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パンテールの不敵臭

  • 2017年04月06日(木) 12時00分


桜花賞を1着する馬には2つのタイプがある。

#1 桜花賞1着は、名牝伝説のはじまりにすぎず、その後もG1戦線で勝ち負けしていくタイプ。

#2 桜花賞は、一世一代の輝きを放っての1着で、その後、早めに引退か、G1では勝ち負けできず、なんなら重賞でも苦戦するタイプ。

去年は、メジャーエンブレムに敬意を表しつつも、一世一代の輝きを放つ候補として、ジュエラーに期待してみた。ジュエラーが桜花賞だけで終わるとは思っていなかったけれど、その後はオークス回避、秋華賞4着で早々と引退してしまった。結果的には桜花賞が一世一代のレースになってしまった。

今年はどっちだろう?
名牝へのはじめの一歩の馬が現れるか、一世一代の光彩を放つ馬が現れるか。

以下は、桜花賞の1着馬と、その1着馬のその後のG1成績と、1人気馬の着順と単勝オッズだ。

桜花賞1着から名牝への道を歩んだ馬と、桜花賞が一世一代の走りだった馬がわかる。と同時に1人気の単勝が1倍台でも簡単には勝てないこともわかる。

07年
1着 3人気ダイワスカーレット その後のG1成績(以後、略)3-2-0-0
1人気 2着ウオッカ 単1.4倍

08年
1着 12人気レジネッタ その後0-0-1-4(3着はオークス)
1人気 8着トールポピー 単3.8倍

09年
1着 1人気ブエナビスタ 単1.2倍 その後4-7-2-3

10年
1着 1人気アパパネ 単2.8倍 その後3-0-2-4

11年
1着 2人気マルセリーナ その後0-0-1-6
1人気 2着ホエールキャプチャ 単3.1倍

12年
1着 2人気ジェンティルドンナ その後6-3-1-2
1人気 6着ジョワドヴィーヴル 単2.3倍

13年
1着 7人気アユサン その後0-0-0-1(オークス4着以後、2戦で引退)
1人気 4着クロフネサプライズ 単2.8倍

14年
1着 1人気 ハープスター 単1.2倍 その後0-1-0-3(2着はオークス)

15年
1着 5人気レッツゴードンキ その後0-1-0-6(地方除く)
1人気 9着ルージュバック 単1.6倍

16年
1着 3人気ジュエラー その後0-0-0-1(秋華賞4着以後引退)
1人気 4着メジャーエンブレム 単1.5倍


単1倍台の馬の成績2-1-0-2。

2勝は単1.2倍のブエナビスタ、ハープスターで、単1.4倍のウオッカは2着にこぼし、単1.5倍のメジャーエンブレムは4着、単1.6倍のルージュバックは9着に惨敗した。
単2.8倍で1着している馬(アパパネ)もいるけど、単1.2倍ないと安心できない感じで、桜花賞の1人気の1着はなかなかのハードルであることもわかる。

1人気確実のソウルスターリングの予想は1.7倍。
おっと!
予想なので、断定できないけど、今年は2人気以後にも魅力的な馬がいるから1.2倍にはなりそうにない。

しかもここ2年は関東馬が単1倍台で馬券圏外に負けている。ソウルスターリングは関東の藤沢和厩舎だ。
おっと!

誰でもそうだと思うけれど、ついつい去年1人気で4着に負けたメジャーエンブレムと重ねてしまう。
とはいえ、むやみに重ねては天下のフランケル産駒のソウルスターリングに失礼だ。まずはソウルスターリングだけでなく、今年出走するメンバーの全体像を掴まないと。話はそれからだ。

こういう場合は信頼できる機関の見解を読むにかぎる。
「厳選予想 ウマい馬券」でもお馴染みの亀谷敬正・双馬毅・馬場虎太郎のお三方が、今年も競馬王5月号(8日発売)で、春のクラシックについて、大局的に語ってくれている。適性もさることながら、各馬の基本性能に重点を置いて語ってくれているから、能力を整理するのにとても便利で、面白い。

桜花賞ではなく皐月賞出走を決めたファンディーナの評価は…ふむふむ…なんと!なななんと!!
今年のダービーはまだ骨格が見えないように感じるけど、プロのみなさんの見解は……ふむふむ……ワオ!まだ頭角を現していないけど、今後注目すべき馬が何頭かいるとな!!
その馬とは、おっととっと、テーマは桜花賞だった。
ふむふむ……。へぇ〜。あの産駒の馬があのローテであの距離を勝つのは異例なんだ……。なるほど!総じて今年の牝馬は上位人気の馬たちが頑強そうだな……。
自分が注目している馬の評価はどうかな?うおっとぉぉぉ!!!

