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2007年浦河神社騎馬参拝

  • 2007年01月09日(火) 23時51分
 1月2日、新春恒例の浦河神社騎馬参拝が今年も無事に行なわれた。
年末より暖冬傾向の著しい日高地方は、海岸線に限るとまったく積雪のない状態で新年を迎え、この日もまるで3月の早春の頃を思わせるほどの暖かさ。拍子抜けするくらいの暖気に、挨拶を交わす人々も「お正月気分が出ない」などと口々に言う。こんなに暖かい元旦は初めて経験した、と多くの人が感じるくらいの異常な暖かさである。

 さて、午前8時半に浦河町乗馬公園に集合したのは総勢約50人。馬運車3台に分乗し、まず西舎神社に移動してJRA日高育成牧場からやってくる乗用馬と合流。安全祈願の後、ポニーや道産子などは馬運車で、そして乗用馬は騎乗したまま隊列を組んで約10kgの道のりを浦河神社まで走る。

浦河神社騎馬参拝1

 今年の参加馬は、乗用馬10頭(うち石段駆け上がり不参加が2頭)、ポニーや道産子などが14頭、計24頭である。馬運車で移動した組は、浦河神社に近い場所で馬たちを降ろし、乗用馬の到着を待つ。一方の乗用馬は常歩や速歩で山を一つ越え、午前10時半頃に浦河神社に到着。折からの好天にも恵まれ、境内にはすでに多くの参拝客が集まり本番を待っている。

 101段の石段を前にして神主が祝詞を上げ、いよいよ乗用馬より駆け上がりが始まった。「上り」は比較的順調に進む。前の馬に続いて、8頭が次々に上の社殿まで駆け上がり、そこで馬上から賽銭を投げ入れ、簡単に一礼。そしてすぐに「下り」となる。

浦河神社騎馬参拝2

 馬も人間も恐怖感を味わうのはこの下りである。足元を気にして、なかなか一歩が踏み出せない馬をなだめながら、度胸のある馬から順次石段を降り始める。毎年、ヒヤリとするのがこの場面だ。慣れた馬ならば基本的には単独で降りて行くが、石段の途中で足がすくんでしまったりすれば人間が手綱を取って介助することになる。参拝客はその様子を固唾を呑んで見守る。無事に下まで降りて行くと、期せずして「おーっ」という歓声や拍手が起こる。

 乗用馬の後は、近くで輪乗り状態のまま待機していたポニーたちの出番である。騎乗するのは小中学生ばかり。こういう行事で子供が登場すると場内の空気は和む。14頭が一列になって次々に上の社殿目がけて駆け上がる様はなかなか壮観だ。

浦河神社騎馬参拝3

 上で賽銭を投げ軽く一礼してすぐ下りになるのは乗用馬と同じで、やはりポニーも度胸のある慣れた馬から降り始める。数頭が途中で降りるのをためらったり、少しだけ暴れた場面もあったが、今年もどうにか無事に全馬が石段を下って予定通り終了した。

 今年で騎馬参拝は97周年だそうである。100周年まで後3年。歴史の短い北海道で、こんなに長い間続いている伝統行事は珍しい。しかも次代を担う多くの子供たちが石段の駆け上がりに挑戦する光景は、やはり絵になる。

浦河神社騎馬参拝4

 今後は狭い境内でいかに参拝者の安全を確保するか、はもちろんのこと、石段を駆け上がる人馬へのサポート体制もより完璧にすることが求められる。「もっと下がって下さい」と連呼する地元警察は「何かあったらその時点でこの行事は中止せざるを得ないですからね」とも付け加える。事故発生だけは何としても避けなければならない、という断固とした姿勢である。

 同時に、お正月恒例のこの行事をもう少し効果的に演出する必要もあるだろう。大小合わせて22頭もの駆け上がりは迫力満点で、現状では地形的な制約が大きいことから見学スペースを広げることが難しいのだが、何とかして「見せるための工夫」ができないものか、とも思う。

浦河神社騎馬参拝5

 そして、この行事を裏方で支えるのは、多くのボランティアであることも忘れてはならない。元旦早々から馬や馬運車を提供し、家族総出でこの行事に協力する牧場関係者がいてこそ伝統が守られて行くのである。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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