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【有馬記念】不屈の復活を遂げた武豊騎手とドウデュース

  • 2023年12月25日(月) 18時00分

しばらく鳴り止むことがなかったスタンドの声援


重賞レース回顧

有馬記念を制したドウデュース(撮影:下野雄規)


 沸き起こる大歓声の中、先頭でゴールしたのは、不屈の復活を遂げた武豊騎手とドウデュース(父ハーツクライ)だった。

 予想以上に長引いた筋挫傷から立ち直った武豊騎手は、前週から復帰したものの、騎乗回数を限定し、この日に騎乗したのは有馬記念のドウデュースのひと鞍だけ。「さすが、ユタカ」。スタンドの感動の声援はしばらく鳴り止むことがなかった。

 その勝ち方は、イクイノックスを封じた日本ダービー、この春に京都記念を勝った際と同じような、前半を控えて後半スパート策だった。引き上げてきた検量室前で「よし、もう一回フランスに行こう」と声を上げたという。

 レース全体の流れは、前後半の1200m「1分12秒6-(6秒3)-1分12秒0」=2分30秒9。途中から、ここが引退レースになるタイトルホルダー(父ドゥラメンテ)が二番手以下を離す形になったため、一見、速いペースになったように映ったが、実際はマシンが刻んだような一定ペース。最初の3ハロン目から11ハロンも連続して緩みない「11秒7-12秒5」のラップが続いた。

 この流れを前半は最後方近くに控え、3コーナー過ぎから図ったように敢然とスパートした勝ち方は、武豊騎手のもっとも絵になる勝ち方だった。

 この流れを作って0秒3差の3着に粘った横山和生騎手のタイトルホルダーも立派だったが、意表をつく先行策から、一旦は自身のペースを落として息を入れたC.ルメール騎手のスターズオンアース(父ドゥラメンテ)の変幻自在のレース運びも素晴らしかった。先行策を取ってはいたが、上がりは34秒8。確勝の形に持ち込んだドウデュースを差し返そうとするシーンもあった。

「やっぱりユタカだ」「見事なものだ」、祝福の拍手が続いたが、外枠とあって7番人気にまで支持率の下がったスターズオンアース、さらには本来の果敢な戦法でレースを盛り上げたタイトルホルダーもまた、見事だった。

 1番人気のジャスティンパレス(父ディープインパクト)は、前半は最後方からの追走。最後は上がり2位の34秒4で4着まで押し上げたが、「コーナーでギアが上がらなかった(横山武史騎手)」と残念がったように、決して不得手ではないが、これで中山芝【0-1-0-3】。勝負どころで外を回されるロスも重なった。

 3番人気に支持された5歳牝馬スルーセブンシーズ(父ドリームジャーニー)が本馬場で返し馬に入ると、迫力のフットワークとその気配に感嘆の声が上がったが、あれは明らかに気負い過ぎ。そのため中位の外につけたが、ずっと力んで空回りになってしまった。巻き返したい陣営には、春2月の海外遠征もありそうだ。

 4番人気で8着にとどまったソールオリエンス(父キタサンブラック)は、得意の中山コースだが、器用な追い込みタイプではない死角が、接戦の追い比べになって出てしまった(3着から10着まで0秒5差)。自身の上がり34秒8は少しも悪くないが、猛然と追い込んで勝った皐月賞のように、全体に時計を要したときにこそ迫力のパワー全開か。まだ自在性に欠けるのでテン乗りも不利だった。

 5番人気で6着のタスティエーラ(父サトノクラウン)は、4コーナーで狭くなるシーンがあったあと、最後の直線でも外から寄られる不利。痛いロスがありながらも6着で力は見せたが、3歳牡馬ソールオリエンス、タスティエーラの2頭は今回が初めての古馬との対戦。さすがにまだ、したたかではなかった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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