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セレクトセール2006 その1

  • 2006年07月11日(火) 13時00分
 日高はこの日、朝からどんよりと曇り、細かな霧雨さえ降っていたが、それが苫小牧市のノーザンホースパークに近づくにつれ、本格的な雨となった。7月10日月曜日、「セレクトセール2006」の初日のことである。

 前の週の週間天気予報では月から水までは曇りまたは晴れという予報だったが、前回にも触れたように、このところ気象庁の出す週間予報はまるで当たらない。雨具が必要なほどのあいにくの空模様となり、やむなく途中のコンビニで安物のビニール傘を購入した。

 初日は1歳馬の市場である。上場予定頭数は170頭。午前9時半より比較展示が始まり、雨の中を多くの購買者と関係者が上場馬を見て回った。馬の背中が濡れて雫が落ちるほどのコンディション。気温は17度か18度ほどか。もちろん半袖では寒く、ほとんどの人が長袖である。冬物と思しきジャンパーに身を包んだ人さえいた。悪天候の下、主催者は使い捨ての合羽や傘を用意し配布している。早々に展示された馬たちの見学を切り上げ、せり会場の横に並んだテント(ここが飲食と休憩スペースである)に陣取る人々も多かった。

テントの並ぶ飲食・休憩スペース

 せり開始は12時。ここへ来るといつも感じることだが、とにかく大変な報道陣の数だ。日高ではついぞ見かけたことのない多くのマスコミ人が大挙してやってくる。当然、年に一度、“この場所”でしか会えない知人も多く、さながら何かのパーティー会場のようでもある。

報道陣もご覧の通り

 予定通りに市場が始まり、しばらくは売れたり売れなかったりといった、当歳市場から見るとやや低調とも思えるようなせり風景が続いた。

 だが、そのうち、どうやら「落札」と「主取り」がほとんど交互に繰り返される“法則”があることに気づかされた。もちろんリザーブ制を導入しているため、上場馬はリザーブ価格までは販売申込者によってせり上げられる。例えば、800万円からスタートした馬が、場内を見渡しても誰一人として声をかけていないにも拘わらず、裏手にいる販売申込者によって価格がどんどん吊り上げられるのだ。900万、1000万、1100万。もしリザーブ価格が1200万円ならば、その金額までは黙って鑑定人が値をつけて行く。途中で購買者がせりかけてきたらしめたものだが、誰からも声がかからなければ、結局、販売申込者が自身の番号でせり落とした形になる。

 さて、その「落札」と「主取り」が交互に繰り返される法則とは、何のことはない上場馬が「社台グループ」と「非社台」と交互に並んでいるために起こった現象なのである。

 圧倒的に売却率の高いのは、社台グループの上場馬だった。しかも総じて価格も高く、一方の非社台の上場馬はこの日、かなりの苦戦を強いられていた。

 初日が終了した時点で、主催者(日本競走馬協会)のサイトにて発表されている落札結果を見ると、改めてその違いが歴然としてくる。ざっと集計したところ(間違いがあるかも知れないが)、社台グループの上場馬は74頭(欠場1頭)、そのうち何と72頭が落札され、売却率は97.3%に達した。ところが、非社台の上場馬は、91頭上場(欠場4頭)で落札37頭、主取り54頭。売却率40.66%という結果なのだ。

 この日の最高価格馬は、ディープインパクトを叔父に持つ上場番号60番「ヴェイルオブアヴァロンの2005」(父、Pivotal)で価格は2億500万円。多田信尊氏が落札した。なお、落札結果を見渡して見ると、取引価格5000万円(税抜き)以上の馬は20頭いるが、そのうち社台グループの上場馬が18頭を占める。圧倒的な差である。

ヴェイルオブアヴァロンの2005

 全体では、165頭上場で109頭が落札、売却率は66.06%と、おおよそ3頭に2頭が売れたことにはなるのだが、その内実は、ほとんど比較にならないほどの落差、格差が生じてしまった。

 これが「ブランド力」なのだろうか。双方の売り上げ合計額と平均価格も計算してみようと思ったものの、あまりの違いにその気力を喪失してしまった。11日と12日の両日は当歳が登場する。できるだけまた会場に足を運ぶ予定だが、はて、どんなことになるものやら。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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