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【中山金杯】タフな成長力を誇るファミリー

  • 2022年01月06日(木) 18時00分

こなせる距離の幅を広げたロードカナロア産駒


重賞レース回顧

見事に距離をこなして初重賞制覇を飾ったレッドガラン(C)netkeiba.com、撮影:下野雄規


 中京の「京都金杯」は関東馬の「1着、2着」。一方、「中山金杯」は関西馬の「1着、2着」。今年2022年の重賞はきわめて珍しい形の出発になった。

 京都金杯を制した松山弘平騎手は、2020年に「京都金杯(京都)」を制し、2021年は「中山金杯(中山)」を勝ち、2022年は「京都金杯(中京)」を勝って史上初の金杯3連勝。それぞれ異なる競馬場なので、この記録が破られる可能性はまずない。

 また、「中山金杯」をレッドガラン(父ロードカナロア)で制した安田隆行調教師は、2021年「京都金杯」のケイデンスコールにつづき、東西の金杯2連勝だった。

 7歳レッドガランは、同日の京都金杯にもダブル登録していたが、賞金順位が低く除外が確定的だったため、2000m通算【0-0-1-2】の中山金杯に回り、見事に距離をこなしての初重賞制覇だった。

 レッドガランは7歳馬ではあるが、つい1週間前までは6歳馬であり、通算成績はまだ21戦【6-1-5-9】。こなせる距離の幅を広げたロードカナロア産駒で、母の父は直仔の世代より大きく評価を上げているシンボリクリスエス(エフフォーリア、デアリングタクトの父方祖父。レイデオロ、オジュウチョウサンなどの母の父)。距離を克服し重賞路線での選択肢は広がった。これからさらに活躍が期待できる。3代母はダンシングキイ。タフな成長力を誇るファミリーでもある。

 2000m2分00秒1のレースの中身は、前後半の1000m「62秒0-58秒1」のスローバランス。前半から好位で進めたレッドガランは上がり35秒2で2馬身半も抜け出す完勝だったが、2着以下はハンデ戦らしい大接戦。2着スカーフェイス(父ハーツクライ)から「クビ、ハナ、ハナ…」の小差がつづき、8着アールスター(父ロードカナロア)まで7頭が「0秒1」差に並ぶ激戦だった。

 中団より後方の位置取りから、直線も一番外に回って2着に突っ込んだ6歳スカーフェイスの上がりは35秒5。外々を回ったので目立たないが、接戦の2着争いで伸びた内容は数字以上に価値がある。4歳後半まで1勝クラスにとどまっていたが、そこから着実に階段を上るように成長し、前回の格上がり初戦だったチャレンジCは5着とはいえ上がり最速タイの33秒9。オープンで通用する手応えをつかむと、たちまち結果を出した。

 母スプリングサンダー(その父クロフネ)は、天皇賞(春)を制したあと種牡馬となっても大成功したスズカマンボ(父サンデーサイレンス)の半妹。レッドガランに負けず劣らずのタフな一族だけに、さらにパワーアップが望める。

 1番人気のヒートオンビート(父キングカメハメハ)は多頭数の内枠が痛かった。終始中位の馬群で揉まれたうえ、最後の直線は外に回ったが、そこにもカベがあって思うような進路が取れなかった。最後に突っ込んで微差の3着。脚長のストライドを生かしたい馬だけに、狭いスペースを探す形になって切れ味全開とはいかなかった。多頭数の中山コースは合っていなかった。

 2番人気のトーセンスーリヤ(父ローエングリン)は、好位3−4番手で道中はスムーズ。

 レッドガランと並んで伸びかけたが、スパッと切れるタイプではないため、スローからの直線勝負になって鋭さ負け。ハンデ57.5キロが響いてしまった。

 途中までマーメイドS(前半1000m通過60秒8)よりもっと楽なペースに持ち込めたシャムロックヒル(父キズナ)は、スローを察した後続に早めに来られてしまった。鈍ることなく二の脚を使ってみせたが、最後、横に並んでの追い比べがきびしかった。

 3番人気のヴィクティファルス(父ハーツクライ)は、今年の大活躍が期待されるただ1頭の4歳馬として注目された。気配も悪くなく、道中は前のレッドガラン、トーセンスーリヤを射程に入れる絶好の位置。直線に向いても周囲にスペースがあり、絶妙のコース取りとなったが、エンジン全開とはならなかった。

 これで3歳春のスプリングSを差し切って【2-1-0-0】のあと、【0-0-0-5】。期待の新種牡馬シルバーステート(母の半弟)の一族だが、スランプであると同時に、母の父Galileoガリレオの死角が出たのか、全体時計が速いレースは合わない心配が大きくなった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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