長い歴史の中でも印象深いシーンがいくつもある重賞
今や真夏の頂上決戦と言われる札幌記念は、札幌では最も古い重賞だが、その変遷をたどると興味深いものがある。創設が1965年で4年間が砂コース、続く21年間がダート、芝になったのが1990年の第26回からで、斤量もハンデキャップから別定、そして2006年の第42回から定量戦になり、今では実績馬が参戦しやすくなっている。
その長い歴史の中で印象深いいくつかのシーンがあるが、ダートでハンデ戦時代の1976年、その年の春の皐月賞馬でダービー2着だったトウショウボーイと、これをダービーで破ったクライムカイザーが58キロを背負って戦ったことがあった。
札幌の旧スタンドは早くから満員で立錐の余地もない情況、レースは、この2頭の一年先輩のグレートセイカンがスタートの悪かったトウショウボーイを尻目に、まんまと逃げ切ったのだった。
それでも2番人気と1番人気と入り、ダービー馬は2頭から大きく遅れて3番人気で3着と、それほどの波乱でもなかったが、10頭立てだったのにこの3頭の存在はあまりにも大きかった。そして、その時の歓声も。
今では夏のスーパーGII戦と言われ、毎年のGI馬を含め豪華な顔ぶれとなっているが、このきっかけとなったのが1997年GIIに昇格した第33回で、前年のオークス馬エアグルーヴが勝ち、その秋の天皇賞で17年ぶりに牝馬の優勝を達成し、さらに翌年も札幌記念を連覇。
2年にわたりジャパンC、有馬記念で牡馬に伍して大活躍をしたことで、ここをステップに秋をめざす方向性が生まれたと言ってもいい。当時エアグルーヴの伊藤雄二調教師が、こちらの女傑という言い方に、性別に関係なく強いのですから、そうではなく最強馬でしょうと述べていたことが思い起こされる。
パートナーの武豊騎手も、現役最強馬と言っていた。
今年は、白毛馬が大きな話題を集め、同一重賞で初めて2頭の白毛が対戦するという記憶に残す一戦となったが、牝馬のソダシにはエアグルーヴ以来となる連覇という記録がかかっている。
函館でデビューして札幌2歳S、阪神ジュベナイルF、桜花賞など5連勝で名を上げたが、昨年の札幌記念で並みいる強豪を破り、洋芝では3戦無敗。その後敗戦が続いたが、今年はヴィクトリアMを正攻法の競馬で強い勝ち方をしてここへのぞんでいる。
これのいとこにあたる同じ白毛のハヤヤッコは、前走函館記念を勝ち、芝とダート二刀流の重賞勝ちの記録をつくって対決にのぞんできた。白毛は1982年にハクタイユーがデビューして以来29頭が登録してきたが、ここまできたかという思いがする。
見所は多く、ジャックドール、パンサラッサの主導権争いにアンティシペイトがどうからむかとか、強い牝馬勢からオークスでソダシを下したユーバーレーベン、GIIを3勝し牡馬相手にも勝っているウインマリリンなど、どこに注目するかだ。
「記憶され 2頭の白毛 芝走る」