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新生ばんえい競馬、開幕

  • 2007年05月01日(火) 19時31分
 約1か月の準備期間を挟んで、4月27日(金)、帯広の新生ばんえい競馬がいよいよ開幕した。ボランティアや厩舎関係者などがスタンドのペンキ塗りを実施したり、従来はスタンド裏手にあったパドックを正面のゴール板付近に移動したり、この1か月間に出来ることから少しずつ変えて行こうという主催者の意気込みが連日のように地元紙で報じられ、それがかなりの“追い風”になったことだけは確かだ。

入場門

 今春より、ここ帯広での通年開催となるばんえい競馬。従来、北海道内4か所を転戦するジプシー開催だったのが、ここ帯広に根を下ろし、この地で春夏秋冬を過ごすことになる。これまでとはまったく比較にならないほど地元との強固な連携が不可欠なのである。

 29日(日)、私もさっそく若い友人二人とともに帯広競馬場を訪れた。午前10時過ぎに競馬場到着。まず入場門から見えるスタンドが、きれいに化粧直しされているのが分かる。入場券(100円)を買うと、驚いたことに来年3月まで有効の「招待券」がもらえた。ということは、今後一年間は「無料」で入場できることになるわけだ。目先の入場料収入には目をつぶり、招待券でリピーターを増やそうという意図だが、最終的には「損して得取る」効果が期待できそうだ。

入り口

 入場門を入ると、入り口には騎手や調教師などが一生懸命入場者に挨拶をして、企業協賛のグッズなどを手渡している。冬の開催から見慣れた光景とはいえ、「お客様を暖かく迎える」姿勢が厩舎関係者にも完全に定着している。まだ1レースの発走時間に間があったので場内を一周してみた。スタンド内部は床と壁が明るくなり、さらに分煙化対策が徹底している。喫煙者用スペースが扉で完全に仕切られているが、決して場内の一角に隔離された小部屋ではなく、かなり縦に長い。もともと喫煙率が高い(と思われる)競馬場で、あまり愛煙家に制限を加えるとかえってファン離れに繋がってしまうことから、いかに無理なく喫煙席と禁煙席を上手に分けるかということに相当知恵を絞ったのだろう。帯広の今回の措置はかなり上出来と評価したい。ほぼ完全に“棲み分けられている”と思った。分煙化が完璧に守られているため、スタンド内をくわえ煙草で歩くような人はおらず、ずいぶん空気が良くなったことは確かだ。

馬券売場

 やがて1レースに出走する馬がパドックに入ってきた。前述のように、パドックはスタンド前方の左手に移動してきた。まだ周囲をすり鉢状に段差をつける工事は行なわれておらず、そのために人が群がるとやや見づらい。だが、パドック〜入場〜レースの流れが短縮され、ファンはスタンドの裏と正面を移動する必要がなくなった。

馬車 馬場入り

 それにしても、この日はかなり好天に恵まれ、しかも温暖。そのせいもあってか、午前中から多くのファンがつめかけ、最終的には3288人もの入場者を記録したという。カップルや家族連れも多く、場内をリッキーの牽く馬車が巡回し、さながら競馬場が一大レジャーランド化したような印象があった。企業協賛レースの申し込みも多いというし、この日は富良野緑峰高校吹奏楽部の生徒17名がメーンレースのファンファーレを演奏するために競馬場にやってきた。前日28日には「フサイチ」の冠名で知られる関口房朗氏が来場し、全レースに協賛する力の入れようだったという。とてもいい形でスタートが切れたとまずは言っておこう。

吹奏楽部

 ただし、である。いくつか気になる点を挙げておきたい。まずは入場者の割に売り上げが伸びていないこと。27日(金)が1851人(本場)で7477万円、28日(土)が2219人で7657万円、そして29日が前述の通り3288人で8970万円。因みに前回帯広を訪れたのは「ばんえい記念」が行なわれた3月25日のことだが、その日は3418人の入場者で1億7711万円の売り上げだった。入場者数ではほぼ、ばんえい記念当日に匹敵するほどなのに、売り上げが約半分しかないのは何とも気になる。今後は入場者一人当たりの馬券購買単価をいかに上昇させるかが課題となろう。

本場馬

 また、馬券売り上げとも密接に関連することだが、入場する前に購入した予想紙を一瞥し改めて感じたのは、削減された本賞金の低さである。この日、全12レースのうち、11レースが「1着賞金10万円」であった。2着2万円、3着1万2千円、4着8千円、5着5千円。メーンレースでも1着20万円。1着賞金が低いのに加えて、いわゆる「145%方式」の賞金割合である。「売り上げ増が実現すれば本賞金もそれにスライドし増額される予定」とも聞くが、やはり、ばんえい競馬を守って行くためには、せっせとファンが馬券を買い続ける以外に特効薬がないことを改めて痛感させられる。「いかに馬券を売るか」は、今や中央と地方を問わず、全ての競馬に共通した最大のテーマで、公正を確保しつつ白熱したレースを展開するにはまず必要最低限の売り上げが担保されていなければならない。開幕したばかりの今はまだ不平不満が漏れて来ないだろうが、1着賞金10万円という水準はできるだけ早期に改善したいところだろう。いずれにせよ、帯広にはまた定期的に通うつもりでいる。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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