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6月の募集馬展示会

  • 2006年06月27日(火) 23時49分
 梅雨のない北海道は、6月の気候が一年中でもっとも爽やかだと言われる。いわゆる「暑くもなく寒くもない」ちょうど良い気温にカラッとした空気。確かに例年はその通りなのだが、今年はどういうわけか、中旬よりずっと天候が不順のままである。まず、終日晴れる日がほとんどない。午前中、あるいは午後遅くになると決まったように海霧がかかり、気温もなかなか上昇しない。時節柄、そろそろ日高では一番牧草の刈り取りを始めたいところだが、ここまで天候不順ではなかなか着手できずにいる。太平洋高気圧の張り出してくる夏はまだかなり先のことで、何とも気が揉める毎日だ。

 さて、「爽やかな6月」に照準を合わせて、いくつかのクラブ法人が今年も「募集馬見学ツアー」を企画し、このところ週末になると一口馬主会員が大挙して生産地を訪れている。

 先週(24日〜25日)には、老舗の「ユニオンオーナーズクラブ」が募集馬展示会を実施した。24日の土曜日、静内にある北海道市場を会場に午後1時半より展示会がスタート。バス2台に分乗した会員が、ここでパンフレットを片手に、目当ての募集馬と対面するのである。


 この日、静内では珍しく晴天に恵まれ(浦河は終日海霧がかかっていた)、1歳世代全41頭が会員に披露された。このうち、昨年の当歳市場にてクラブが購入し募集した(すでに満口)2頭を除く39頭が今回の募集馬である。牡13頭。牝26頭。このクラブの場合、「生産牧場による募集馬提供」が基本であり、年ごとにこうした“ばらつき”が生じるのはやむを得ないところか。

 1歳6月の段階で、募集馬の「将来」を占うのはかなり至難の技だが、それでもやはり人気のある牧場はほぼ固定化しているとも聞く。「良い馬を安く提供する」ことが牧場側にとっての最大にして究極のサービスであり、会員はそれぞれ提供牧場と実馬、血統などを参考にしながら“出資”する馬を選択するのである。

 ところで「ユニオン」は、今月に入り、相次いで吉報がもたらされた。

 まず一つは2歳戦開幕週にいきなり福島で新馬勝ちした(クーヴェルチュール)こと。父ブラックホーク、母ヒカリクリスタル、浦河・富菜牧場生産。美浦・国枝厩舎。兄にスキップジャックを持つ2歳牝馬で、この馬は募集当初より人気を集め、満口になっていたはずだ。予想通りの早い仕上がりで、デビュー戦を制した。ちなみにこの馬の募集価格は総額1470万円(200口)。

 そしてもう一つの吉報は同日(6月18日)の京都。「第11回マーメイドステークス」にて、ソリッドプラチナムが9番人気ながら大外を後方より一気にまくり、見事に優勝したことである。軽ハンデ(49kg)とはいえ、鞍上の安部幸夫騎手(名古屋)の好判断もあり、ユニオンにとって実に13年ぶりとなる重賞優勝をもたらした。父ステイゴールド、母リザーブシート、牝馬3歳。静内・橋本牧場生産。栗東・田中章厩舎。

 ソリッドプラチナムはメンバー中、416kgという最軽量の牝馬だが、さらに驚かされるのは、1歳時の同馬の募集価格である。何と、総額399万円。これは同期56頭の中でも格段に安く(他に499万8000円のラムタラ産駒もいたが)、しかも200口で割ると募集価格は1口19950円。いわば“究極の廉価馬”が、こうして立派に重賞勝ち馬となったのだ。


 以前、この欄でも書いたように、今年の3歳世代はかなり低価格馬が活躍している。ジンクスと呼べるかどうかまでは何とも言えないが、改めて、こんな「番狂わせ?」も競馬には起こるのだと思い知らされた気がする。ソリッドプラチナムはこれで通算8戦3勝、2着1回、3着1回。総収得賞金は6387万円となった。こんな会員孝行のサラブレッドもいるからクラブ馬主の人気が維持されているのである。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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