絶妙のタイミング・ペースで他馬を寄せ付けなかった走り
重賞初制覇したベレヌス(C)netkeiba.com
絶好のスタートを決めた5歳牡馬ベレヌス(父タートルボウル)の見事な逃げ切りが決まった。これで西村淳也騎手とのコンビは【4-2-1-6】。4勝、2着2回はすべて先手を奪っての逃げ戦法。
これまで流れが速くなりがちな芝1800mの経験が1戦しかなかったため、伏兵の評価(6番人気)にとどまったが、機先を制して主導権を奪うと、あとは特徴を知り尽くしたコンビらしい絶妙のペース。他に逃げ馬が少なかったこともあるが、レースの中身は「前半800m48秒1-(11秒8)-後半800m46秒0」=1分45秒9。
1000m通過は59秒9のスロー。ゴールから逆算した後半1000mは57秒8。相手の出方に恵まれたのは事実だが、残り800m地点から自身でピッチを上げて「11秒4-11秒3-11秒4→」。勝負どころからの3ハロンを34秒1。後続の追撃を許さなかった加速が最大の勝因だろう。後半は緩い下りを含むスパイラルカーブの小回りコースゆえ、たとえスローでも今回の2着馬カテドラル(父ハーツクライ)のように一気に突っ込んでくる差し=追い込み馬がいる。
「3コーナーあたりからのスピードの上げ方が、後続に脚を使わせる絶妙のタイミングだった(杉山晴紀調教師)」。絶賛のベレヌスの初重賞制覇だった。
種牡馬タートルボウル(その父Dyhim Diamondディームダイヤモンド)は日本において5年間の供用だけで15歳で急死し、日本での重賞勝ち馬はベレヌスを含めて4頭。決して成功した種牡馬とはいえないが、ベレヌスの母の父に登場するデュランダル(父サンデーサイレンス)も期待されながら14歳で早世してしまった種牡馬。5歳ベレヌスには、タートルボウル、デュランダル2頭の名前がこれからも再三紙面に登場するような活躍をみせてほしい。
2着に突っ込んだ6歳カテドラルは、昨年の中京記念の0秒1差2着馬。直前まで鞍上が決まらず、ただ1頭だけ輸送を前に木曜追い切りになるなどで、10番人気にとどまったが、今年も昨年とそっくり同じように直線一番外から突っ込んできた。
昨年も、今年と同じように前半1000m通過59秒9の速くない流れだった。ちょっと器用さを欠くマイラータイプだが、中山のマイル重賞で2着、1着があり、小倉の中京記念1800mを連続2着。すべて人気薄の伏兵評価だった。爆発力をどこで生かすかがきわめて難しい馬。急に決まったテン乗りで、見事に2着した団野大成騎手は復帰後まだ勝っていないが、フルに末脚を生かしている。これでカテドラルの連対9回は「4、2、7、4、12、4、6、7、10」番人気となった。
1番人気のファルコニア(父ディープインパクト)は、ゴール寸前の詰めを欠き惜しい3着。めったに崩れず通算18戦5勝のバリバリのオープン馬。ただし、重賞レースは【0-0-4-3】。カテドラルと逆の意味で、非常に評価の難しいタイプ。
2番人気で4着のミスニューヨーク(父キングズベスト)は、コース巧者で、かつ1800mもベストの距離。この組み合わせでハンデ54キロなら好勝負と思えたが、この牝馬、条件戦では牡馬相手に2回の連対記録はあるが、オープンに昇格後は牡馬相手のレースは少なく、今回は内枠のため終始馬群の中。立ち上がりかけたゴール寸前が物語るように、残念ながら牡馬相手にちょっと揉まれすぎた印象がある。
昨年の勝ち馬アンドラステの半弟ヴァリアメンテ(父ドゥラメンテ)は、初コースのためか、前半流れに乗れなかった。カデナ(父ディープインパクト)とともに上がり最速タイの33秒9で突っ込んだが、今回はやや不完全燃焼だったろう。
大駆けを期待したモズナガレボシ(父グランプリボス)は、置かれずに前半いつもより早めに動こうとしたが、全体のスピード不足はカバーできなかった。
3番人気のカイザーミノル(父ロードカナロア)は、1週前にビシッと追って直前はセーブする苦心の仕上げ。馬体重減を阻止することには成功したが、本調子にはもう一歩と映った。