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【神戸新聞杯】秋のビッグレース向きは間違いないステラヴェローチェ

  • 2021年09月27日(月) 18時00分

シャフリヤールにとって雨の不良馬場は最大の死角


重賞レース回顧

秋のビッグレース向きに仕上がったステラヴェローチェ(左)、(C)netkeiba.com


 予測を上回る降雨に見舞われ「不良馬場」となった中、注目の日本ダービー馬シャフリヤール(父ディープインパクト)が完敗の4着に沈んでしまった。

 ディープインパクトの最大の長所である「切れ味」を受け継いだシャフリヤールにとって、雨の不良馬場は最大の死角ではあったが、この4着はまったく想定外の秋の始動であり、「必ずしも菊花賞に出走するとは限らない」と公言していただけに、今後のローテーションは一段と難しくなった。レース直後なので「状態を確認してから…」となったが、3000mの菊花賞出走は、前向きだったレース前よりかなりトーンダウンしている。

 母ドバイマジェスティ(USA)は、2010年の米牝馬チャンピオンスプリンターであり全12勝が5-8F。皐月賞馬の全兄アルアインなどJRAで出走した4頭の全きょうだいが記録する全14勝は「1600-2200m」であり、長距離2400mを勝ったのはシャフリヤールだけ。陣営全体に距離延長の3000mに不安があった。行きたがる気性が見え隠れしてきた死角も重なる。

 ただ、シャフリヤールの日本ダービーはレースレコードの2分22秒5であり、体つきもアルアインとは異なるシャープな体型。スローの3000mなら乗り切って不思議はない。

 それを最終的に見きわめたいのが今回の2200mの「レースの中身」だった。たしかに主敗因は不良馬場だろう。だが、菊花賞3000mは厳しいスタミナ勝負になる可能性もあり、再度渋馬場に見舞われる危険がないわけでもない。

 今回の敗戦は馬場コンディションによる面が大きいにせよ、栄光の日本ダービー馬が2戦、3戦と連敗しては、近年の種牡馬界の流れからみて、評価は大きく下がる。エフフォーリアは天皇賞(秋)の予定。シャフリヤールの動向しだいでは、菊花賞の展望は大きく変化することになる。

 勝ったステラヴェローチェ(父バゴ)は、順調なら菊花賞に出走する。日本ダービー3着の上がり33秒4は、シャフリヤール、2着エフフォーリアとまったく同じ33秒4だった。皐月賞3着時の上がりも勝ったエフフォーリアと同じ36秒7。シャフリヤールとは春の共同通信杯1800mでも対戦し、包まれて不本意な追い出しながらシャフリヤールとは0秒1差だけだった。もともと評価に大きな差があったわけではない。

 ステラヴェローチェには、1分39秒6も要した不良馬場のサウジアラビアRCを勝ったあと、一転、7秒も高速の1分32秒4で朝日杯FSを乗り切った不思議な能力がある。凱旋門賞に挑戦する同じバゴ産駒のクロノジェネシスは、同じように春の2冠「3、3」着のあと、秋華賞を勝って本物になっている。

 もう1頭のバゴ産駒のGI馬ビッグウィークは、神戸新聞杯をステップに菊花賞を勝っている。ステラヴェローチェの母方も決してスタミナ系とはいえないが、減っていた馬体が戻り、今回はプラス18キロ。秋のビッグレース向きは間違いない。ステラヴェローチェと同じ須貝尚介調教師=吉田隼人騎手のコンビの注目馬には、秋華賞のソダシもいる。

 ステラヴェローチェの評価が急上昇なら、半馬身差2着レッドジェネシス(父ディープインパクト)も各馬の嫌った馬場の内寄りに入りながら最後まで伸びていたから、その内容は光る。多くの陣営が不良馬場を敗因にしたが、大きく時計を要したのはレース全体が「63秒8-(12秒8)-61秒4」=2分18秒0。前半のスローが影響している。後半は「61秒4-48秒9-36秒5-12秒4」。決してドロドロの不良馬場という決着でもなかった。  

 ステラヴェローチェほど重馬場巧者ではないレッドジェネシスは、無類の勝負強さで健闘したといえる。日本ダービーこそ凡走したが、5月の京都新聞杯の勝ち馬であり、祖母は種牡馬キングオブキングスの全妹で、4代母は幅広い距離で活躍馬を送った種牡馬スティールハートの半妹。今回のレース内容なら菊花賞の伏兵と評価されて不思議はない。

 3着に粘った伏兵モンテディオ(父ジャスタウェイ)は、前半スローの流れに巧みに乗ったとはいえ、この相手に3着して優先出走権確保は価値がある。母ディオニージアは、近年の評価は低いが2200mのイタリアオークス馬。父はタフな馬場を苦にしない。今春3月に開業した四位厩舎の所属馬で、初のGI出走権が取れた。もちろん果敢に出走することになる。

 5着キングストンボーイ(父ドゥラメンテ)は勝負どころからシャフリヤールを射程に入れて進み、一度は交わせそうなシーンがあったが、こちらも最後は力尽きてしまった。

不良馬場を苦にしたのはたしかだが、3冠「1着、2着、8着」だったエポカドーロ(父オルフェーヴル)の半弟。この馬も距離延長歓迎とはいい切れない。

 シャフリヤールが出走してきても、もし回避となったらなおのこと、今年の菊花賞の勢力図は描きにくい。過去20年の菊花賞は、春のクラシック不出走馬11勝に対し、クラシック出走組9勝の記録がある。レース直後の評価は高くなかったセントライト記念組、あるいはその他のグループにも十分チャンスがあるだろう。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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