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ソウルスターリングに間違いはあるか?
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ここ2年、単1倍台の1人気馬が馬券圏外に負けている。しかもどちらも関東馬だった。特に阪神JFを勝って、その後のレースも勝って、鞍上ルメールとなるとついつい去年のメジャーエンブレムを連想してしまうけど、ソウルスターリングは去年のメジャーエンブレムよりも頼りになるような気がしている。

理由は、ルージュバックは阪神が初出走で、前走が2月のきさらぎ賞で、メジャーエンブレムの前走は2月のクイーンCだったのに対し、ソウルスターリングは前走チューリップ賞に出走していたからだ。

関東馬で桜花賞を勝ったのは10年で2頭、アパパネとアユサンで、どちらも前走チューリップ賞だった。1人気で2着に負けた関東馬のホエールキャプチャの前走はクイーンCだった。

前走、チューリップ賞を使うとなると、2回連続で関西遠征することになるけど、むしろ、それが可能な馬でないと関東馬は1着しにくいのかもしれない。ちなみにこの20年で桜花賞を勝った関東馬は4頭いて、前記2頭の他にキストゥヘヴンとダンスインザムードが1着したが、どちらも3月のフラワーCを勝っての参戦だった。

関東馬で桜花賞に勝つなら、チューリップ賞に出走するか、3月のフラワーCで1着するのが大事なことがわかる。

藤沢和厩舎の1人気といえば、ダンスインザムードとスティンガーが思い浮かぶけど、ダンスインザムードは前記したとおりにフラワーCを使えていたけれど、スティンガーは阪神JFからの参戦で1人気12着に惨敗している。馬優先主義の藤沢和厩舎がソウルスターリングをチューリップ賞に出走させ、1着させているのだから、馬はタフで、頼もしいということだろう。

ルメールも去年と同じような脚質の馬で、去年と同じような轍を踏むとは思えない。去年は3枠5番でいいスタートをきったけれど、外から次々に馬が押し寄せ、気がついたら7番手になっていた。直線でもなかなか抜けて来られず、後手、後手に回っていた。

今年内枠に入ったとしても、去年の経験があるから、いい位置を確保しに行くのではないか?うむ、大丈夫だ。今年は間違わない!

ただ、いい位置を確保しようとして、3、4番手につけられればいいけれど、ちょっとした手違いで、流れが速くなってしまったらどうだろう?桜花賞は前半35秒を切ると、先行馬は崩れがちだ。踏ん張れたのは3、4番手にいて2着したヴィルシーナしかいない。1着は4角10番手より後ろの馬ばかりだ。去年も前半34.8で、勝ったのは4角17番手にいたジュエラーだった。

ソウルスターリングはヴィルシーナより現時点での完成度は高そうだけれど、前半34秒台の流れに巻き込まれたら、わからない。去年と同じ轍を踏まないがための強気の策が最後の踏ん張りを削ってしまわないか?おっと、安心するつもりが心配してしまった。

ルメールは、結果的に後手を踏んでしまうことはあっても、暴走させるような騎乗をするとは思えない。うん、大丈夫だ。ただウオッカでも単1.4倍で負けた。レース中、取り立てて間違いはなく、のちにダービーを勝ち、名牝となったウオッカでも負けた。ダイワスカーレットという別の名牝がいたからだ。

ソウルスターリングが、この成績で単1.2倍になれなさそうなのは、ライバルがそれを阻んでいるからだろう(筆頭はアドマイヤミヤビのはず)。ソウルスターリングにはメジャーエンブレム以上の敬意を抱きたいけど、レース中、間違いがなくても、それ以上の光を放つ馬がいたら負けてしまうこともある。

