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群馬で初のトレーニングセール1

  • 2007年04月10日(火) 23時48分
 4月9日、群馬県伊勢崎市にある境共同トレーニングセンターに行ってきた。先週この欄でお伝えしたように、今年初めての2歳馬トレーニングセールがここ群馬県で開催されることになっていたからである。

 群馬県にとってもサラブレッド市場そのものがたぶん初めて開催されることになる。高崎競馬場の関連施設として機能していた旧境町トレセンが現在は民間の育成牧場に様変わりして再出発しており、その様子を自分の目で確かめたいという気持ちもあり、思い切って飛行機に乗った。

 境共同トレセンは東京からだと上越・長野新幹線で本庄早稲田(埼玉県)で降りてタクシーか、高崎まで行って在来線(JR両毛線)に乗り換え伊勢崎まで移動しそこで下車してタクシーか、このどちらかのようだ。浅草から東武伊勢崎線に乗るルートもあるらしいが今回は新幹線を使った。問題はむしろ本庄早稲田にしろ伊勢崎にしろ降りてからがやや不便というところにある。いずれもやはりタクシーに頼らざるを得ない地理的条件で、そうした事情に配慮してこの日主催者(境共同トレーニングセンター株式会社)では本庄早稲田から往復2便ずつの無料バスを用意していた。そうでなければ、同じルートをタクシーで移動すると(現にそうした知人がいた)4〜5千円程度の走行運賃を覚悟しなければならない。これはちょっと痛い出費だ。

 さて、前日夜に高崎入りし、同行した斎藤宗信氏(馬市ドットコム管理人)と9日早朝に伊勢崎駅に到着。そこで偶然にも、グリーンチャンネルでキャスターを務める坂田博昭氏を迎えに来ていた知人と会い、その車に便乗させてもらうことになった。

 坂田氏はこのセールの進行役として東京から駆けつけたのである。なお、後述するが北海道からも同じく進行役要員として(株)ジェイエスの社員が二人このセールのお手伝いをするために来場していた。多くの人々がセールの成功のために動員されている印象であった。

セール会場看板

 伊勢崎市境上渕名というのがこのトレセンの正式地名である。伊勢崎駅より車で約15分。県道2号線に面し、周囲は倉庫や工場などが点在する開発の進んだ都市近郊の農村風景とでも言えば良いか。境共同トレセンはその昔、高崎競馬場の在厩馬が全てここに入厩していた関係上、施設自体はかなり広い。入口から奥に向かって進むと、左手前にかつての厩舎関係者用アパートが6棟(現在は使用していない)並び、その奥に厩舎村が広がる。道路の右手には一周1200mのダートコースがある。トレセンとしては現在約200頭前後がここにいるという。北関東の地方競馬で働いていた人々の一部がここで育成牧場を開業し、施設をトレセンから賃借する形である。全体では800余の馬房数があるので、実際に使用されているのはそのうちの約4分の1程度だが、周知の通り、昨年よりここは大井競馬場の認定外厩としても利用されている。交通至便とは言いがたいにしても、それを補って余りある利用価値が認められたということなのだろう。育成牧場の必需品とも言うべきまだ新しそうなウォーキングマシーンも2機、設置されていた。

購買者(見学者)

 セール会場は厩舎群と馬場の間にある広場に設置されていた。大型テントが用意され、購買者(見学者)スペースは風雨が凌げるようになっている。その横には休憩所も設けられており、食事の時間にはそこが満杯になった。セールを進行する鑑定人のお立ち台やパレードリンクなども北海道の市場などで見かけるのと同じものが作られており、やはりここにも多くの人々のアドバイスや援助があったことが窺えた。初めての試みというのはとかく慣れぬことだらけで戸惑いの連続だったはずだが、何とか盛り上げて行こうという主催者の意気込みだけは十分に伝わってきた。

 受付で配布された上場馬名簿は全馬カラー写真入りの立派なものだ。上場予定馬は31頭。この程度の数ならば立ち写真を全馬掲載できる。1頁ごとの個別データも北海道で開催される市場と変わらない。

 午前9時。場内アナウンスが流れ、騎乗供覧の開始時間になった。基本的に2頭ずつの併せ馬で向こう正面から徐々に速度を上げ始め、計時は2Fと1Fの二本立てである。これも後で分かったことだが、タイム計測員は(株)ケイシュウのチーフトラックマン清水氏他2名だったそうである。ここでも東京から応援部隊が駆けつけ、セールの舞台裏を支えていたのだった。なお、この騎乗供覧のために馬場の横には仮設の見学スタンドが設置されていた。

併せ馬

 騎乗供覧は全部で16組。急遽馬場入りできなくなった馬がいたり、また順番に変更があったり、2歳馬のトレーニングセールにありがちなハプニングが起きる。その都度スタッフは対応に追われる。だが、その最たるものが騎乗供覧第1組に登場した牡馬に故障が発生してしまったことだ。騎乗者が下馬した後も相当な跛行の様子だったので、かなりの重症だろう。こういうアクシデントもまた避けられないのがトレーニングセールなのである(以下次号)。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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