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入講から1ヶ月

  • 2017年05月17日(水) 18時00分


作業と訓練に追われる日々が続く


 BTC育成調教技術者養成研修第35期生が今春入講してから、早や一ヶ月が経過した。

入講式が4月4日。その10日後に1期先輩の34期生を送り出し、そこから本格的に訓練が始まった。馬の基本的な扱い方からスタートし、騎乗に関しては、まず装鞍、脱鞍の方法、乗り下りの仕方、そして実際に騎乗し始めると、常歩、速歩、駆歩と進む。もちろん最初は、大事をとり、屋内の覆馬場を使っての訓練である。

 それと並行して、洗い場での馬の繋ぎ方や、手入れの方法、馬の持ち方、馬房掃除の方法など、研修生にとっては過密なメニューが詰め込まれて行く。

馬を洗うBTC35期生

馬を洗うBTC35期生

 5月もちょうど半分経った16日。この日は、いよいよ覆馬場から出て、初めて戸外の角馬場での訓練が開始されると聞き、見学させて頂くことにした。

輪乗りの訓練風景

輪乗りの訓練風景

 それまで屋内施設でばかり騎乗していた彼らだが、外の角馬場となるとまたどの顔にも緊張感が漂っている。屋内施設ならば、たとえ落馬し放馬をしても、出入り口が閉められているので大事には至らない。だが、戸外となると、やや話は違ってくる。壁に囲まれた覆馬場とは異なり、馬には周囲のいろいろなものが視界に飛び込んでくる。そして、さまざまな音声も耳に入る。物見をするタイプの馬は特に要注意で、訓練の始まる前には教官からその点を注意されていた。

 だが、まだ1ヶ月である。何といっても余裕がない。研修生19騎(厳密にいえば教官が2人混じっているので全体では21騎になる)が3馬身の間隔をとりながら、常歩、速歩と進んで行くが、まだまだ「乗りこなす」というよりも、「馬に走られている」といった方が近い。訓練馬は元競走馬のサラブレッドがほとんどで、よく調教されているとはいうものの、背中に乗せているのは初心者マーク付きの新人たちなので、そうそう意のままには動いてくれない。

BTC35期生谷内君の訓練風景

BTC35期生谷内君の訓練風景


BTC35期生伊藤さんの訓練風景

BTC35期生伊藤さんの訓練風景

 入念に速歩で体をほぐした後は、角馬場を駆歩で周回するところまで進んだ。例年に比べると今期の35期生たちは訓練の進度が早いのだそうで、駆歩になるとさらに必死の形相で馬に乗っている。乗っているというよりも、「しがみついている」と表現した方が近いような研修生も少なくない。もちろんまだ1ヶ月なのだから無理もない話で、とにかく鞍数をこなして慣れて行くしかない。

 研修生番号10番の木戸司君は、角馬場での騎乗訓練が始まった時、騎乗馬がいくぶんわがままな素振りを見せていたことから、急きょ教官が乗り替わり「十分に矯正された後に」再び騎乗が許された。「まだまだ全然ダメです」と木戸君は反省しきりだったが、1ヶ月で思うままに馬を御せるようならば天才であろう。彼に限らず、日々壁に突き当たっては反省しながら、技術を身につけて行くのがこの研修である。

BTC35期生木戸司君の訓練風景

BTC35期生の木戸司君

 因みに今月の研修内容としては、「ムチを持っての騎乗開始、シミュレーターを使っての騎乗姿勢確認、手綱の持ち替え方、鞭の持ち替え方、馬の止め方、飛び乗りの仕方」などが項目に並ぶ。

 ようやく少し慣れてきたかという程度のこの時期から、訓練内容は待ったなしでどんどん先に進む。来月には早くも角馬場から800mダートコースに出て、2騎併走までメニューが進められる。また、暖かくなるにつれ、研修所周辺の草刈り(機械を使う)もしなければならない。44頭いる訓練馬たちの面倒は基本的に研修生たちが看ることになっており、作業と訓練に追われる日々が続く。

 とはいえ、1ヶ月も経てば、だんだんと作業するスタイルが板についてくるし、馬を引く姿や手入れ、洗い場などの様子を見てもそれなりに様になってきている。何事も経験の積み重ねであろう。若者たちは吸収力があるので成長もまた早いのだ。

 今後も定期的に研修の様子を見学させて頂くつもりでいる。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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