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ばんえい競馬、その後

  • 2007年03月13日(火) 23時46分
 去る3月4日(日)深夜、フジテレビ系列の民放である北海道文化放送(UHB)にて、ばんえい競馬の特番(巨神たちの逆襲〜ばんえい競馬成功への扉)がオンエアされた。ここで主役を演じていたのは、ばんえい競馬唯一の女性調教師である谷あゆみさん。番組は谷さんを追いかける形で進行し、後半は帯広競馬場内で座談会も行なわれた。

 この座談会は、先ごろ帯広市の「とかちプラザ」で開催されたシンポジウムと重複する部分も多く、出席者が何人か入れ替わったことを除けばほぼ前回のシンポジウムにて取り上げられたような内容の改革案がまたここで再度話し合われたとの印象が強い。そのこと自体は決して無駄だとは思わぬが、そろそろ来月末からの新生ばんえい競馬がどのように運営されるのか、あるいはもっと端的に言うと、帯広競馬場はどのように変わるのか、という情報をファンは待ち望んでいるように思う。

ばんえいの朝の調教風景

 ところが、その「どう変わるのか」という部分がまだ具体的に見えてこない。現時点で明確になっているのは、新年度の開催日程と、4割カットされる賞金、出走手当などの金額だけである。最低賞金は確か15万円→10万円に、そして出走手当は4万4千円→2万5千円に、それぞれ減額されるということは報道で知ったが、肝心の競馬場を後一か月半の期間にどのくらい「リニューアル」する予定なのだろう。

 3月末までは現体制(北海道市営競馬組合)による開催が続くため、ある種の遠慮もあって今の時点で新生ばんえい競馬の具体的改革案を発表できないでいる、ということなのか。それとも、まだ決定していないことが多いということなのか。

 開催日程の発表とともに、6月から9月までのナイター開催実施は早々に明らかにされた。大変結構なことだとは思う。帯広の夏は内陸性の気候特有の暑さである。集客力や話題性など考えるとナイター化は確かにある程度は有効だろう。

ばんえいの朝の調教風景

 ただ、ここで疑問が一つ湧いてくる。ナイター化に伴う様々な初期費用(照明など)を負担するのはどこか、ということである。ナイター関連に限らず、競馬場の美化についても然り。また「(夏季限定?)観客席にバーべキューの出来る場所をみんなで作りたい」というソフトバンクプレイヤーズ社長・藤井宏明氏の発言なども伝えられるが、こうした一つ一つの改革には資金が当然必要になる。それは帯広市が負担するのか、またはソフトバンクプレイヤーズ社が資金提供するのか、あるいは帯広競馬場を所有する十勝農協連が用意すべきものなのか。藤井社長の「みんなで作りたい」という言葉には、どんな意味が込められているのだろうか。どうも外部にいるとそのあたりが現時点ではまったく見えてこないのだ。

ばんえいの朝の調教風景

 「キーワード」となっている「全員参加型」「みんなで作るばんえい競馬」の意味するところは、言うまでもなく帯広競馬場を核として、ファン、主催者、厩舎関係者のみならず、帯広市民や十勝管内の住民、さらには北海道人みんなでこの北海道遺産を守って行こうというものだろう。ここで、とりわけ重要な立場に立つのは実際に帯広にお住まいの方々である。地元の人々の熱い支持が絶対に必要であるとともに、ネームバリューのある十勝を本拠地にしている企業などからの支援や協力がもっとあっても良い。

 例えば、十勝には有名なお菓子メーカーがいくつもあり、千歳空港などでそれらをお土産に買い求める人がたくさんいて、人気が高いらしい。当然、そうしたメーカーの直売店などが競馬場内にあれば、遠方からここを訪れた競馬ファンのみならず、女性客や子供連れの家族客などにも喜ばれるだろう。この手の改革案は今までずいぶん様々な人から提案されており、いわば「すぐにでも着手できる」事柄だと思うが、具体的にはまだ何も伝わってこない。ということは、まだそんな予定がない、ということなのか。

 秘密主義に徹して、4月27日に予定されている新生ばんえい競馬の開幕日に、実は誰もがあっと驚くような趣向が用意されているというのならば本当にいいのだが…。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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