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約一か月遅れの牧草

  • 2006年07月25日(火) 23時49分
 確か今月初旬に「一番牧草の収穫最盛期」とお伝えしたはずだが、その後天候が急変してしまい、日高はずっと一か月近く「梅雨」に似た気候が続いてしまった。

 ちょうどセレクトセールの数日前あたりから昨日(7月24日)まで、終日晴れた日はほとんどなく、朝は必ず海霧がかかり、視界不良の状態で夜が明けた。日中も曇って太陽の出ない日ばかり続き、時々雨にも見舞われた。湿度が高く、気温はやや低め。涼しいというよりは肌寒いほどの気候。今年の7月は一向に夏らしい日がないまま、残り数日で8月になろうとしている。ようやく今日になり、夏空が広がって少しだけ暑くなってきた。

 だが、すでに7月下旬。例年ならば今月初旬にはだいたい片付いているはずの一番牧草が、まだ終わっていない。その理由は、天候の悪さに尽きる。太陽光線が何より必要な乾草に、ほとんどまともに晴れた日がなかったため、いつまでも刈り取りが出来なかったのだ。

 のみならず、(ほとんど満足に当たったためしのない)週間予報を信じて、今月初旬に広大な採草地の牧草を刈り取ってしまった牧場が多かった。一度刈り取った牧草は、ひたすら反転と集草を繰り返して乾草として製品化する以外にない。ところが乾草どころか、急変した天候のために、多くの採草地の牧草が雨に当たってしまった。

 雨に当たった牧草は、著しく嗜好性が低下する。それでも1日か2日のロスならば、まだ敷きわら程度には使用可能なので、半分諦めもつく。ところが今月の中旬以降は、そんな牧草も、敷きわらはおろか堆肥にしかならないくらいに天候不良が続いた。おびただしい量の一番牧草が廃棄の憂き目に遭ったと思われる。

 早くも「今年は満足な一番牧草がない」と悲鳴を上げる牧場も出てきている。未だ刈り取っていない採草地を抱える牧場もかなりあるのだが、この時期まで刈り遅れてしまうと、これも嗜好性が極端に低下する。繊維質が固くなり、ほとんど立ち枯れたような状態になるため、決して栄養価の高い乾草にはならない。

 だが、いくら収穫時期が遅くなっても、まず一番牧草を刈り取らないことには二番牧草が収穫できない。大幅な作業の遅れを取り戻すために、天候の回復とともに、日高の各地では再びトラクターが活発に動き始めた。刈り遅れた一番牧草を収穫する傍らで、早々に(6月初旬頃)一番牧草を収穫できた採草地は、もう二番牧草がかなり伸びている。早くも二番牧草の収穫に着手する牧場もあって、対照的な光景が広がっている。

 いずれにしても、良質の一番牧草はかなりの品薄になるだろう。もともとアメリカなどからの輸入牧草を飼料として使用する育成牧場などはそれほど大きな影響はないかも知れないが、日高の生産牧場の大半は自家生産した乾草を主として使っている。今後は雨に当たっていない良質の国産牧草の確保に東奔西走する牧場がたくさん出てくることだろう。

 ところで今週末の土日は、浦河で「うらかわ馬フェスタ2006」なるイベントが開催される。シンザンフェスティバル、エンデュランス大会(乗馬によるマラソン競技のようなもの)、浦河競馬祭(草競馬)の三つが合体し、29日と30日の二日間でこれらを集中的に開催しようというもの。次回はその模様をお伝えする予定でいる。なお、今週末、日高に来られる方がいたら、ぜひ浦河まで足を運んでいただきたいと思う。私は29日夜、シンザンフェスティバルにて「馬博士ウルトラクイズ」の司会を務める予定。最後まで勝ち残ったチャンピオン(これが馬博士となる)には、賞金30000円が授与されます。

 馬、馬、馬づくしの二日間です。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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