スマートフォン版へ

セレクトセールからセレクションセールへ

  • 2023年08月02日(水) 18時00分

両日合わせて昨年の売り上げ記録をさらに大きく更新


生産地便り

▲セレクトセール当歳展示風景(撮影:田中哲実)


 7月10日、11日の両日、苫小牧市のノーザンホースパークを会場に開催されたセレクトセールは、1歳、当歳、合わせて実に309億円余の売り上げに達し、昨年の記録をさらに大きく更新した。

 1歳セッションに続き、翌11日に行われた当歳セッションでは、231頭が上場され、そのうち219頭が落札されて、売却率は94.8%。

 前年比で上場頭数が5頭減、落札頭数も6頭減となったため、売却率こそ微減(0.5%)ではあったが、売り上げは20億円以上も上昇し、当歳だけで162億5800万円、平均価格7423万7422円、中間価格も4510万円というとんでもない数字を叩き出した。

 セレクトセール当歳での話題の中心は、やはり今年初産駒が誕生したコントレイルであろう。この日の最高価格360番コンヴィクションIIの2023(牡、落札価格5億2000万円、取引価格5億7200万円)を筆頭に、全20頭(1頭欠場)が上場され、完売の人気ぶりであった。

生産地便り

▲セレクトセール当歳での最高価格となった360番コンヴィクションIIの2023(撮影:田中哲実)


 そのコントレイル産駒20頭のうち、ノーザンファーム生産馬は4頭、追分ファームと社台ファームが各1頭で、ここまでがいわゆる「社台グループ」からの上場馬だが、その他の14頭は、日高の各牧場からの上場馬であった。

 中でもグランド牧場は3頭を上場し、329番バイバイベイビーの2023(牡)が3億6300万円、376番カレドニアロードの2023(牝)が1億3750万円、465番ヒミコIIの2023(牝)が9020万円(いずれも税込みの取引価格)で落札された。

生産地便り

▲329番バイバイベイビーの2023(撮影:田中哲実)


生産地便り

▲376番カレドニアロードの2023(撮影:田中哲実)


生産地便り

▲465番ヒミコIIの2023(撮影:田中哲実)


 コントレイル産駒の1億円超えは8頭。うち6頭が社台グループからの上場馬ではあるが、日高産馬も十分に健闘したと言えるだろう。

 コントレイル産駒は結局20頭で計28億2920万円を売り上げて、当歳セッションの主役を務めた形になった。

 さらにエピファネイア(12頭上場完売)、キタサンブラック(15頭上場完売)が、それぞれ20億円以上を売り上げて、セールを支えた。

 ここまで価格が高騰してしまうと、当然ながら「買いたくても買えない購買者」が続出する。その影響を受けて、セレクトセールから2週間後の7月25日、26日の両日、静内の北海道市場を会場に開催された「セレクションセール」は、こちらもまた同セール史上最高の大商いが現出した。

 2日間で295頭が上場され、うち271頭が落札。売却率は、初めて90%を超えて91.9%と前年比4.5%の増加で、総売り上げも62億1137万円に達した。前年比16.4%の大幅上昇である。

 平均価格2292万185円で前年比12.9%の上昇。中間価格もまた1870万円と大きくのびた。

 セレクションセールにおける最高価格馬は、84番カリーニョミノルの2022(牡鹿毛、父シニスターミニスター、母の父クロフネ)の1億340万円(落札価格9400万円)。

 フジワラファームからの上場馬で落札者は今福洋介氏。セレクションセールからもついに税込みではあるが1億円馬が誕生した。

生産地便り

▲セレクションセール最高価格となった84番カリーニョミノルの2022(撮影:田中哲実)


 牝馬では176番チックニステルの2022(父Justify、母の父Van Nistelrooy)の5280万円(落札価格4800万円)が最高価格となった。谷川牧場の上場馬で、落札者は里見治氏。

生産地便り

▲セレクションセール牝馬最高価格となった176番チックニステルの2022(撮影:田中哲実)


 セレクトセールとはもちろん比較にならないとはいえ、セレクションセールも大きく価格が高騰した背景には、競馬が引き続き堅調に推移していることがまず挙げられるだろう。

 加えて、良い馬を買い求めるためには多少価格が高くとも資金を投じようという購買者が増えたことで、より活発な競り合いになる上場馬が少なくなかったとも言えそうだ。

 購買者の1人は「昨年までの相場のイメージで臨んだが、とても手の出る価格にならなかった」と苦笑し「頭を切り替えないと、これはという馬はもうまともには買えない」とも述懐していた。

 1億円超えが1頭、そして5000万円〜1億円の価格帯では前年の11頭から15頭に、さらに4000万〜5000万円では14頭→15頭、3000万円〜4000万円では21頭→31頭というように、価格の上位馬は確実に相場が上昇してきている。

 この流れは今後いつまで持続するだろうか。8月下旬には我が国最大規模の1歳市場「サマーセール」が北海道市場で開催予定である。名簿上では1426頭の申し込みがあり、これを5日間の日程で実施する。

 セレクトセールで目当ての馬を買い切れなかった購買者がセレクションセールに流れてきたように、セレクションセールでも予算を超えてしまい、予定頭数を揃えられなかった購買者が次にはサマーセールへと照準を絞ってくるだろう。

 地方競馬の各馬主会でも、補助金を交付して多くの1歳馬購買を奨励する流れになってきているのは周知の通り。そんなことから、サマーセールには、また多くの期待がかかってくる。

 以前、当欄で触れたように、今年の各地の地方競馬ダービー馬となった馬たちの多くが、サマーセールやセプテンバーセールなどの出身馬であった。その筆頭格が大井の東京ダービーとその後のジャパンダートダービーをも制したミックファイアである。こうした逸材を発掘できるのもサマーセールの大きな魅力であろう。

 今後、よほど大きな経済的変動でも発生しない限り、また中央、地方の競馬が車の両輪のごとく、前年並みの馬券売り上げ水準を維持できている間は、生産地の好況も続いて行きそうな気がしてくる。
生産地便り

▲セレクトセール当歳展示全景(撮影:田中哲実)

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング