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なにやらいつもの年とは異なるムードが高まっている/オークス

  • 2017年05月20日(土) 18時00分


◆ハービンジャー産駒の真価と思える

 近年は波乱の少ないG1に変わっているが、今年はレベルは別にして、人気馬にもろい馬が多い。また、例年なら複数の有力馬を送り込む種牡馬キングカメハメハの産駒が0頭。最近5年間連続して連対馬を送り、この5年間【3-3-3-8】のディープインパクト産駒が、伏兵2頭だけの陣容にとどまる。

 代わって、ハーツクライ産駒が「6頭」。この世代が3世代目になるハービンジャー産駒が「4頭」も出走する。今春の牝馬が関係する重賞の波乱連続と重ね合わせると、なにやらいつもの年とは異なるムードが高まっている。

 フローラSで侮りがたいレースを展開したモズカッチャン(父ハービンジャー)の台頭に注目したい。

 インの7〜8番手追走から、ジワジワ進出すると、坂を上がったあたりで3着入線がある脚いろだった。陣営はオークス出走が見え、3着入線がほぼ確実になった残り200m標識で、「やった」というムードだったらしい。ところが、残り1ハロンから俄然エンジン全開となったモズカッチャンは、抜け出したヤマカツグレースに接近。もう勝敗の帰趨はみえたと思えたのに、最後の最後に猛然と伸びて差し切ってしまったのである。上がり34秒4でまとめたヤマカツグレースが止まったわけではない。苦しくなったはずの残り1ハロンから伸びたモズカッチャンの上がりは33秒9-最後は推定11秒3である。阪神→京都→小倉→中山→と転戦して5戦目、それまでの詰めの甘さがウソのような気迫の加速だった。

 桜花賞に出走したグループと比較し、2番手グループのランクは間違いないが、使われながら急速にパンチアップしたのである。東京の2000mを勝っているのは、ほかにホウオウパフュームと、アドマイヤミヤビだけであり、直前に急上昇のタフな成長力に注目したい。ハービンジャー産駒は、どうもつかみどころがなく、父と同じようにメキメキ地力アップ型が少なかったが、こういうタイプがハービンジャーの真価と思える。サンデーサイレンスの血を持つ牝馬のために輸入されたハービンジャーは、確かにサンデーの血を持つ牝馬に勝ち馬が集中するが、3世代で重賞勝ち馬は5頭だけ。G1の2着馬は1頭のみ。

 評価が怪しくなりかけていたが、モズカッチャンが快走すると、なにもサンデー牝馬や、サンデーの血を持つ牝馬にこだわることはなくなる。サンデー牝馬との産駒の勝ち上がり率は、ここまで5割に満たないから、本当の相性は良くない部類に属している。たまたまではなく、同じように成長してきたヤマカツグレースも、モズカッチャンと同様、サンデーの血はどこにも入っていない上昇馬である。サンデーサイレンスがこれからまだ、最低でも数年はブルードメアサイアーランキング1位を独走することが確実だが、サンデー牝馬のために輸入したハービンジャーが、サンデー牝馬とはそこそこ止まりで、サンデーの血を持たない牝馬から活躍馬を続けて輩出するとき、それこそ生産の幅が広がり、思わぬ大成功となるかもしれない。

 モズカッチャンから、少々手広くいきたい。ヤマカツグレースは本線の1頭にする。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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