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復活して天皇賞(秋)最有力候補の1頭に/毎日王冠

  • 2017年10月10日(火) 18時00分


◆ソウルスターリングにとってはあくまでステップの1戦

「京都大賞典」を素晴らしい爆発力で制した7歳牝馬スマートレイアー(父ディープインパクト)は、このあと当初の予定通り「エリザベス女王杯」を目ざすことになる。天皇賞(秋)の武豊騎手にはキタサンブラックがいる。

 そのキタサンブラックのほか、別ローテーションで天皇賞(秋)を目ざす馬には、「カデナ、サクラアンプルール、サトノクラウン、シャケトラ,ステファノス、ネオリアリズム、ヤマカツエース…」などがいるが、この毎日王冠に出走したグループは例年、一応は王道なので、最近の10年間に限定すると、毎年かならず天皇賞(秋)で「3着以内」に快走する馬を送っている。

 最近10年の天皇賞(秋)で3着以内に好走した馬のうち、毎日王冠が直前のステップだった馬は計13頭もいる。43パーセントを占めるからやはり主流である。うち11頭までが5着以内。6着以下から巻き返して好走したのは、15年、当時4歳の2着馬ステファノス(毎日王冠は0秒5差の7着)。16年にも天皇賞(秋)を3着しているステファノスは、昨年の毎日王冠は0秒8差の5着だった。

 もう1頭は、12年の勝ち馬エイシンフラッシュで、同馬は毎日王冠を0秒6差の9着から変わり身を見せている。

 したがって、1番人気に応えられず、0秒5差の8着に沈んだ3歳牝馬ソウルスターリング(父フランケル)は、結びつきの強さからいくと非常にきびしい立場に立たされたが、すでに出走権など不要のソウルスターリングにとって、毎日王冠はあくまでステップの1戦。天皇賞(秋)への道がとざされたわけではない。

 ただ、天皇賞(秋)2000mの勝ち馬に名を連ねる牝馬は、10年ブエナビスタ(宝塚記念2着→)、08年ウオッカ(毎日王冠2着→)、05年へヴンリーロマンス(札幌記念1着→)、97年エアグルーヴ(札幌記念1着→)の4頭。前のレースで完敗しながら勝った牝馬は1頭もいない。また、天皇賞(秋)を2着した牝馬もその前走はまず凡走していないが、14年の2着馬ジェンティルドンナは宝塚記念9着からの巻き返しだったという記録はある(2番人気に支持される力関係だったが…)。

 ソウルスターリングは休み明けで、かなり高ぶった状態。スタートもう一歩をルメール騎手が押してハナを切る作戦に出て、前半1000m通過「60秒0」の緩い流れでつかまってしまった。先手主張は切れ味の乏しさ(過去の最高上がり3ハロンが33秒8)をカバーする目的もあった。

 しかし、ここで先手を奪っては、天皇賞(秋)のためのテーマをなにもクリアできなかったことになった。モンズーンの牝馬にフランケル。欧州の歴史的マイラーとされるフランケルは14連勝のうち、独走だった8ハロン9戦の最高時計は8ハロン「1分37秒30」であり、日本のスピードレースとは根本的に異なっている。ディープ(サンデー)の味方のない欧州タイプはやっぱり苦しいのだろうか。

「バテたわけでもない」というトーンの振り返りもあった。毎日王冠8着で先着を許した7頭はすべてサンデーサイレンス(3頭)か、ディープインパクト(4頭)の血をもつ馬であり、1〜3着はディープインパクト直仔だった。

 勝ったリアルスティール(父ディープインパクト)は、再三の休養をはさむようにちょっと難しいタイプだが、1800〜2000mはこれで【4-3-1-1】。休み明けで体調がいま一歩だった中山記念以外は崩れていない。カリカリしながらもレースになれば素直に折り合える。復活して最有力候補の1頭になったとしていいだろう。

重賞レース回顧

16年ドバイターフ以来の勝利となったリアルスティール(撮影:下野雄規)


 2着したサトノアラジン(父ディープインパクト)は、1400mから3000mまでずっと試行錯誤の期間があったような成績だが、6歳の今春、安田記念を1分31秒5(58秒0-33秒5)で快勝。一瞬の脚ではなく、速い流れを自身も追走しながら伸びた。今回も後方一気ではなく、自分から動いて出て、それで上がりNO1タイの32秒6。58キロを背負ってリアルスティールを首まで追い詰めている。不振期も、評価落ちの期間もあったが、いま完成期を迎えた感がある。スランプ時の香港Cを別にすると、距離2000mも【2-0-1-0】であり、リアルスティールと互角か、それ以上の候補だろう。

 3着グレーターロンドン(父ディープインパクト)は、出走可能な賞金を目ざした今回、決して完調ではなかったはずであり、それを考えると素晴らしい内容だが、出走可能な賞金ラインには達しなかったのは残念(まだ流動的ではあるが…)。

 復活が期待されたマカヒキ(父ディープインパクト)は、見解が分かれそうだが、体調ではなくまだ精神的なスランプに陥っている危険が大きい。自信満々だった1番人気の凱旋門賞で、レースにならなかった(14着)チャンピオンのプライドはズタズタになった。立て直しの期間は2回とったが、調教は動き、馬体も悪くはなくても、まだ人びとを引き込むような覇気と、チャンピオンらしいオーラがなかった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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