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オータムセール始まる

  • 2006年10月17日(火) 23時50分
 10月16日より静内の北海道市場にて「オータムセール」がスタートした。本年度最後の市場となるこのセールには、当歳と1歳(サラ、アラ含む)約1100頭が上場予定である。

 初日の16日は当歳市場が行われた。上場申し込み261頭に対し、当日の上場頭数は220頭。実に欠場41頭に及んだ。欠場理由はそれぞれ異なるだろうが、それにしても41頭というのはいささか多過ぎる。

 この日、日高は終日好天に恵まれた。結果は落札46頭で売却率20.91%、売り上げ総額は4億57万5000円と、前年より売却率で1.66%、総額で3570万円、それぞれ上回った。

パレードリンク

 最高価格馬は、69番「マヤノメイビーの2006」(父キングカメハメハ、牡)。生産者は新ひだか町(旧・三石町)の下屋敷牧場。落札価格は3150万円。大阪の平井豊光氏が落札した。上場頭数は昨年より19頭減少し、落札頭数は同じく46頭。その結果、わずかに売却率が上昇した形である。

 また、落札馬の平均価格は、対前年比で77万6087円の増加。昨年と比較すると、一応の数字を残したことにはなるのかも知れないが、しかし20%前後の攻防では、まだまだ不十分と言わざるを得ない。なお、最低価格は、42万円。

二日目の雨の展示

 さて、その翌日17日は、1歳馬市場の初日である。この日は前日の晴天から一変し、北海道を気圧の谷に伴う前線が通過したため、午前中を中心に時折強い雨に祟られた。ただ、来場者は前日よりかなり多く、午後になって市場が始まる頃には雨も小降りとなり、やがて西の空から晴れ間が戻ってきた。

 この日の注目は、348番の「タカノセクレタリーの2006」(父、アグネスデジタル、牡)。二日前に半姉のカワカミプリンセスが秋華賞を制覇し、二冠馬となったばかりとあって、展示の時から衆目を集めていた。

カワカミプリンセスの弟

 結果はこの日最高価格の4882万5000円(税抜き4650万円)にて宮城県の菅原光太郎氏が落札した。もちろん残り三日間の結果を待たなければ分からないのだが、おそらくはこのセールを通じて、この馬が最高価格馬となるだろう。この馬には菅原氏以外にも複数のバイヤーが競りに参加し、激しいやりとりとなった。

 なお、1歳市場初日の成績は、185頭が上場され、56頭が落札。売却率は30.27%。売り上げ総額は3億135万円。これは、前年の1歳市場初日と比較すると、上場頭数で10頭増、落札頭数で11頭増、売却率で4.56%そして、売り上げ総額では何と1億6191万円もそれぞれ上回る成績である。かなりの好スタートと言っても良い初日となった。

 このままの状態を最終日まで保って欲しいところだが、さて18日の1歳市場二日目以降はどのような結果が待っているだろうか。

スリリングサンデー産駒高額馬

 ところでこの日、会場を沸かせた何頭かの馬の中に475番「ジャングルジュピター」という牡馬がいた。父はスリリングサンデー、母はインザジャングル(その父ヘクタープロテクター)。本馬の姉にダイキチムスメ(父タイキブリザードの6歳、中央3勝、小倉2歳S・3着。現在熊本公営にて現役)がいる程度で、他に目立った成績を挙げた兄弟馬はいない。しかも、父馬のスリリングサンデーは受胎確認後20万円、産駒誕生後で30万円(本年)という格安条件の新種牡馬である。現1歳世代がファーストクロップで、まだ結果の出ていない未知の魅力があるとはいえ、この馬の価格は活発な競り合いの末、1627万5000円(税抜き1550万円)まで急上昇した。

 本馬の魅力は、とにかく馬体の良さに尽きる。生産は新ひだか町(旧・三石町)の乾皆雄牧場。飼養管理者は、ハッピーネモファーム。ここはコンサイナーとして好成績を挙げていることで知られる。

 こういう「海老で鯛を釣る」ような会心の取引が最近はほとんどなくなっていただけに、この時ばかりは会場からため息さえ聞こえてきた。「スリリングサンデーだってさ、驚いたね」とでも言いたげな空気であった。だが、生産者にしてみれば、こんなことが(もちろんごく稀だが)あるからこそ、夢を捨て切れないものなのである。血統がすべてに優先するような取引ばかりを見せられていると、たまにあるこんなシンデレラホース? の出現に、ひどく感動してしまう。これは日高の普通の生産者にとっても十分に手の届く“配合”だからである。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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