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中央722勝、地方2211勝

  • 2007年01月30日(火) 23時49分
 このほど、平成18年度(1月1日〜12月31日)のBTC(軽種馬育成調教センター)利用馬のデータが発表された。それによれば、昨年度、同施設を利用して調教を行なった馬は、一日平均で503頭。内訳は滞在馬66頭、日帰り馬437頭となっている。平成5年10月に調教場がオープンして以来、確実に利用頭数が増加し続けており、今では日本の競馬を下から支える不可欠の存在になった。

BTC調教風景1(06年9月)

 ここはJRAの外郭団体、(財)軽種馬育成調教センター日高事業所が正式名称である。「強い馬づくり」のため、総面積1500町歩という広大な土地の中に様々な調教メニューに応じた各種の施設を有する。今の時期は屋内施設が中心だが、直線のウッドコース1000mやダートコース600m、及び、昨年12月1日に延長工事が終了し1000mとなった坂路コースなど、バラエティに富んだ調教が可能である。

BTC調教風景2(06年9月)

 施設内にある108の滞在用馬房は原則として日帰りの難しい遠隔地の牧場が優先的に利用できることになっている。定期的に「入れ替え」があり、遠隔地からの利用申し込みが少なければ、地元の育成業者でも馬房が貸与される。前述した滞在馬というのは、この滞在用馬房を利用している馬を指す。

 一方の日帰り馬。これは文字通り、外部からこの施設に「通ってくる馬」のことで、通い方は大きく分けて二通りある。一つは馬運車、もう一つは騎乗したまま徒歩でやってくる方法だ。騎乗したまま徒歩で通ってくる馬は、BTCに隣接した民間の育成牧場に滞在している馬たちで、合計5箇所設けられているゲートからこの施設内に入場する。

 近年はこの隣接した場所で暮らす「日帰り馬」が激増し、その分、BTC内の滞在馬がやや減少しつつあるとも聞く。理由はいろいろ考えられるが、その最大の難点は年間を通じて一定数の馬房を確保できない(申し込みにより抽選、割り当てとなる)点であろう。滞在馬房も隣接地にある賃貸馬房も、“家賃”はさほど変わらないため、どうしても馬房数の確保という観点から考えると民間施設に客が流れてしまう側面は否定できない。

 ところで昨年、この施設利用馬は、JRAで722勝、地方競馬で2211勝を挙げたという。これは開場以来もっとも好成績であり、それぞれJRAで54勝、地方で222勝、前年よりも数字を伸ばした。

 この数字だけを見ると、圧倒的に地方競馬の勝ち鞍が多いのだが、施設利用馬の大半は中央競馬への入厩馬である。それでは、なぜこのような“逆転現象”が起こるのかというと、地方競馬の勝ち鞍は、ほとんどが「中央下がり」によってもたらされた数字なのだそうだ。つまり、JRAの登録を抹消された後、地方競馬に移籍した馬たちが稼いだ勝ち鞍だという。

 その辺りについて、BTCの井村勝昭・日高事業所所長はこうコメントする。「私たちは、もちろん中央も地方も同じ競馬として等しく考えておりますが、ここの施設利用馬が、ここでの調教を経てもっとも能力を発揮する場面は、まず中央の新馬戦だと考えています。従って、もちろん年間を通じて地方で2211勝、中央で722勝も挙げたことは大きな喜びには違いありませんが、その中でも特に注目しているのはデビュー戦です」と。

 地方競馬の成績は、直接的にBTCでの調教による効果を判定しにくいため、この2211勝に関してはあくまで参考成績扱いなのかも知れない。

 開場以来、昨秋で満13年が経過したこの施設は、今や日本の競馬を語る上で避けて通れない存在になっている。なお、昨年のJRAにおける重賞勝ち鞍は全部で21勝。うち、GIは2勝(カワカミプリンセスのオークス、秋華賞)である。一昨年は20勝を挙げた。今年はどれくらいの結果を残せるか、注目して行きたい。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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