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【朝日杯FS】3戦3勝の朝日杯FS勝ち馬誕生 ジャンタルマンタルのGI制覇

  • 2023年12月18日(月) 18時00分

来春から日本で供用される父パレスマリスの絶好のアピールに


重賞レース回顧

3戦3勝で朝日杯FSを制したジャンタルマンタル(c)netkeiba.com


 2021年のドウデュース、2022年のドルチェモアに続き、3年連続して3戦3勝の朝日杯フューチュリティステークスの勝ち馬ジャンタルマンタル(父PalaceMaliceパレスマリス)が誕生した。

 芝状態もあって1分33秒8の勝ち時計は、昨年1分33秒9だったドルチェモア(その前週の阪神JFのリバティアイランドは1分33秒1)に続き、ジャンタルマンタルの勝ち時計は前週の阪神JFの、アスコリピチェーノの1分32秒6に及ばなかったが、これは大きく芝コンディションも関係した。

 途中からかかり気味にレースを引っ張ったシュトラウス(父モーリス)の前半のペースは「46秒1-58秒4→」だったが、阪神JFを「46秒4-58秒2→」で飛ばした伏兵シカゴスティングは、1歩33秒4で5着に粘っている。一方、2ハロン目から「10秒9-10秒7」の部分で先頭を奪ったシュトラウスには無理があったとはいえ、途中からマイペースになり、シカゴスティングより遅い前半1000m通過58秒4で行きながら、1分34秒6にまで失速している。先行して上位に入線した馬は少ない。見た目以上に馬場差があった。

 ジャンタルマンタルは、前2戦と同じように、内枠を引き、自身のリズムを崩さずに追走し、直線は少し芝状態のいい外に出す余裕があった。完勝といえる。

 父パレスマリス(その父Curlinカーリン)は、Yoshidaヨシダ(父ハーツクライ)、Adayarアダイヤー(父Frankel)、Hukumフクム(父Sea The Stars)などとともに、来春からダーレー・ジャパン スタリオンコンプレックスで供用されることが発表されている種牡馬。

 ジャンタルマンタルのGI制覇は絶好のアピールになった。父カーリンはBCクラシックなど制した7つのG1はすべてダートの10ハロン前後だった。またパレスマリスの制したグループレースも、G1ベルモントSなどすべてダートの中距離戦だが、産駒にはBCジュベナイルターフの勝ち馬、そして持込馬のジャンタルマンタルなど、芝での活躍馬も少なくない。

 母の父Royal Anthemロイヤルアンセムのグループレース4勝、BCターフ2着などの快走はすべて芝だった。その影響も強いのだろう。ジャンタルマンタルは、距離延長に対する不安はほとんどない。

 パレスマリス(13歳)の母パレスルーマーは、すでに日本に輸入されていて、半弟には今週の有馬記念に出走する6歳アイアンバローズ(父オルフェーヴル)、4歳ジャスティンパレス(父ディープインパクト)兄弟がいる。快走するとさらに話題沸騰だろう。

 2着に突っ込んだエコロヴァルツ(父ブラックタイド)は、夏の札幌戦以来の実戦で、1600m出走も、追い込む形も初めて。道中、少し行きたがるのを後方まで下げた時点では、好走は苦しい状況かと映ったが、直線大外に回って上がり34秒1は断然の最速。さすが武豊騎手、大胆な戦法転換はあざやかだった。これで展望は大きく広がった。

 ブラックタイド産駒というなら、武豊騎手のキタサンブラックだが、エコロヴァルツと同じように母の父にキングカメハメハを持つ活躍馬に、障害戦を含めて大活躍したタガノエスプレッソ(通算9勝)がいた。今回エコロヴァルツときわどい2着争いを展開した牝馬タガノエルピーダ(父キズナ)の半兄がタガノエスプレッソ(父ブラックタイド)である。

 阪神JFを除外され、もしもの場合に備え朝日杯FSに登録していた陣営の展望も見事だったが、それにこたえて惜しい3着だった牝馬タガノエルピーダはもっとすばらしい。

 2戦目の今回も先行して、他の先行馬がみんな失速した中で、この馬は「58秒8-35秒2」のバランスで1分34秒0。デビュー戦で上がり33秒5を記録して抜け出したシャープな牝馬。この日のちょっとタフな芝は合わなかったと思える。記録上の走破時計は見劣っても、その能力は阪神JFの上位組に一歩もゆずらないだろう。

 人気でともに行きたがる死角を露呈して8着だったダノンマッキンリー、10着シュトラウスはともにモーリス産駒。父と同じようにキャリアの浅いうちはかかり気味になる難しさがあるが、今回はそろってその死角を出してしまった。

 種牡馬モーリスの日本での代表産駒は、4歳以降に本物になったジャックドール、同じくジェラルディーナ、ノースブリッジ、ディヴィーナなど。遅咲きではないものの、気性面に若さが残るうちは本当の素質を生かしきれないようなところがある。だから、GI馬はいてもクラシック馬はいない。長い目で成長に期待したい。

 とくにシュトラウスは、たしかに「10秒台」のラップが連続した地点でハナに立ったのは厳しかったが、そのあと12秒台のハロンを連続させて1000m通過は「58秒4」。あれだけ行きたがったのだから、抑えたらもっとひどいことになる。行かせたT.マーカンド騎手の判断ミスではない。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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