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慣れた阪神コースで、もっとも器用に立ち回った/セントウルS

  • 2017年09月11日(月) 18時00分


◆このまま順調ならG1でも最有力グループの1頭だろう

 注目のステップ重賞が3つも行われたが、もっとも近いG1は10月1日の「スプリンターズS」。これともっとも強く結びついているのが、今回、ファインニードル(父アドマイヤムーン)の快勝したセントウルSである。

 過去10年のスプリンターズSで3着以内に入った30頭のうち、直前のステップは「セントウルS出走馬」が最多の12頭もいる。さらには、昨年のセントウルSを1〜2着し、本番で「12着、6着」だったのはビッグアーサーと、ネロ。15年のセントウルSを1〜2着して、スプリンターズSは「9着、5着」だったのが、アクティブミノル、ウリウリだった。注目されつつ本番で怪しい成績になるのも、やっぱりセントウルS好走馬であり、秋最初のG1スプリンターズSのためには、この1200m重賞の結果を正確にインプットしておく必要がある。

 勝ちタイムは、6年連続の1分07秒台であり、今年の「1分07秒5」は平均勝ちタイムそのもの。2012年、まだ4歳時のロードカナロアが「セントウルSを1分07秒3で2着→スプリンターズSは1分06秒7で1着」。2013年、5歳時のロードカナロアが「セントウルSを1分07秒5(58キロ)で2着→スプリンターズSは1分07秒2で1着」という、格好の目安もある。本番での上昇が問われる。

 レースの前後半は「33秒8-33秒7」=1分07秒5。ハイペースではなく、あまり前半が速くならない阪神の1200mらしく、逃げ切ることも可能なバランス。と同時に、差すことも不可能ではない文字通りの平均バランスだった。2013年、ハクサンムーンが逃げ切り、休み明けで58キロだったロードカナロアが、クビ差まで追い詰めた年が、そっくり同じ「33秒8-33秒7」である。

 勝ったファインニードルは、こと芝1200mに限ると、これで4戦連続して1分07秒台。8月の北九州記念では、小回りの小倉が初コースだったこともあり、楽に好位追走になりながら、コーナーで馬群をさばけず詰まり通し。脚を余して1分07秒7だったが、今回は慣れた阪神コースで、もっとも器用に立ち回ったのがこの馬だった。

 馬場差はあるが、6月の阪神では57.5キロを背負い1200mを1分07秒1(33秒4-33秒7)もある。素晴らしい成長力を示したことで知られるアドマイヤムーン(その父エンドスウィープ)の代表産駒。欧州タイプの牝系は非力ではない。典型的なスプリンタータイプの体つきになったいま、このまま順調ならG1でも最有力グループの1頭だろう。中山の芝1200mでも勝っている。祖母の父ロイヤルアカデミーIIは、安田記念を勝った香港のブリッシュラック、ロイヤルスズカなどの父である。

重賞レース回顧

ファインニードルは典型的なスプリンタータイプの体つきになっている(C)netkeiba.com


 このレースの2着が効いて、サマースプリントシリーズチャンピオンに輝いたラインミーティア(父メイショウボーラー)は、これはお見事。最近の良績は新潟の直線1000mに集中していたが、巧みにレースの流れに乗れるならもともと1200mも平気。それを改めて証明したのが、コンビで【2-1-0-2】となった西田雄一郎騎手。インぴったりを回り、前のファインニードルがこじあけて作ってくれたスペースにそのまま突っ込んで伸びた。7歳馬とはいえ、いま絶好調。3着ダンスディレクター(父アルデバランII)も7歳馬なら、8着に差を詰めていたスノードラゴン(父アドマイヤコジーン)は9歳馬である。特殊な距離なら、年齢は問われないことが珍しくない。

 ビッグレースで快走した皐月賞馬ビンゴガルー、ビンゴカンタが代表する一族で、祖母アラマサキャップの父はオグリキャップ。今回の1分07秒7は自己最高であり、いまこそピークなのかもしれない。意外性にあふれた血統背景が魅力である。

 ラインミーティアが、直線1000m→坂のコースの1200mをこなしたのに対し、人気のフィドゥーシア(父メダグリアドーロ)は、前2戦の直線1000mとリズムの異なるレースに対応できなかった。ラインミーティアほどキャリアがなかったためだろうが、これで伏兵ラインミーティアに2連敗。また、7歳牝馬ラヴァーズポイント(父マイネルラヴ)につつかれたとはいえ、前半3ハロン33秒8は少しも厳しくないペースである。それが「33秒8-34秒4」=1分08秒2の8着では、目ざすスプリンターズSの直前だけに厳しいものがある。好位から抜け出したことはあり、スプリンターズSは脚質とか、展開うんぬんがポイントではない。最終的に1分07秒台前半で乗り切れるかどうかが問われるだけだが、ここ2戦差されて負けているだけに、スプリンターズSで「ハナを切る」戦法は取りにくくなってしまった。位置取りに注文がつく危険が生じた。

 ダンスディレクターは、骨折明けで7ヶ月ぶりとすれば、上がり32秒6で突っ込んで0秒2差なら上々。小柄な男馬が久し振りでカッカしたためかギリギリに映ったのは気になるが(マイナス8キロ)、無理使いしていないから馬体そのものは若い。反動がなく直前にビシッと追い切れるかだろう。

 内枠でスムーズではなかったメラグラーナ(父ファストネットロック)は、最後だけ突っ込んで1分07秒7(35秒3-32秒4)。あまりに不自然な前後半の数字が示すように、今回はほとんどレースをしていなかったといえる。体調は戻って、レース前は落ち着きも十分だった。これまで直線は外に出してから伸びていた馬なので、今回の2番枠は痛かった。今回の経験を糧にもうこなせると思えるが、できれば外枠を引きたい(それも良馬場で)という注文がつきそうである。しかし、今回の最後の1ハロンの伸びは強烈だった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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