つまり、単1.2倍にならないのならちょっと心配してもいいということだ。

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桜花賞注目馬
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ミスパンテール
レーヌミノル

ミスパンテールは予想5人気。前走のチューリップ賞は7人気だった。

もしかしたら買い時は前走だったかもしれない。トライアルを伏兵で2着するような馬を本番で、しかも人気も上がる状況で買うのには少し勇気がいる。前走に引っ張られて推したみたいで、外すとカッコ悪いからだ。

それでもミスパンテールに注目してしまうのは、謎めいていて、不敵感がいっぱいだからだ。

四位騎手の前走後のコメント。
「夏以来だったので、最低でも本番への権利はと思って臨んだ。<中略>大事にしてきた甲斐があって馬が良くなっていたので、本番が楽しみ」(週刊競馬ブックより)

夏に札幌で新馬に出て、1着した時点で、この馬のポテンシャルがわかったから、以後、成長を促し(捻挫負傷もあったようだけど)、チューリップ賞に出て来たと推測できる。本来ならば、1戦使って、チューリップ賞で権利取りを目指してもいいのに、それをしなかった。それだけで謎めいている。

ソウルスターリング、リスグラシューがいるのに「最低でも権利取り」で臨んだということは、この2頭を食ってやろうとも思っていたということだ。実際、リスグラシューを食った。内心、よっぽど自信があったとも取れる。クンクン。あ〜不敵臭がする。

3戦目が桜花賞で、好走した馬といえば、四位騎手騎乗のレッドディザイアがいる(この10年で1頭のみ)。この馬は新馬1着→エルフィンS1着→桜花賞2着だった。この経験が四位騎手の自信の裏付けか?だとしたら、前走より人気が上がっても、5人気ならむしろ美味しい可能性もある。

昆師のコメントはもっと不敵だ。

「(前走チューリップ賞は)勝負どころで勝ち馬に離されたが、それであれだけの脚を使ったから、今度はあの馬を目標に運べるだろう。まだ伸びしろしかないし、馬体を併せるところまでいけば、この馬の根性が生きてくる」(今週の週刊競馬ブックより)

キレのある末脚が印象的な新馬とチューリップ賞だったけど、陣営は勝負根性があるという見解のようだ。プロがそう言うのだからきっとそういうことだ。

そして、本番では「あの馬」と馬体を併せたいとまで語っている。クンクンクンクン。不敵臭が充満しているよ!実際、休み明けのデビュー2戦目に、重賞で1分33秒5で走れたら、自信にもなるだろう。

そもそもダイワメジャー産駒で末脚自慢は珍しい。G1を勝つ産駒は先行系ばかりだ。差せるポテンシャルがあって、なおかつ、出していっても頑張れる資質もあるということか。

ならば、本番で、その謎解きの答え合わせをしたくなる。「はったり」か「ほんまもん」か、不敵臭の匂い合わせをしたくなる。

この世代の牝馬ヒエラルキーは、人気どおりソウルスターリング、アドマイヤミヤビ、リスグラシューの順番で、この3頭の牙城は屈強に思える。ただG1ホースを何頭も育てた実績のある調教師とこの時期の名牝の背中を知る騎手が仕掛けた作戦だ。はったりだとしても、素っ頓狂なものではないはず。

というわけで、今年はミスパンテールに注目することにした。
そして、一世一代の芳香を放ってもらうことにした。桜花賞なのにチュベローズなパンテールの香りが漂ったら官能的だ。


レーヌミノルは稍重以上の馬場になったら、ナイガシロにせず、クンクンしてみたい。

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競馬専門誌・競馬王の元本紙予想担当。今は競馬王その他にて、変な立ち位置や変な隙間を見つけて、競馬の予想のようなものを展開中のニギニギ系。 著書はなし。最新刊「グラサン師匠の鉄板競馬 最前線で異彩を放つ看板予想家の鉄板録」に再び間借りして、4年ぶりに全重賞・根多の大百科的なものを執筆。

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