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浦河ポニー乗馬少年団、札幌遠征

  • 2006年05月09日(火) 23時51分
 道営ホッカイドウ競馬は、ゴールデンウィーク真っ只中の5月3日より舞台を札幌に移しての開催である。第1回札幌競馬の3日目「こどもの日」、浦河ポニー乗馬少年団が道営競馬を盛り上げようと、10頭のポニーとともに札幌競馬場へ遠征した。

 浦河出発は、午前4時半。昨年夏の旭川開催(ナイター)に続いて2度目の遠征となる今回は、旭川に比べるとかなり近い距離だが、それでも3時間はかかる。ポニー10頭は1台の馬運車にまとめて積み込み、レースに出場する団員とその家族などはバスと乗用車に分乗しての大移動となった。

 今回のポニー競馬は、道営ホッカイドウ競馬を運営する北海道競馬事務所からの正式依頼があってのこと。昨年はナイター開催とあって、第1レースの始まる前にポニー競馬が行われたため、ほとんど観客が入場していないうちに出走させられた。やはり、どうせレース出るのならば、カクテル光線の下で走りたかったという不満の声が上がったのも無理のない話である。それが叶わないのならば、せめてもう少し観客のいる時間帯にレースができないものか…。

 という声が届いたのかどうかは分からないが、今回は正午過ぎの第4レース終了後にポニー競馬が実施されることになった。

パドックに放されるポニー達


 午前8時前に札幌競馬場へ到着。約30分程度待機した後にポニー10頭を馬運車から降ろし、競馬場内に入った。パドック横の門から入場した我々はそのままスタンド裏手を4コーナー方向に進み、内馬場へ通じる地下道を通って指定された待機場所へと向かった。この日の札幌はどんよりと曇り、風が冷たい。気温はおそらく7〜8度程度しかなく、じっとしているとゾクゾクしてくるほどの寒さである。

 さっそくポニーを“放牧”することになったが、用意されたパドックは計3ヶ所しかない。そのうち、2ヶ所は方形の堅牢な作りだが、せいぜい1頭か2頭程度のスペース。ここには、牡(去勢していない)の「ルフィー」と、もう1ヶ所に同じ牧場から来た仲良しの「ライフ」と「ハーチャン」を入れた。その結果、残る7頭の処遇が難しくなった。パドックは残り1ヶ所。しかも、高さ1メートル程度の金属製の埒でできた直径約7〜8メートルほどの円形パドックである。通常、ここはどこからか連れてきたポニーなどを1頭か2頭放牧して、家族連れの客に触れ合いの場を提供するための施設なのだろう。作りも決して丈夫とは言いがたく、やや不安が残った。しかし、ここに残る7頭を入れなければならない。明らかに“過剰放牧”という他なく、案の定、見張りをする大人たちは大変な苦労を味わった。

 午前10時に開門。内馬場の方から見ていると、スタンド内に客がどんどん入場してくる様子がよく分かる。天候は相変わらず曇りで、気温もさほど変らない。そのせいか、ガラス張りになっている2階部分にだけ観客が集中しており、外にいる人は少ない。やはり寒いのだろう。前日(4日)まではとても暖かかったそうだが、この日に限っては、戸外で過ごすにはいささか寒すぎる。冬物のコートが欲しいくらいの気温なのだ。

 11時半、馬装開始。出場するジョッキーたちも勝負服に着替え、馬装を手伝う。そして、次々に乗り馬に騎乗し、内馬場内の遊歩道を使って準備運動を始めた。

 ポニー10頭に10人の騎手、そしてスターターには団員の清野千秋さん(小学校6年)。第4レースが終わり、いよいよポニーの出番である。札幌競馬場のダートコースを使い、距離500mのポニー競馬のスタートが近づいた。場内のオーロラビジョンに、出走馬と騎手が1頭ずつ紹介され、それぞれのスタート位置まで移動する。500mの位置からスタートするのは4頭、ハンデ200m(つまりそれだけゴールに近い)から4頭、そして250mから2頭と、体格や能力に応じて3か所に分かれての発走である。

スターターを務めた清野さん


 スターターの清野さんがビジョンに映し出され、旗を振る。団員の父母たちはゴール前と第1コーナーあたりに待機し、落馬や放馬などのアクシデントに備える。旗の合図とともにポニー競馬がスタートした。

直線の攻防


 レースは200mの位置から発走したプリティとハクの争いとなり、250mよりスタートしたヨシコとハーチャンも善戦した。最後方の4頭はややハンデがありすぎて届かず。結局1着プリティ、2着ハク、3着ハムタロウの順でゴールインとなった。

インタビューに応える藤川君


 プリティに騎乗していたのは藤川賢斗君(中3)。彼は父親が騎手だったこともあり、プロ騎手を目指しているという。レース後はスタンド前で表彰式が行われ、大勢の観客の前で藤川君がインタビューを受けた。スタート以外は何から何まで本物の競馬と同じで、出場した子供たちにとっては良い経験となったことだろう。

表彰式


 この日の札幌競馬場は入場人員が5727人。馬券売り上げは1億6120万円。前日4日が7612人で1億7365万円、前々日が7447人で1億6064万円だったので、入場人員の少なさはやはり天候のせいか。

 果たして道営ホッカイドウ競馬にどの程度貢献できたかは分からないが、札幌までの出張費用は、すべて地元浦河の“負担”である。馬運車は無料でK産業という会社から1台提供していただき、バス代は寄付金で賄った。北海道競馬事務所に予算がないため、これもやむを得ないことではあるのだが、いささか複雑な心境でもある。

 ともあれ、人馬ともに無事レースを終えることができたのは何より幸いだった。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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