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オータムセール近づく

  • 2006年10月10日(火) 23時51分
 この時期、北海道に台風がやってくることは珍しいのだが、10月7日から8日にかけて、日高は大荒れの天候だった。えりも岬では瞬間最大風速が30メートルを軽く超え、海は大しけ。日高の海岸線を平行して走る国道は、あちこちで高波を被った。本来ならば、7日と8日の両日にわたり開催された「とねっこカーニバル」(日高町)を取材するつもりでいたのだが、この天候では如何ともし難く、断念せざるを得なかった。このイベントは、また来年にでも出かけることにしようと思う。

 さて、来週はいよいよ「オータムセール」が開催される。16日(月)当歳に始まり、17日から20日までは1歳馬市場である。初日の当歳市場は上場申し込み261頭。そして、5日間にわたる1歳市場は上場申し込みがサラブレッド888頭、アングロアラブ4頭の計892頭に達する。

 昨年、同市場では、当歳が239頭の上場で46頭が落札。総額3億6485万5000円(税込み)の売り上げで売却率19.2%。最高価格は3150万円(父アグネスタキオン、母ペイミーキャッシュ)。浦河の(有)梅田牧場が上場し、福岡県の(有)ビッグが落札した。最低は210万円が3頭。

 また1歳市場は、上場708頭中、落札が190頭。総額5億6461万6500円。売却率26.8%。最高は1942万5000円。父アグネスタキオン、母シェラザードの牝馬で浦河の林孝輝牧場生産。この牧場は今年の日本ダービー馬メイショウサムソンを生産したことでも知られる。当歳、1歳ともにアグネスタキオン産駒が最高価格馬となったのは、ちょうど種牡馬としての同馬の評価がもっとも高かった時期と重なったことも関係があろう。種付け料が一気に倍増(600万円→1200万円)となったのがちょうど昨秋のこと。デビューしたファーストクロップが次々に勝ち上がり、翌年のクラシックでの大活躍が予感されるような快進撃だったのだ。

 その一方、最低価格馬は52万5000円で、4頭が落札された。その他100万円以下に12頭、105万円(つまり税抜き100万円ということである)に32頭を数える。オータムセールの特長は何と言ってもこうした低価格馬の多さである。一年を通じて最後となる市場のため、「投売り」する生産者が少なくないのである。

 今年は果たしてどういう展開になるだろうか。4月のJRAブリーズアップセールに始まり、5月のトレーニングセール、7月のセレクトとセレクション、8月のサマーセールと、概ね市場は前年を上回る売却率で推移してきた。だが、従来秋の市場の主たる購買層は中央競馬の関係者よりもむしろ地方競馬の関係者が多かった。その低迷する地方競馬が市場の取引成績に影を落とすことにならねば良いが、依然として、地方競馬に関しては明るいニュースが聞こえて来ない。中でも岩手県では、存廃問題にも関わるような取り扱いで岩手競馬のことが連日のように報じられていることは以前このコラムでもお伝えした通りである。

 岩手競馬には各地の地方競馬が抱える問題が、ほぼ集約された形で現れている。馬券売り上げ減少と進まぬコスト削減、増大する累積赤字、などなど。威容を誇る新盛岡競馬場が開場し、今年で11年目となるが当初予算から大きく狂い、最終的にこの競馬場建設のために400億円以上の巨費を投じる結果になったことが今日の経営難を招いた、と指摘する関係者も多い。あくまで結果論でしかないが、ここまで岩手競馬が低迷してくると、果たしてあれほどの立派な施設が本当に必要だったのか、との根本的な疑問さえ湧く。かつて、盛岡市内にあった旧盛岡競馬場は周辺の宅地化と競馬場に通じる道路の狭隘さなどから、開催時には大変な交通渋滞を招いていたという。地形的な制約から走路の大幅改修は望めず、フルゲート8頭のレースを強いられてもいた。施設も老朽化し、より近代的な新競馬場は時代の要請でもあったとは思う。しかし、皮肉なことに、「地方競馬の優等生」と称されたのは旧競馬場時代のことである。不便で古い施設に耐え忍びながら競馬を開催していた時代が、実はもっとも“儲かっていた”のだ。

 ところで岩手とともに、ここへきて急速に「逆風」の強まっているのが、北海道の「ばんえい競馬」である。10月7日、旭川、岩見沢、帯広、北見の4市で構成する北海道市営競馬組合の正副管理者会議が、北見市で開催された。その席上、「一度4市で構成する市営競馬組合を解散し、2市に集約する」という改善策が同組合改革検討チームより提案されたが、そこで問題になったのは、「報償費40%削減」と「競馬場使用料などの減免」の二点で、いずれも関係者との合意に達していないことから今後の展開によっては「廃止もあり得る」事態になっている。

 さらにネックとなっているのが、市営競馬組合の解散に伴う累積赤字31億円と、職員の退職金やリース契約解約費などで合計40億円以上を4市で負担し清算する必要があること。加えて、改革検討チームより4市に各5000万円ずつの追加拠出も求められており、それに各市は難色を示しているともいう。

 13日に次回の会合が開催され、「20日までには結論を出したい」(菅原旭川市長)との意向で、来週金曜日には遅くとも「帯広市を中心にした他一市との二市体制」で存続か、財政問題その他の山積する問題を解決できず廃止となるか、結論が出される。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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