に出かけていないので下河辺牧場やノルマンディーファーム、ビッグレッドファームなどの取材の状況は話に聞くだけだが、先週の日高は風がやや強かったものの、比較的好天に恵まれて予定をほぼ消化することができた。

 私の担当は、地元浦河のBTC周辺に点在する育成牧場である。毎年のこととはいえ、全取材量を100とすると、そのうち30くらいは、事前の挨拶と日程調整に費やされる感じだ。まず、昨年お願いした育成牧場を回り、今年も取材させて頂けるかどうかを打診するところから始まる。仮に承諾をもらえたとすると、次は、日程調整である。しかし、これはあくまでも育成牧場の都合が優先され、何日の何時頃ならば対応できると回答を得られて初めてカレンダーにメモできる。

 それを繰り返して、一週間のスケジュールを埋めて行くのだ。育成牧場の場合、午前中はほとんど調教が主体になるため、いきおい都合がつけられるのは午後ということになる。ただ、牧場によっては、水曜日か木曜日を調教休日にしたり、あるいは軽めにしているところもあって、そういう日は柔軟に対応してもらえることが多い。

 23日(木)は、朝8時から界隈きっての大手である吉澤ステーブルでの合同取材であった。BTC周辺のみならず、日本全体でも、屈指の規模を誇る吉澤ステーブルは、管理頭数もさることながら、在厩馬の質が揃っていることでも知られる。

吉澤ステーブルに集まった取材陣

吉澤ステーブルに集まった取材陣

 朝から良く晴れたこの日、約束の時間より少し前に、取材に参加する各社のライターやカメラマンが合わせて10数人集合した。以前は初めに立ち写真の撮影を行って、終了後に各馬のコメントをもらうという順で取材が行なわれていたが、数年前より「同時進行」になった。

同時進行で各馬のコメントを聞き取る

同時進行で各馬のコメントを聞き取る

 どの馬を出して頂くかは牧場に一任である。吉澤ステーブルは大所帯なので、頭数はいくらでも出せるというが、厩舎や馬主などに著しい偏りが生じないようにという配慮がなされ、全27頭の馬主はすべて異なっていた。厩舎もまた基本は1頭、多くて2頭というように案分されており、まったく偏りが見られない。

 27頭のデータを記した一覧表には、性別、競走馬名(ついていない馬は母馬名の後ろに2015と表記されている)、馬主、厩舎、父母が明記され、それを確認しながら1頭ずつ出てきた馬を撮影する。

 撮影時間内に、囲み取材を行なっている編集者やライターたちがコメントをもらい、それをノートにメモする。馬体重はその中で教えてもらう。現在の調教進度や性格、馬体の特長、騎乗時の感触、坂路での時計など、各馬に関するアピールポイントを聞き出すのだ。

 一方の撮影陣は、立ち写真に集中する。持ち手に一歩前に、あるいは後ろに、軸足を広くとか狭くとか、良い立ちポーズになるまで修正してもらい、シャッターを押す。

 撮影の所要時間は、馬によっても、また育成牧場によっても(あるいは天候もある)まちまちだが、ここ吉澤ステーブルの在厩馬は馴致が行き届いており、27頭を撮り終えるのに2時間とかからなかった。だいたい1頭あたり3〜4分くらいであろうか。ほとんど手こずるような馬がおらず、極めて順調に進んだ。しかも、持ち手のスタッフは10年選手ばかりで、みんな慣れている。こうした「立たせる技術」もまた育成牧場では不可欠なもので、管理馬でできるだけ格好良く見せる上でひじょうに大事な技能と言える。

 一見、地味に見える技術だが、これはかなり巧拙が出てしまう。センスの良いスタッフでも技術の習得には何年かかかり、騎乗とはまた違った意味で奥の深い分野だ。

 全27頭の詳細な内訳はいずれ刊行されるPOG本をご覧頂くとして、ここでは最後に登場した「ウオッカ」の産駒を紹介しておく。父はFrankel。栗東・角居厩舎に入る予定の牡馬で、毛色は青鹿毛である。ウオッカの産駒はここで何頭も見てきたが、印象としては年々産駒の出来が良くなってきている気がする。今年デビューのこの牡馬は、なかなか精悍な雰囲気を持っており、動きも良さそうだ。馬体はバランスが取れており、俊敏そうな感じである。表情も落ち着いており、大物感が漂う。特別にこの馬は常歩や顔アップなどの写真も撮らせてもらった。馬体重は530キロと聞いたが、均整が取れているのでそんなにあるとはとても思えない。これは今からデビューが楽しみな馬である。そろそろ産駒が活躍しそうな予感がする。

ウオッカ2015

ウオッカ2015

ウオッカ2015の顔

ウオッカ2015の顔

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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