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逝去した服部利之調教師への感謝と思い出「先生がいなかったら、ジョッキーを続けていられたかどうか…」

  • 2023年08月01日(火) 18時01分
太論

▲藤井勘一郎騎手とのウォーキングと服部調教師との思い出を語る(撮影:桂伸也)


7月28日、金曜日。服部利之調教師が死去されました。2018年の夏に小牧騎手がケガをした際は、ご夫婦で愛知の入院先までお見舞いに駆けつけ、復帰後は、なかなか騎乗馬が集まらない小牧騎手に管理馬のほとんどの手綱を任せてくださった恩人です。つい最近も、ご自宅で療養されていた先生に会いに行ったという小牧騎手。服部先生との思い出と感謝の思いを語ってくれました。

(取材・文=不破由妃子)

ほぼすべての管理馬を任せてくれた服部調教師


──今回は小牧さんからお写真をご提供いただいて。藤井(勘一郎騎手)さんですよね。

太論

▲藤井勘一郎騎手とツーショット(提供:小牧太騎手)


小牧 うん。土曜日にね、「以前一緒に走ったところを歩きませんか?」って誘われて。近江大橋を渡ったところ、大津プリンスの近くですわ。まだ暑い3時半くらいから、ふたりで1時間半くらい歩いたかな。藤井くんは車椅子やから、坂道は僕が必死になって押して(笑)。

──素敵なお散歩ですね。藤井さん、お元気でしたか?

小牧 彼は元気やで。いろいろと前向きに一生懸命やっているみたいよ。言わんだけかもしれんけど、落ち込むことは全然ないって言ってた。今回誘ってくれたのは、僕の話を聞きたかったみたい。ほら、引退をほのめかしたりしているから(笑)。どうしたんやろう…と思ったんやろうね。

太論

▲2年前も藤井騎手と一緒に琵琶湖沿いを走っていた(提供:小牧太騎手)


──そりゃ気になりますよね。

小牧 まぁいろいろ喋ったよ。よう喋るからな、彼も(笑)。ふたりでずっと語り合いながら、いい汗をかきました。で、いったん家に帰ってから、服部(利之)先生のお宅にお邪魔しました。

──まだ65歳。本当に残念です。

小牧 日曜日がお通夜だったんやけど、家族葬ということで、僕らは行かれへんなと思って。だから、土曜日に「伺っていいですか?」と奥さんにメールをしたら、「いいですよ」と返事をもらってね。ひとりでご自宅にお邪魔して、先生のお顔を見てきました。つい最近まで、そこのべッドに座ってたのになぁと思ってね…。寝ているみたいなのに、もう二度と言葉を交わすことができないなんて、なんか不思議な気持ちだった。

──そうでしたか。ずいぶん前から闘病されているというのは聞いていたのですが。

小牧 うん。もう7年やったかな。つい最近、退院してきたんやけど、そのときもご自宅に会いに行ったんですわ。もうベッドから出られない状態やったけど、「ようここまで頑張らせてくれた。生かしてもらった」と言って、ご本人はどこか納得しているような感じやった。闘病生活が長かったからね、しんどかったんちゃうかな。先生とは、いい思い出がたくさんある。あちこち連れて行ってもらったし。

──プライベートでも親交があったんですね。

小牧 夏は京都の貴船に家族ぐるみで行ったり、大津プリンスにコンサートを観に行ったこともあるなぁ。

──どなたのコンサート?

小牧 友近が演歌歌手に扮して…。

──ああ、水谷千重子さん!

小牧 そうそう(笑)。そのコンサートも先生に誘われて観に行きました。僕の行きつけのワインバーにも行ったし、なんせ元日は必ずご自宅にご挨拶に行ってた。一昨年は加矢太とひかりも連れて行って、「騎手免許を受けようと思ってます」と報告させてもらってね。その日は先生、調子がよかったんやろうね。めずらしくお酒をたくさん飲んでたなぁ。いつもそうやけど、ほとんど仕事の話はせんかった。仕事以外の昔話とかようしてたよ。

──トレセンにはいつ頃まできていらっしゃったんですか?

小牧 入院していたこともあって、この1カ月くらいはきていなかったけど、それまではずっときてたよ。自分で車を運転してね。装鞍はさすがにできへんかったみたいで、そこは僕らがやってたけどね。

──小牧さんにとって、服部先生はどんな存在でしたか?

小牧 2018年の夏にケガから復帰したとき、誰も乗せてくれへんようになって。そのときに助けてくれたのが服部先生やった。一時期は、服部厩舎のほぼすべての馬を任せてくれていたからね。もし服部厩舎がなかったら、今こうしてジョッキーを続けていられたかどうか…。本当に助けてもらいました。ここ数年だけじゃなく、2007年にはエムオーウイナーで重賞も勝たせてもらったしね(シルクロードS)。こうして思い返すと、いい思い出ばかりです。

──さて、今週は元服部厩舎の管理馬、フチサンメルチャンが走ります(8月6日・新潟10R・驀進特別)。

小牧 メルチャン、入るね。休み明けやけど、相変わらず調教でも一生懸命走っているし、あとは何とか外枠が当たってくれれば…。服部先生にいいレースを届けられるよう、僕も一生懸命乗ってきますわ。

(文中敬称略)
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1967年9月7日、鹿児島県生まれ。1985年に公営・園田競馬でデビュー。名伯楽・曾和直榮調教師の元で腕を磨き、10度の兵庫リーディングと2度の全国リーディングを獲得。2004年にJRAに移籍。2008年には桜花賞をレジネッタで制し悲願のGI制覇を遂げた。その後もローズキングダムとのコンビで朝日杯FSを制するなど、今や大舞台には欠かせないジョッキーとして活躍中。

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