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名門厩舎のディープインパクト産駒も出走、英千ギニー展望

  • 2018年04月25日(水) 12時00分


◆何とも掴みどころのないメンバー構成

 5月最初の週末にニューマーケットで行われるギニーズへ向けた前哨戦が、ほぼ終了した。このコラムでは今週と来週の2週にわたって、その展望をお届けすることとする。まず今週は、5月6日(日曜日)に行われる牝馬3冠初戦のG1千ギニー(芝8F)を展望したい。

 ひと言でいえば、混戦である。なおかつ、前売りの上位人気4頭が、揃って前哨戦を使わずに千ギニーが今季初戦となる上に、代表的な前哨戦の勝ち馬が現段階でこのレース未登録という、何とも掴みどころのないメンバー構成なのだ。

 混戦を作った要因の1つが、シーズンオフの間、前売りマーケットをリードしていたクレミー(牝3、父ガリレオ)に起きたアクシデントだった。

 16年から17年にかけて走り、英国と愛国の二千ギニーを含む4つのG1を制したチャーチルの全妹という良血馬クレミーの、2歳時の成績は5戦3勝。デビューから連敗を喫したにもかかわらず、3戦目となったのがG3グランジコンスタッドS(芝6F)で、ここを制して重賞で初勝利を挙げると、続くG2ダッチェスオヴケンブリッジS(芝6F)、秋のG1チーヴァリーパークS(芝6F)をいずれも白星で通過。3連勝で2歳シーズンを終えていた。

 そのクレミーが挫石を発症したのが、シーズンへ向けて調整のピッチが上がろうとしていた今年3月で、管理するA・オブライエン調教師は、「英千ギニーには間に合わないかもしれない」とコメントしていた。

 ブックメーカー各社は、同馬をまだ前売りリストに残しているが、4月30日に登録ステージが設けられており、その段階で出否が明らかになるはずだ。仮に出走してきたとしても、調整の遅れは否めず、ましてや距離延長への懸念もあるだけに、クレミーにとっては厳しい戦いになることが予想される。

 クレミーに代わって、ブックメーカー各社が前売り1番人気に浮上させたのが、同じA・オブライエン厩舎のハッピリー(牝3、父ガリレオ)だ。14年から15年にかけて走り、英国と愛国の二千ギニーを含む4つのG1を制したグレンイーグルスや、14年の愛千ギニー勝ち馬マーヴェラスの全妹という、クレミーに負けず劣らずの良血馬がハッピリーである。

 2歳時は7戦し、3つの重賞を含む4勝。重賞制覇の1つが、牡馬を撃破したG1ジャンルクラガルデル賞(芝1600m)だったことが、同馬の評価をおおいに高めている。器用さに欠けるところがあり、千ギニーよりはオークス向きと見られていたのだが、マイルも当然守備範囲にあり、有力候補であることは間違いない。

 タレントの豊富なオブライエン厩舎からは、日本のファンが熱視線を送るセプテンバー(牝3、父ディープインパクト)もスタンバイしている。3歳だった07年に、G1愛プリティポリーS(芝10F)、G1愛オークス(芝12F),G1ナッソーS(芝9F197y)、G1ヨークシャーオークス(芝12F)と、4つのG1を制した名牝ピーピングフォウンが、日本に渡ってディープインパクトを受胎し、愛国に帰国後に産んだのがセプテンバーである。

 2歳時は6戦し、重賞制覇はなかったものの、G1フィリーズマイル(芝8F)が鼻差2着、G1モイグレアスタッドS(芝7F)3着、G1BCジュヴェナイルフィリーズターフ(芝8F)3着と、強敵相手に好戦を続けた。ディープ産駒らしく、硬めの馬場を得意としており、千ギニー当時のニューマーケットの馬場がクイックな状態なら、ディープ産駒による英クラシック制覇への大きなチャンスがあると見ている。

 今季好調のゴドルフィンが送り出すのが、ワイルドイリュージョン(牝3、父ドゥバウィ)だ。LRモンロゼフィリーズS(芝8F)勝ち馬リアリースペシャルの半妹で、2歳時の成績3戦2勝。8月にヤーマスのメイドン(芝8F)でデビュー勝ち後、G3オマール賞(芝1600m)は3着に敗れたが、再度仏国に遠征して走ったG1マルセルブーサック賞(芝1600m)を制し、G1のタイトルを手中にしている。

 そして、冒頭でも記したように、ここまでご紹介した4頭はいずれも今季未出走で、千ギニーは”ぶっつけ本番”となる。また、現段階ではここまでの4頭が、前売りオッズ10倍以下に並んでいるのだが、実は、出走してくればもう1頭、ひと桁台のオッズになる可能性のある馬がいる。

 4月18日にニューマーケットで行われた、千ギニーへ向けたプレップレースのG3ネルグウィンS(芝7F)を制した、ソリロクイ(牝3、父ドゥバウィ)は、現段階では千ギニー未登録なのだが、前述したように、4月30日に登録ステージが設けられており、ここで3万ポンド(約450万円)を支払えば、出走可能になるのだ。

 ワイルドイリュージョン同様にゴドルフィンの自家生産馬であるソリロクイは、豪州で走りLRフェスティヴァルS(芝1500m)など2つの準重賞を制したディスフォニアの2番仔だ。昨年9月にアスコットのノーヴィス(芝7F213y)を制し、デビュー2戦目で初勝利を挙げると、この一戦を最後にシーズンオフに入っていた。

 7か月の休み明けだったネルグウィンSで、G3オーソーシャープS(芝7F)勝ち馬アルティンオーダ(牝3、父カイラキー)を2着に退けた競馬は内容的にも高く評価出来るもので、ファンは同馬の参戦を望んでいる。と言うことで、クレミー、ソリロクイの出否が判明する4月30日が、まずは大きな注目を集めそうだ。

 来週のこのコラムでは、5月5日にニューマーケットで行われる、牡馬3冠初戦のG1二千ギニーの展望をお届けする。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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