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軽種馬育成調教センター開講式、第36期生22名が入講

  • 2018年04月04日(水) 18時00分
生産地便り

BTC開講式記念撮影


男女半々の11名ずつ、この研修開始以来初の構成比に


 4月3日、浦河のBTC(軽種馬育成調教センター)にて、今年度の育成調教技術者養成研修第36期生の開講式が行われた。

 今年新たにこの研修所の門をくぐったのは全部で22名。男女半々の11名ずつという、この研修始まって以来初めてとなる構成比になった。

 開講式は午前11時半。BTC診療所二階の会議室に集合した36期生は、名簿順に並んで着席し、1人ずつ立ち上がって紹介を受けた。その後、来賓から今後の研修生活を送る上での心構えや初めてとなるここ浦河町での生活のことなど、多岐にわたるアドバイスや激励を受けた。どの顔も緊張した様子で、期待と不安とが交錯している様子が見て取れた。

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平賀場長の祝辞

 今期の22名は、北海道出身者が4名、それ以外の18名は本州と九州の出身者である。出身地別では東京都が7名と最も多く、その他、宮城県、神奈川県、岐阜県、大阪府、京都府、福岡県など全国各地に分布している。年齢は16歳から22歳まで。22名中15名が18歳である。

 開講式そのものは至って粛々と進行し、その後に記念撮影を行った後、会場を隣室に移しての昼食会となった。

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開講式後の昼食会風景

 8つのテーブルごとに研修生や保護者、来賓、BTC教官などが決められた席順通りに囲む立食形式で、座の中ほどになったところで研修生がひとりずつ前に出て抱負を一言ずつ述べる場が設けられている。

 順不同でマイクを握りながら、しっかりと自分の考えを人前で話すのも、ひとつの訓練ではある。まだどこか頼りなげな研修生もいれば、世界に向けて羽ばたく夢を語る研修生、臆せずしっかりと視線を前に向けて声を出す研修生や伏し目がちにボソボソと話す研修生など、見ているとそれぞれの個性が出ていて興味深い。

 おいおいまた別の機会に取り上げて行きたいと思うが、今期36期生の中の「変わり種」といえば、まず阿部航大君(17歳)ではなかろうか。宮城県出身の17歳で、兄はホッカイドウ競馬の若手成長株として注目度の高い阿部龍騎手だ。スラリとした長身の若者で、みんなと並ぶとひと際背の高さが際立つ。180あるというから、兄に続いて騎手になるのは体格的に無理だったのかも知れない。

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阿部龍騎手の弟、阿部航大君

 また、すでに育成牧場に就職が決まっていて、その勤務先からここでの研修を勧められ入講してきた生徒もいる。いきなり現場で働くよりも、まずはここで1年間みっちり訓練を積んで、ある程度乗れるようになってから改めて働き始めるという方法である。

 人材を育てる観点からもそれは有効なやり方であろう。どこでも育成現場は人材不足が深刻化しており、日本人騎乗者を確保できないために、今や外国人スタッフに頼っているのが現状だ。そうしたことから、日本人の未経験者をいかに育て戦力化して行くかが大きな課題だが、自前の施設とスタッフだけで経験の浅い若者を教育するのはかなり大変な作業であり、大きな負担にもなってくる。それをこうした研修で代行してもらうのは、悪くないやり方かも知れない。

 さて、若い世代の人口減少によるものか、あるいは競馬の仕事そのものに原因があるのか定かではないが、このところ生産地の生産や育成現場での就労を希望する若者が総じて減ってきているのは確かだ。「従業員を募集しても応募者が少ないどころか誰一人として問い合わせもない」などという嘆きの声も耳にする。

 そうした人手不足を補うべく、日高では急速に外国人、とりわけインド人の割合が増えており、今後もますますその傾向は続くだろうと思われる。

 しかし、できることなら日本人の有望な若者を欲しいと考えている牧場が大半で、その需要に応えるために、こうした1年間の研修制度が用意されている。来週金曜日には昨春入講した35期生が無事に修了式を迎える予定で、その時にまた触れるつもりでいるが、現状ではなかなか需要に供給が追いついていない。新ひだか町静内のJBBAとこのBTCの二ヶ所で現在実施されている研修制度で育つ人材は毎年せいぜい30名程度。しかし、需要はその何倍もあり、慢性的な人材不足が依然として続いている。

 この問題点はどこにあるのだろうか。なかなか容易に解決することは難しく、今や就業者の高齢化や後継者不足と合わせ、生産地での最大の悩みになりつつある。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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