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【AJCC】力強さあふれる騎乗で重賞初制覇は見事だった

  • 2024年01月22日(月) 18時00分

今回の勝利に結びついた理由とは?


重賞レース回顧

AJCCを制したチャックネイト(撮影:小金井那祥)


 6歳セン馬チャックネイト(父ハーツクライ)がゴール寸前に差し返して、初重賞制覇。騎乗した女性騎手レイチェル・キング騎手(イギリス)は、外国人女性騎手による初のJRA平地重賞勝利ジョッキーとなった。

「62秒2-(12秒3)-62秒1」の前後半で、2分16秒6(レース上がり37秒8)も要した不良馬場でのレース。コースレコードより6秒5も遅かった。当然、重馬場の巧拙は大きく関係したが、上位5着まではすべて5番人気以内に支持された馬である。現時点での各馬の総合力が問われたレースだったともいえる。

 それにしても見事だったのは、ハナ差で差し返したR.キング騎手の闘志と力強さあふれる騎乗。4コーナーにさしかかる時点でもう叱咤激励のムチが入っていたチャックネイトは、勝ち負けから脱落するような動きだった。苦しい坂を上がった地点では外から追い込んだボッケリーニ(父キングカメハメハ)に1馬身近く差されていた。しかし、諦めていなかった。

 最後の1ハロンはみんな鈍って「13秒1」も要した。差し返される形になった2着ボッケリーニは、浜中騎手が「いい意味でも悪い意味でも、この馬らしい競馬だった」と残念がったのは、これで2着が実に11回目。まったくその通りだった。だが、秘めている底力を最後のゴールの瞬間まで余すところなく引き出したのは、R.キング騎手の腕だったといえる。

 彼女の方がもうバテかけて疲れている騎乗馬を動かすレースの経験が豊富だった。R.キング騎手はさまざまなコンデションで行われる15カ国(欧州を中心)のレースに騎乗してきた経験が役立っていると、今回の勝利に結びついた理由を明かした。

 勝ったチャックネイトはノド鳴りの手術を受けた4歳夏以降【3-0-4-0】。さらに去勢手術も経験してまだ通算15戦5勝。7歳になっても、8歳になっても活躍して不思議はない。

 無念の2着に惜敗した8歳馬ボッケリーニは、ベテラン8歳になってもまだ健在でタフだった。戦前、8歳馬不利を伝えられたが、出走レース数と年齢に対する考え方が変化した十数年前の2009年以降に限ると、これで8歳馬はAJCC【0-5-2-24】となった。

 今年は惜しい3着だった7歳クロミナンス(父ロードカナロア)は、再三の脚部難、骨折などの休養でまだ11戦【4-1-2-4】しかしていない。8歳時もがんばるはずだ。

 1番人気に支持された8歳マイネルウィルトス(父スクリーンヒーロー)もまだまだタフで丈夫だった。先導する馬不在。追い込みの決まりにくい不良馬場。さらに揉まれたくないタイプとあって、自身が行く形を取ったのは正解に近かった。レースの前後半バランスがまったく同じだったように、絶妙に近い先手主張策だったが、途中からショウナンバシット(父シルバーステート)に来られたのが痛かった。また、有力馬の格好の目標になる不利も重なった。5着とはいえ差はわずか0秒3。3着クロミナンスのC.ルメール騎手が「きょうの馬場を考えると、外枠の方が良かった」と振り返ったように、不良馬場の最内枠がきびしかった。

 モリアーナ(父エピファネイア)は、3歳秋の紫苑Sで見せた爆発力が真価。少し行きたがるシーンもあったが、なだめて進んで直線は外へ。上がり3ハロン36秒9(最速)で伸びたが0秒2差3着まで。だが、この馬場で好勝負に持ち込めたのは大健闘であり、2000m前後の良馬場のレースなら、紫苑Sの再現が十分に期待にできる。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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