【マイルCS】爆発力がひときわ輝いた“チャンピオン牝馬”グランアレグリア
やがて日本で大きく繁栄するファミリーの起点になるだろう
5歳牝馬グランアレグリア(父ディープインパクト)が史上初のマイルGI5勝目を達成し、引退レースを鮮やかに飾ることに成功した。
チャンピオン牝馬の偉大な記録を称えるように、1番人気馬が勝ち、2番人気馬が2着したのは、今年のGI路線(ここまで平地18戦)で初の順当な結果だった。
ゆるい流れは予測されたが、前後半のバランス「47秒6-45秒0」=1分32秒6。前半1000m通過「59秒3」は、近年ではありえない史上2位のスローであり、これを中団より後方から差し切ったグランアレグリアの爆発力がひときわ輝くことになった。直線は馬群の外を回って上がり最速の3ハロン32秒7。
2020年の秋にはスプリンターズSに出走し、とても届かないような後方15番手から追い込んで圧勝している。ゆるいペースで後半の切れ味勝負になったのは、道中置かれて不安を思わせるシーンもあったが、グランアレグリアにはかえって望ましい流れだった。中団より後方にいながら、ルメール騎手は4コーナーまでほとんど動かなかった。
藤沢和雄調教師は、1993年シンコウラブリイ、1997-1998年に連勝のタイキシャトル、2001年ゼンノエルシド、そして2020-2021年のグランアレグリアの連勝で、マイルチャンピオンS【6-3-1-10】となった。GIでは不滅に近い記録と思える。
輸入牝馬の母タピッツフライ(父Tapit、2007年生まれ)は残念ながら2018年に早世し、産駒数はごく限られる。牝馬はグランアレグリアだけ。この牝馬はやがて大きく繁栄するファミリーの日本の起点になるだろう。
2着シュネルマイスター(父Kingman)は内枠だったため、コースロスは避けられたが、ずっと芝状態の良くないインを通ることになってしまった。直線はちょっと強引に少し外に出して上がり2位の32秒9。グランアレグリアに完敗は事実だが、まだ【4-2-1-0】の3歳馬。関西遠征も、阪神コースも初めてだった。
体つきは一段とパワフルに、それでいて動きはシャープになっている。父Kingmanの良さを受け継ぐマイラーとしてさらに成長すること必至。レースの中身の評価は、勝ち馬とほとんど互角だったとしたい。
3番人気で、まったく同じドイツ牝系のシュネルマイスターの近親馬(祖母が姉妹の間柄)になるサリオス(父ハーツクライ)は、このペースで望外の好位2-3番手を追走。スローすぎて本来のリズムが乱れたかもしれないが、最後の追い比べで逃げ粘って5着の3歳馬ホウオウアマゾン(父キングカメハメハ)に差し返されたのはいただけない。
2歳時に540キロの馬体重でレコード勝ち(東京1600mを1分32秒7)した巨漢馬だから、今回のプラス10キロは太めではない。ちょっと気負いすぎの印象はあったが、今回の0秒5差は失速の凡走であり、ぜひとも立ち直って欲しい。
3着ダノンザキッド(父ジャスタウェイ)は、方向転換して2戦目のマイル戦とすれば期待以上の快走だった。見栄えのする迫力あふれる馬体でも、このメンバーに入るとまだ未完成の若さを感じさせた。それでこの内容だから、「来年が楽しみになりました(川田騎手)」のコメント以上に大きく変身してくれるかもしれない。
まだまだ衰えなど見せなかった6歳インディチャンプ(父ステイゴールド)は、このあと予定通りの香港遠征か。2019年の香港マイルは7着だったが、マルシュロレーヌの快走で、ステイゴールドの血を持つ馬の海外での強さは再確認されている。
4番人気で13着に崩れたグレナディアガーズ(父Frankel)は、ペースを考えると理想の好位追走ではあったが、キャリアの浅さが出て前半から力んで行きたがっていた。この相手で自身のリズムを欠いてしまっては、さすがに仕方がない。