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驚異的な勢いだったセレクトセール1歳セッション

  • 2023年07月19日(水) 18時00分

4頭続けての億超え取引による幕開け


生産地便り

今年もセレクトセールが開催(撮影:田中哲実)


 今年も7月10日、11日の2日間の日程で「セレクトセール」が開催された。5月に新型コロナが5類に移行したのを機に、人々が国内外で大きく動き始めており、観光地はどこも大変な賑わいになっているらしい。この夏に旅行を計画している人々の数もコロナ前の水準に戻っているとも伝えられる。そんな中で行われた今年のセレクトセールは、マスク姿もガクンと減り、2019年以来4年ぶりに素顔を拝見する知人にも数多く遭遇して、馬社会もかつての日常を取り戻しつつあることを改めて実感させられた。

 初日、1歳セッション。セリ開始は午前10時だが、私が現地入りした午前8時には、すでに待機馬房の前に多くの1歳馬が引き出され、個別に展示が行われていた。セリを前に熱心に購買関係者があらかじめピックアップした上場馬を順にチェックして回るのだ。数人がチームを組み、常歩で歩様を確認し、肩、腰、脚部を触って問題ないかどうか確かめている場面をここかしこで見かけた。前日9日も展示日に充てられていたはずだが、購買申込者は非常に多く、注目馬の場合はその都度、見せて下さいという依頼に応えて数えきれないほどの回数を馬房の外に引き出しては展示していた。

 天候は曇り。やや湿度が高いものの、時折風が通り抜ける。取材者用に設置されたデスクの一席にPCをセットし、電源を入れる。ケースからカメラを取り出す。オレンジ色のビブスを頭から被り、一息つくと、いつしか時刻は9時半を回っていた。

 10時が近づく。会場内にオレンジ色の取材者が増えて来た。やがて合田直弘氏の司会で今年度のセレクトセール開始が告げられる。セリに先立ち、過去1年間におけるGI(JpnI含む)を制した当セール出身馬の馬主がステージ上に並び、記念メダル授与式が行われた。

 その数、8頭である。改めて、このセールの取引馬の中からこうして多くのGI馬が誕生している事実を思い知らされる。

 10時。最初の上場馬が入場。1番ヤングスターの2022。牡鹿毛。父キズナ。母は豪州産のG1馬だ。本馬が初仔である。すると、ほどなく会場のあちこちから活発な声が飛び交い、あっという間に価格は1億円を超え、やがて2億に迫る。1週間前に見て来た八戸市場全部の売り上げを最初の1頭だけで見る見る間に超えてしまった。結局2億1000万円で、藤田晋氏が落札。これに消費税が加算されるので厳密には2億3100万円が正式な取引価格となる。このところセレクトセールでは、開始早々、いきなりの億超えが定着しつつあるが、果たして今年もそうであった。
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▲2億1000万円で落札されたヤングスターの2022(提供:日本競走馬協会)



 続いて2番。ポロンナルワの2022。牡栗毛。父アドマイヤマーズ。本馬の兄姉にディーパワンサ(3勝、中京2歳ステークス)、ガルヴィハーラ(2勝、全日本2歳優駿3着)、アヌラーダプラ(5勝、UHB賞)等がおり、母の半妹にシンハライト(オークス)もいる。この馬も億の大台に乗った。落札価格1億4500万円。税込みの取引価格は1億5950万円。TNレーシングが落札。販売者はいずれも(有)ノーザンレーシング。
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▲1億4500万円で落札されたポロンナルワの2022(提供:日本競走馬協会)



 こうして続け様に億超えのミリオンホースが誕生し、4番インクルードベティの2022が登場。牡黒鹿毛。父キタサンブラック。母は北米5勝のG1馬。ここで価格は一気に3億円まで上昇し、3億1000万円(取引価格3億4100万円)での決着となった。(株)ダノックスが落札。販売者は(有)ノーザンレーシング。ここまで4頭続けての億超え。こうして今年のセレクトセールが幕開けした。
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▲3億1000万円で落札されたインクルードベティの2022(提供:日本競走馬協会)



 上場馬が次々に落札されていく。出て来る馬が、全て残らず売れている。「この調子なら全部売れちゃうんじゃないか」と誰かが後ろで呟いているのが聞こえる。それもあり得るな、と思わされるほど、1頭残らず落札されているのである。

 16番コスモポリタンクイーンの2022が3億円(取引価格3億3000万円)、20番パレスルーマーの2022が3億1000万円(取引価格3億4100万円)。わずか20番までのうちに、実に7頭が億を突破した。

 その後、中盤から後半にかけて、やや価格が落ち着いてきたとは言うものの、最後の最後まで、勢いは衰えることなく、大半の上場馬が落札されていった。

 終わってみれば、222頭の上場馬のなか、216頭が落札されて、売却率は97.30%。税込みの取引総額は147億150万円。平均価格は6806万2500円。昨年、同セールの1歳セッションが初めて140億円を超え、売却率も95.3%と驚異的な数字を残した時には、正直なところ、これがおそらく上限であろうと考えた。しかし、1年後の今年、まさかその上を行く数字を叩き出すことになろうとは・・・。

 5年前の2018年のセレクトセール1歳セッションで、同セールは史上初の売却率90%、売り上げ100億円が実現した。それからわずか5年で、売却率は97%まで到達し、総額もざっと1.5倍にまで膨らんだ。

 セレクトセールはいったいどこまで成長を続けるのだろうか? と驚きながら、すっかり暗くなった道を駐車場まで歩いて戻った。翌日は当歳セッション。新種牡馬コントレイルの産駒が21頭も上場予定という。興奮冷めやらぬまま、家路を急いだ。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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