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「人間、本気でやろうと思ったらなんでもできる」6年前の九州でのボランティアを振り返る──熊本にある意外なルーツとは

  • 2023年08月15日(火) 18時01分
太論

▲「また必要とされることがあれば駆けつけたい」(撮影:桂伸也)


先週は土日で4鞍に騎乗した小牧騎手。土曜日の小倉5Rでは、自らの手で仕上げたキリシマエアヒメがデビューし、ずっと除外の憂き目に遭っていたグレアミラージュも、日曜日の最終レースに出走しました。今回はこの2レースの回顧を中心に、ユーザーからの質問にも回答。6年前、騎乗停止中に敢行した被災地でのボランティアについて振り返ってくれました。

(取材・文=不破由妃子)

「昨日は、(坂井)瑠星と加矢太、あとは服部(寿希騎手)くんと鶏鍋を」


──小牧さん、お疲れさまです。台風は大丈夫ですか?

小牧 うん。電車が動かないから、トレーニングは中止や。朝は雨も風もすごかったみたいやけど、今日はめずらしく朝寝坊しとったから、全然わからんかった。昨日、飲み過ぎたわ(苦笑)。

──通常運転(笑)。

小牧 昨日は、(坂井)瑠星と加矢太、あとは服部(寿希騎手)くんがウチにきて、みんなで飲みながら鶏鍋をしてね。あ〜、飲み過ぎた。

──月曜日は心置きなく飲めますもんね(笑)。さて、さっそく先週の競馬ですが、キリシマエアヒメがデビューを迎えて(8月12日・小倉5R・芝1200m・9番人気9着)。

小牧 まぁよう頑張ったかな。直線はいったん内に入れてね。馬を怖がって、ちょっと逃げていたから。

──いかにも新馬戦ですね。

小牧 そうやね。でも、直線はちょろちょろ伸びてたよ。小さな馬やから(408キロ)、どの程度上積みがあるかわからんけど、九州産やし、詰めて使っていくと思うよ。

──レースを経験しての変わり身に期待です。日曜日の小倉最終に出走したグレアミラージュは10着。初めての1000mでしたが。

小牧 出遅れた…。出遅れていなかったら、もっといい勝負ができたと思う。

──ゲートでだいぶ待たされて(アドバンスファラオが枠入り不良で発走時刻が2分遅延)。その影響もあったのでは?

小牧 そうやね。座り込むような形で、横にモタれてしまって。最後までその姿勢が直らんかった。

──でしたね。パトロールビデオにはっきり映っていました。でも、出遅れなければ…という手応えを得られる内容だったんですね。

小牧 うん。直線は伸びてきていたから。いい走りだったよ。だからこそ、出遅れが悔やまれるわ。先週は、ジャッドノワールが除外になってしまってね。今週は入るでしょう。ようなっているし、これは楽しみです。

──あとは、フチサンメルチャンも登録していますね。

小牧 日曜日の芝1200mに入りそうやね(小倉9R・西部スポニチ賞)。一生懸命走るから1000mでも長いくらいやけど、じっくり乗れば福島のような競馬(2022年11月12日・福島10R・会津特別3着)ができると思う。この前の驀進特別も、2着馬とは差がなかったからね。行くところがなくなってしまって、もったいないことをした。通用する力はあるから、今度も上手いことハマればいい競馬ができると思うよ。

──では質問をひとつ。「7月初旬に九州がまた豪雨被害に見舞われました。お寺の建物が潰れたり、橋が崩落したりと大きな被害が出ました。自分は熊本の人間ですが、そういえば2017年の災害のときは、小牧騎手がボランティアで福岡の朝倉に入り、助けてくれたんだよなぁと思い出し、メッセージを送らせていただきました。今の小牧騎手にとって、あのボランティアの日々はどんな思い出として残っていますか? そこから繋がっている人間関係はありますか? お忙しいとは思いますが、落ち着いたらぜひ熊本にも遊びにきてください」。

小牧 人間関係は繋がってないねぇ。みんないろんなところからきていたから。あのボランティアは、ただただいい経験やった。こんな経験はなかなかできへんなと思いながらね。

──もう6年も前なんですねぇ。あのときは、小牧さんの行動力にも驚かされました。

小牧 人間、本気でやろうと思ったら、なんでもできるんやなと思ったよ。テレビでボランティアの方たちが活躍しているのを見ると思い出すわ。

──小牧さんは、民家の床下に流れ込んだ泥を搔き出す作業をしていましたね。

小牧 うん。テレビで見たことがあると思うけど、床下が被害に遭うと大変やねん。あれを放置していたら、いろんなものが混ざった泥が腐ってくるから。泥が腐れば、家の骨組みの木も腐るしね。とにかく全部搔き出さなアカンかった。重たい泥でねぇ。ずっと腰を曲げて作業せなアカンから、大変やった。

 災害なんてないに越したことはないし、現役中は難しいかもしれんけど、また必要とされることがあれば駆けつけたいと思ってるよ。熊本にも行きたいんやけどなぁ。昔からの友達がいるから、ずっと行きたい行きたいと思ってたんやけど、「コロナが落ち着かんうちは来んといて」と言われていたから。

──ああ、地方ではそのあたり敏感な時期がありましたものね。

小牧 そうそう。その友達というのは、十三の飲み友達の同級生なんやけど、荒尾競馬場に行ったときは、よく泊まりに行ってたんですわ。それこそ、加矢太が子供の頃からの付き合いや。なんせ加矢太が初めて競馬を見に行ったのは荒尾競馬場やからね。

──なるほど。もともと熊本にはつながりがあるんですね。

小牧 うん。熊本はものすごくいいところだから、しょっちゅう行ってた。早く被害から立ち直れることを祈っているし、今回の台風の被害も、これ以上広がらないといいな。

(文中敬称略)
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1967年9月7日、鹿児島県生まれ。1985年に公営・園田競馬でデビュー。名伯楽・曾和直榮調教師の元で腕を磨き、10度の兵庫リーディングと2度の全国リーディングを獲得。2004年にJRAに移籍。2008年には桜花賞をレジネッタで制し悲願のGI制覇を遂げた。その後もローズキングダムとのコンビで朝日杯FSを制するなど、今や大舞台には欠かせないジョッキーとして活躍中。

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