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群馬で初のトレーニングセール2

  • 2007年04月17日(火) 23時47分
 境共同トレセンのトレーニングセールについての続報を…。

 赤城山麓は天候が急変することがあるらしい。地元の方が雑談でそう口にしているのを小耳に挟んだ。午前11時より比較展示が行なわれ、全30頭が2組に分かれて登場したが、第1組の展示が行なわれている頃より、空模様がかなり怪しくなってきた。この日の予報によれば曇り一時雨などとなっている。案の定、比較展示の第2組が揃った頃に雷が鳴り始め、ほどなく雨が降り始めた。

傘をくばる関係者

 天気予報通りとも言えるのだが、ここで来場者は大半がテントの中に避難し、驟雨が通り過ぎるのを待つことになった。その時、主催者は迅速に対応し、雨の降り始めたのを確認するや否や、すぐさま使い捨ての雨具(ビニール合羽)と傘をどこからか運んできて、来場者に配布し始めた。声を枯らして「合羽を用意してありますのでどうぞお使い下さい」と連呼する。天候の急変は自然現象ゆえにどうしようもないわけで、むしろこういう時にどれだけ機敏な対応ができるかが来場者の印象を左右する。これはなかなか見事なほどのタイミングだった。

 通り雨だったらしく雨雲は30分ほどで流れて行き、また雲間から日差しが戻ってきた。そしてセリの開始時刻にはすっかり晴天となった。

セリの始まり

 いよいよセリが始まった。1頭欠場で30頭の上場である。北海道から駆けつけた(株)ジェイエスの社員と前回触れたグリーンチャンネルの坂田博昭氏の3人が鑑定台に並んでセリを進めて行く。大型テントに用意されたパイプ椅子はほぼ埋まり、さっそく最初の馬が登場した。

 購買者登録を済ませているのは計57人。上場頭数の方が少ない計算になるが、今年最初のセールのためか、または“本気度”の不足している購買者が多かったのか、それとも気に入った素材が少なかったせいか、セリ自体はやや低調に推移した。

 価格が伸び悩む馬、一声かかっても、そこからせり上がらぬ馬がほとんどで、とても活発な取引とは言いがたい印象であった。30頭中、落札が11頭。売却率は36.7%。しかも、この11頭中、確か5頭が“再上場”の馬たちなのだ。

上場馬1

 再上場は、北海道の市場でもよく見かける。一度セリにかけられた馬が「主取り」になり、その後、価格を下げて再度上場することである。その際には、特定の購買者が販売申込者と価格交渉を済ませているのが普通で、例えば最初の上場で500万円のお台付け価格で主取りになった馬ならば、再上場の時には400万円というように、価格は値下げされて出てくる。多くの場合、最初の上場価格が販売申込者の希望最低価格と考えられるので、やはり「もう少し欲しかった」という取引がほとんどだろう。

 最高価格馬はジャングルポケットの牡馬「トーヨートーヤコ2005」で、1800万円(税抜き)。新冠町の川上牧場の生産。販売申込者は(有)大作ステーブル。落札は東京都・坪野谷和平氏。その次に高額だったのは「マヤノロワール2005」(牡、父マイネルラブ)で1300万円(税抜き)。こちらも新冠の川上牧場の生産。販売申込者は地元伊勢崎市の松川ステーブル。この馬は騎乗供覧で最後の1Fが11.6秒と30頭中最速の時計を記録していた。

上場馬2

 なお最低価格は180万円。次に200万円。ともに牝馬だが、グランデラとバブルガムフェローを父に持ち、ここまでの調教費用など考えると、むろん赤字である。ただ、ここで売っておかなければさらに赤字幅が増大することは必至で、販売申込者(生産者)としては苦い決断をするしかないのである。

 全体としては取引総額7180万円(税抜き)で、もう少し売れるかと思っていたが、多くの購買者にとってはまだ模様眺めという段階なのかも知れない。

 さて全体を振り返ると、思ったほど価格や売却率が伸びなかった反面、運営に関しては、予想よりも遥かに円滑だったと思う。ただ、一つだけ敢えて今後のために苦言を呈すると、昼食についてはかなり不満が残った。購買者もスタッフも関連団体(例えば、JRAやJBBA、または北海道からもHBAなどの視察団が訪れていた)の関係者もみんな同じ弁当を配る、というのはちょっと芸がない。費用の問題もあるとは思うが、飲食はもう少し工夫が求められるところだ。もう今の時代、昼食時にありふれたお弁当を貰って大喜びするような来場者はほとんどいまい。もうちょっと気の利いたメニューが欲しかった気がした。

 ともあれ、主催者は「ぜひ来年も開催したい」と意欲的である。上場馬の質と量をいかに確保するか、難題も多いが、今後に期待したいと思う。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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