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ばんえい帯広開催、始まる

  • 2006年12月05日(火) 23時50分
 かつてこれほどばんえい競馬が全国的に注目を集めたことはおそらくなかったに違いない。廃止報道が流れてから、一気にばんえい競馬を巡って熱い議論が展開されるようになり、今まさにそれがピークに達している。ネット上では廃止論はほとんどなく、圧倒的に存続を願う意見が多いが、「存続運動」という観点で見た場合、まだまだそのエネルギーを一点に集中できていないような気がする。存続運動の核になっている母体が果たしてどこなのか、実は私にもよく理解できていない。廃止反対を強く打ち出し、存続を勝ち取った笠松競馬場(岐阜県)の場合は、笠松愛馬会という名称の団体(厩舎関係者の夫人たちが中心の任意団体)が運動の原動力であった。“帯広愛馬会”のような組織をしっかりと作り、存続運動全体を統括するべきだと思う。ネット上での提言や議論も有益だが、有志の拠りどころが本当に必要である。これは東京でも札幌でもなく、やはり帯広に作るべきで、地元の方々の奮起をお願いしたい。

 さて、12月2日(土)より、ばんえい帯広開催がスタートした。廃止報道という逆境の中、この日は朝から多くのファンがつめかけ、盛んに声援を送っていた。

朝からかけつけたファンの方々 朝からかけつけたファンの方々

 この日、帯広地方は晴れのち曇り、夕方より雪。気温はさすがに低くほとんど真冬日に近いくらいだ。しかし、熱心なファンは寒さをものともせず、開放されている周回コースの直線部分までレースの度に足を運び、馬と人が一体となって坂を駆け上がる勇姿を見つめる。そしてレースの流れを追いかけて、観客がゴール板方向へと歩きながら移動する光景はまさにばんえいならではのものだ。

レース風景(坂を駆け上がる馬達) レース風景(ゴール前)

 ただし、12月2日〜4日までの3日間の開催が終わった段階では、入場人員はそこそこあるものの売り上げがやや足りないという印象である。書き入れ時の3日(日)でも、ついに売り上げは1億円の大台に届かずだった。帯広市の単独開催を選択する道しか残されていない現在、競馬場での盛り上がりは不可欠要素である。「こんなに多くの人々がつめかけ、ばんえい競馬を楽しんでいる」という印象を内外にアピールしなければならない。

競馬場屋内の様子

 12月中旬がリミットとも言われ、今週から来週にかけていろいろな動きがますます錯綜してくるだろう。

 誰かが交通整理をして、何とか存続運動を完全に“一枚岩”にしなければならない。

 ところで、帯広市議会HPによれば、12月7日より本会議の一般質問となり、計5人の議員が質問に立つことになっている。ここでどんな質問が発せられ、それに市長や市の幹部がどのように答弁するのか、ひじょうに気になるところだ。おそらく、議員によっては廃止すべしと主張する人も出てくるだろう。ぜひ帯広在住の方々は、この市議会の成り行きを現地で傍聴し、ご報告いただきたい。

 また、12月6日と7日の両日、札幌市大通西4丁目付近にて、ばんえい競馬存続のための署名活動を実施するという。主催は「ばんばを愛する札幌市民の会」(代表・古林英一・北海学園大学教授)。「田中さん、リッキー(ばんえい競馬のキャラクター)の着ぐるみ着て街頭に立ちまへんか?(←関西人なのでこういう言い方になる)」と古林教授に誘われたので、私もこの2日間は札幌に出かけお手伝いさせていただこうと思う。

 ちょうど寒い季節なので、「着ぐるみ」は防寒用にもってこいかも知れない。それに、顔を出さないので大胆に「呼びかけ」ができるような気もする。

 とにかく、平地とばんえいは、かなり異なる形態とはいえ同じ競馬というカテゴリーに属するいわば「兄弟分」である。ここであっさりと廃止の方向へ押し切られてしまえば、早晩、道営ホッカイドウ競馬はもちろん、各地の地方競馬に悪影響を及ぼすことになろう。何とか踏み止まって、ばんえい競馬の火を絶やさぬようにしたいと思う。ばんえい競馬の存続問題は決して対岸の火事などではないことを改めて強調しておきたい。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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