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ひだかトレーニングセール、リハーサル

  • 2006年05月02日(火) 23時50分
 ようやく桜前線は、青森まで到達したという。もうじき津軽海峡を渡り、いよいよ北海道も桜開花が近づいてきた。

 とはいうものの、相変らず例年と比較すると気温がなかなか上昇しない。そんな中、5月2日、大型連休の中休みの火曜日、浦河にて「ひだかトレーニングセール」(主催・ひだか東農協)のビデオ収録を兼ねたリハーサルが、JRA日高育成牧場の1600mダートコースにて実施された。この日はどんよりとした曇天で午前9時開始時の気温は摂氏6度。前日、首都圏などでは最高気温が30度を超えたとテレビなどで報じられていたが、とても同じ国とは思えないほどの落差のある気候なのだ。



 この日、リハーサルを行ったのは、来る5月23日にここで開催される「ひだかトレーニングセール」に上場予定馬のうちの104頭。全体を5つのグループに分け、2頭併走もしくは単走で、直線1ハロンのみタイムを計時する。まだ本番まではちょうど3週間あるが、ビデオ撮りも兼ねているため、編集やダビング、テープ(今はDVDか)の発送などの所要日数を見込むと、このくらいの期間が必要となるのだろう。



 馬場入りはグループごとにまとまって入る。20数頭がそれぞれキャンターで向こう正面まで進み、リハーサルの順番に従って縦長に並ぶ。番号と馬名がアナウンスされるとスタートし、3コーナーから4コーナーにかけて徐々に加速。ゴール前200mはかなり“本気度”の高い追い切りとなる。

 1Fのタイムは概ね11秒台から12秒台。この日、最高タイムを計時したのは、せり名簿32番の「クリスティキャットの04」(父ボストンハーバー、牝、飼養管理者・山口ステーブル)と120番「ロングゴーンブルースの16」(父チーフベアハート、牡、飼養管理者・門別牧場)が出した10秒7。それぞれ併走ではなく、“単走”でマークした。落馬や故障もなく、約3時間で無事に全メニューが終了し、後は23日の本番へ向け、最後の調整を行う。

 ところで、4月24日に行われたJRAブリーズアップセールのことがあちこちで大きな話題になっている。とりわけ、これからトレーニングセールへ管理馬や生産馬を上場させる予定の育成業者や生産牧場などにとっては、「気が気ではない」といった心理である。

 ブリーズアップセール大成功の要因はいくつかあるが、情報開示(内視鏡やレントゲン写真)と100%やらせなしの「ガチンコせり市場」だったこと(換言すればそれが市場の信頼性ということになる)。中山競馬場という利便性。たぶん他にも様々な要素が挙げられよう(女性補助鑑定人の存在を指摘する関係者もいる)。それらが全て合体し、あの驚異的な売却率と落札金額になったわけである。

 翻って、北海道におけるトレーニングセール(に限らないのだが)に欠けているものは何かを検証し、より高いレベルのセールに改善して行く必要がある。まだセールが終わったわけではないが、どう考えても、ブリーズアップセール以上の成績を挙げるのは事実上不可能(69頭中68頭売却、平均1500万円強)で、加えて、23日の前日、22日には、HBA日高軽種馬農協主催の「トレーニングセール」が札幌競馬場にて開催される。この市場への4月25日現在の上場予定頭数は計187頭(牡99頭、牝88頭)。札幌から浦河までの所要時間(3時間)を考えると、前日せりに参加した購買者が翌朝に浦河まで移動するのはかなり酷な話である。

 トレーニングセールの最大の魅力は、即戦力の素材を販売するということ。必要頭数を先に確保した購買者から順に抜けて行くのは避けられず、そのために開催日程は、後になればなるほど不利になる、とも言われている。だからと言って、気象条件を考えると、トレーニングセールを3月や4月に北海道で開催するのも無理がある。もちろん、札幌と浦河でのセールの結果次第だが、いずれにしても開催時期や場所、情報開示、欠場馬対策など、多くの問題点が指摘されることになるのは間違いなさそうだ。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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