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サマーセール近づく

  • 2006年08月15日(火) 23時51分
 来週8月21日(月)より25日(金)までの5日間にわたり、静内の北海道市場にて「サマーセール」が開催される。上場申し込みは1246頭。これに加え、去る7月4日の八戸市場と7月18日のセレクションセールにて主取りとなった65頭が名簿の末尾に追加され、合計1311頭という膨大な数に上る。

 昨年は1156頭が上場され、落札は309頭。売却率26.7%、総額16億8782万2500円(税込み)という成績に終わった。落札馬の平均価格は546万円余。そのうち平均価格を上回ったのは全体の約3分の1ほどで、残り3分の2はこれを下回った。今年は5月のトレーニングセールを皮切りに、7月のセレクションでも日高の市場は前年を上回る成績を挙げていることから、何とかサマーセールでも昨年以上の成績を残したいところだ。

 とはいえ、状況は決して明るくはない。まず、今年予定されている団体購買はJRAのみで、昨年合わせて25頭を購買した岩手県と石川県の両馬主会が、サマーセールをスルーしオータムセール(10月)への参加に切り替えているとも言われている。となると、その分だけ購買実頭数が減少するのは避けられず、後は個人馬主層によってどれだけこの市場で落札されるかにかかっている。

 低価格馬の需要を下支えしてきた地方競馬の現状はかなり厳しく、それがサマーセールにおける団体購買不参加(前述の石川県、岩手県)にも如実に現れている。とりわけ、岩手県はこのサマーセールにおける「お得意様」として長年、市場を支えてきた。かつてはJRAと1頭の馬を巡り激しく争奪戦を演じるくらいの勢いがあった。岩手県馬主会が1000万円を超えるような1歳馬を競り落とす場面を何度も見てきたのだが、昨今は平均価格もかなり下落。昨年は420万円から210万円までの価格帯で20頭を購買したものの、今年はついにオータムセールへとターゲットを移すことになったのだ。

 岩手県に限らず、南関東以外の地方競馬で果たして1歳馬を市場で購買できる馬主がどれだけいるだろうか。認定競走が辛うじて地方競馬の馬主のモチベーションを支えているのは間違いなく、所有馬が2歳から3歳になった段階で賞金体系は大きく変る。所有馬を2歳戦からデビューさせたいと強く希望する馬主でなければ、3歳の中央下がりを安い価格で仕入れ(未勝利馬ならばかなり低価格と言われている)、それで細々と楽しむ程度で十分だと考える馬主もまた多いのである。

 「市場で買うって? とてもじゃないがそれは無理だ。200万も300万も出せないよ。そんなに出しても元が取れないからね。」こんな声がよく聞かれる。それどころか、「うちの競馬場もいつまで続くか分からなくなってきたから、1歳なんて買えない。こんな調子じゃ廃止するかも知れないし…」などと不安を口にする馬主も少なくない。

 こんな背景の下、サマーセールが開催されようとしている。唯一期待できるのは、中央に登録のある新興馬主層の積極的な姿勢ということになろうか。平均価格と売却率の低下は裏を返すとそれだけ「馬を求めやすくなっている」ということでもある。現に、以前ならばまず中央競馬にはほとんど無縁とも思えた価格の市場取引馬が、今は平気で重賞を勝つ時代でもある。先週の北九州記念を制したコスモフォーチュンは2003年オータムセールでの取引馬だが、価格は何と税抜き200万円。すでにこれで5勝を挙げ、獲得賞金は1億1254万円に達している。

 この馬だけが例外的な存在というわけでは決してなく、他にもこうした「活躍する低価格馬」が枚挙にいとまがないほど次々に登場しているのが今年の傾向である。サマーセールは玉石混交ながら、こんな素材も紛れ込んでいる“魅惑の市場”とも言えるのだが…。

 なお私事ながら、初日21日には私の生産馬も登場する予定である。果たしていかなる結果が出るものやら。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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