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3代目にサンデーサイレンスを持つヴィクトリアダービー馬が誕生

  • 2017年11月08日(水) 12時00分


◆種牡馬入りでサンデーサイレンスの3×4を作り上げることが出来る

 メルボルン・スプリング・カーニヴァルの舞台がいよいよフレミントンに移った4日(土曜日)、メイン競走として行われたG1ヴィクトリアダービー(芝2500m)を制したのは、1番人気に推されていたエースハイ(牡3、父ハイチャパラル)だった。

 1855年に創設され、今年で163回目の開催を迎えた伝統の一戦がヴィクトリアダービーである。創設から100年以上にわたって距離マイル&ハーフ(12F=約2414m)で施行された後、メートル法への移行にともない1972年から2400m戦に。ところが、そうでなくても短かったスタートから最初のコーナーまでの距離が、これにより更に短くなり危険が増したとして、翌1973年から現行の2500m戦として施行されている。

 1番人気のエースハイのオッズが7倍も付いた一方、10倍以下に5頭がひしめき合うという、大混戦模様となったのが今年のヴィクトリアダービーだった。そしてレースも、道中の出入りが非常に激しい乱戦となった。

 先頭で第1コーナーに突入したのは、前走G1スプリングチャンピオンS(芝2000m)2着のタングルド(牡3、父スニッツェル、8倍の4番人気)だったが、まもなくコーナーワークを利してLRユーシーアイS(芝1800m)3着の実績があるジョニーヴィンコ(セン3、父サヴァビール、41倍の11番人気)がハナへ。バックストレッチに入ると再びタングルドが先頭に立ったが、3コーナーに入るとまたもジョニーヴィンコがハナへ。

 ところが次の瞬間、そこまで中団の10番手前後にいたLRジロングクラシック(芝2200m)勝ち馬ウェザーウィズユー(セン3、父テオフィロ、7.5倍の2番人気)が一気に仕掛けて先頭へ。そして、これにつられるようにして2番手に上がったのが、G1スプリングチャンピオンS3着馬サリー(セン3、父リライアブルマン)だった。

 そのサリーが、直線残り300mを切った辺りで先頭へ。激しい先行争いを尻目に、中団でじっくり脚を溜めていたのがエースハイで、3〜4コーナー中間点を過ぎてから徐々に進出した同馬が、5番手で向いた直線で弾けて残り150m付近で先頭に立つと、そこから2馬身抜け出す完勝となった。

 2歳10月にデビューしたものの、なかなか勝ち上がれず、2歳最終戦となったケンブラグランジのメイドン(芝1400m)で制し、デビュー7戦目にしてようやく初勝利をあげたのがエースハイだ。3歳初戦となったG3アップアンドカミングS(芝1300m)5着、続くG2スタンフォックスS(芝1500m)も5着と連敗し、頭打ちかと見られたが、続くG3グローミングS(芝1800m)を制して重賞初制覇。そして前走G1スプリングチャンピオンSを制し、G1初制覇を果たしている。

 まるで馬が変わったかのような一気の台頭だったが、1600m以下の競馬は忙しすぎたようで、つまりは距離が伸びて本領を発揮したということであろう。父が、英愛ダービー制覇に加えてBCターフ連覇を達成しているハイチャパラル(その父サドラーズウェルズ)であることを考えれば、さもありなんという成績である。ちなみに、G1スプリングチャンピオンSとG1ヴィクトリアダービーの連覇達成は、1989年のスタイリッシュセンチュリー、1995年のナッシングレイカデイン、2009年のモナココンセルに続く、史上4頭目のことだった。

 エースハイに関して、私たち日本の競馬ファンにも興味深いのが、同馬がサンデーサイレンスの血を内包していることだ。エースハイの3代母レディースディライトは、南アフリカ産馬である。祖国で3歳時から5歳時まで29戦し、2つの特別を含めて8勝。G2ヴォヤージャー・フィリーズ&メアズS(芝1600m)2着、G1スタイルマガジン・フィリーズ&メアズチャレンジ(芝1600m)3着などの成績を残した後、5歳春に引退した同馬は日本へ送られて、繁殖生活をスタートさせている。

 98年、南半球の繁殖シーズンに合わせて、日本の秋にサンデーサイレンスを交配されて受胎したレディースディライトが、豪州に輸送され、99年8月22日に豪州で生まれたのが、エースハイの祖母サンデーサーヴィスである。豪州で27戦して3勝。準重賞入着4回という成績を残したサンデーサーヴィスが、6歳春に繁殖入り。

 豪州のリーディングサイヤー、リダウツチョイスを交配されて06年9月23日に生んだ初仔が、エースハイの母カムサンデーだ。ちなみに、レディースディライトとリダウツチョイスの父デインヒルは、祖母がともにスプリングアデューという従兄妹同士にあたり、すなわちこの配合は、スプリングアデューの4×4を構成するという、味な配剤が施されている。

 カムサンデーは残念ながら未出走に終わり、4歳春に繁殖入りした同馬が、欧州からシャトルされてきたハイチャパラルを交配され、14年8月31日に産んだ4番仔が、今年のヴィクトリアダービー勝ち馬エースハイとなったわけである。ちなみにこの配合は、ヘイルトゥリーズンの5×5という緩やかなインブリードを構成している。

 かくして、配合表の3代目にサンデーサイレンスを持つヴィクトリアダービー馬が誕生したわけで、おそらくは種牡馬入りするであろうエースハイを、例えばフジキセキ、タヤスツヨシ、ジェニュインといった、豪州にシャトルされたサンデーサイレンス直仔の産駒として生まれた牝馬に交配すれば、サンデーサイレンスの3×4を豪州で作り上げることが出来るのだ。

 競馬というボーダーレスな世界の、遠大なる血統の旅路の果てを、夢想するのも競馬ファンのおおいなる楽しみである。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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