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静内地区合同展示会

  • 2007年02月27日(火) 23時49分
 27日(火)、静内地区の合同種牡馬展示会が開催された。さすがに2月も終わりに近づき、曇天ながら微風でいくぶん暖かさを感じるような気候。条件としてはまあ悪くない。

 静内は、依然より少なくなったとはいえ、現在でも桜並木で有名な二十間道路の両側に種馬場が並ぶ。この日は三箇所の種馬場がぞそれ時間調整をして、まず午前10時に「JBBA日本軽種馬協会静内種馬場」、そして40分後に「アロースタッド」、さらに「レックススタッド」というスケジュールである。

 昔のことを書いてもしょうがないのは承知しているが、この他にこの界隈にはかつて「静内スタリオンステーション」や「静内種畜牧場」「静内牧場スタリオンセンター(後のCBスタッド)」などがそれぞれ複数の種牡馬を繋養していた。それこそ大変な「種牡馬銀座」でもあったのだ。名前も似ているので、ずいぶん誤解や混乱があったと聞く。目指す種馬場を間違えて行ってしまった生産者もいたというし、桜の季節に(これは現在でも時々見られる)大渋滞が発生し、予約の時間に種馬場へたどり着けなくなった生産者などは数知れずいたそうな。

 さて、午前10時。定刻通りにJBBAの展示会が始まった。ここで展示されたのは計10頭。目玉は今年より供用開始の「ロックオブジブラルタル」と「デビッドジュニア」の2頭である。種馬場内には展示用のパレードリングが設置されており、見学者はその楕円形を囲んで陣取る。約300〜400人もいただろうか。

 当然、見学者たちは最初に新種牡馬の2頭が出て来るものと期待して待っていたが、JBBAもそのあたりは一計を案じて“後回し”にした。ボストンハーバー、チーフベアハート、サイレントハンター、シルバーチャーム、ストラビンスキー、バゴ、オペラハウス、フォーティナイナーなどが登場。ただし1頭あたりの展示時間は短く、簡単にプロフィールを紹介した後、軽く周回をさせてすぐ次の馬と交代した。

デビットジュニア

 いよいよ、デビットジュニア、そして最後にロックオブジブラルタルが登場した。社台のディープインパクトやダーレーのファンタスティックライトに対抗して日高勢の今年の超目玉がこの馬である。ミルリーフの記録を破るG1・7連勝はヨーロッパにおける近年の最強マイラーという評価を裏付けるもの。すでに昨年のうちに配合する繁殖牝馬は厳選され決定している。種付け料420万円はもちろん民間の相場よりもかなり安価な設定である。

ロックオブジブラルタル

 ただ、同馬はあくまで「リース契約」であり、昨年よりデビューしている産駒の今後の活躍如何でまたすぐ舞い戻ってしまう可能性も高い。とはいえ、生産地での人気はかなり高く、昨年秋の申し込み頭数は485頭に及んだ。最終的には130頭が合格し、今年度、配合を行なう予定である。暮れに発表されたリストを見ると、名前の知られた名牝がずらりと並ぶ。日高の生産者がこの馬に寄せる期待の大きさがよく分かる。

 しかし、その一方で依然としてネックになっているのは、JBBAの「種付け料前払い制度」だ。不受胎の場合には全額返還されるとはいえ、今の時代、受胎確認後の支払い方法にどうして変更できないのか、という不満が燻ぶっている。もし、後払いならば、もっともっと配合牝馬頭数が増えるはず、と指摘する声もある。

 だが、この問題はかなり根が深く、JBBA側だけの問題ではなく、言うならば生産者側にも原因がある。「約束をきっちりと守れるのかどうか」という問題なのである。受胎確認後、9月末もしくは10月末までの支払い期限を厳守できますか? と生産者が問われているのだ。

 どこの種馬場でも種付け料の未収はかなり深刻な問題で、一部には、「受胎確認後」の支払い条件であっても牡馬が生まれたことを確認してからようやく支払うという例や、中にはもっと先送りして「売れてから種付け料を支払う」という“つわもの”もいる。牝馬が生まれたら「間引き」してフリーリターン制度を利用しまた同じ種牡馬を配合するという極端な事例もあるのだそうだ。

 受胎確認後の支払い条件ですらそんな問題が浮上するくらいだから、前払いではどうしても申し込み状況にばらつきが出てくる。昨年、導入されたストラビンスキーやバゴなどはまだ頭数に余裕があり、配合申し込みを受付中である。JBBAでは遠隔地からの配合申し込みにも対応すべく「種付け牝馬輸送費助成事業」にも取り組む。例えば東北から静内種馬場まで繁殖牝馬を輸送する場合には13万円が助成される、というように。しかし、最大のネックはやはり種付け料の前払い制度にあるという以外にない。この制度のために、種付け料を調達できなかった生産者がせっかくの配合権利を放棄してしまう例も少なくないというし、こういうところにも末端の生産者の窮状が現れている。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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