スマートフォン版へ

九州、千葉のトレーニングセール

  • 2007年05月15日(火) 23時49分
 5月は毎週のように2歳馬のトレーニングセールが開催される。厳密に言えば、JRAのブリーズアップセール(4月23日)に始まり、6月末のHBA(於札幌競馬場、6月25日)まで、全国を縦断して開催されるのだ。今年はそれに群馬県(境共同トレセン)でのトレーニングセールが加わったため、より一層めまぐるしくなった。

 5月7日は九州・宮崎で「九州トレーニング2007」が開催され、上場馬24頭(牡9、牝15)のうち、落札は11頭(牡5、牝6)、総額1660万500円(税込み)という結果に終わった。33頭が上場され20頭で4399万5千円を売り上げた昨年の成績から比較すると、かなり数字を落としたことになる。現地に行っていないので各報道や市場関係の情報をいち早くアップしている「馬市ドットコム」(齋藤宗信氏が運営、管理)などから結果を知るより手段がないのだが、それにしても、この落ち込みは気になる。上場馬の少なさに伴い、購買者登録数も昨年と今年とではかなり数字が違っていた(昨年33名、今年16名)というし、今後の課題としては「いかに上場馬の質量を向上させられるか」にかかっていよう。温暖な九州の気候を最大限に生かせば、もっと2歳馬に関しては「売れる市場」に変えられるはず、と指摘する声が大きい。

 何より気になるのは一昨年(2005年)には64頭も上場馬が集まり46頭で8578万円余を売り上げていたこと。これから2年間で急速に上場頭数も落札頭数も(もちろん売り上げ総額も)急降下してきているのはいったいどこに原因があるものか。ぜひ“地の利”を生かした2歳馬市場を充実発展させて欲しいと思う。

 さて、その一週間後、千葉県船橋市の船橋競馬場を舞台に「千葉サラブレッドセール2007」が開催された。
こちらは上場59頭(牡37、牝22)で落札が36頭(牡23、牝13)、総額3億8304万円を売り上げた。売却率は61%。因みに昨年は53頭の上場で39頭の落札、3億8025万円余の売り上げで、売却率は73.6%。今年は総額こそ微増だが、売却率は10ポイント以上の落ち込みとなった。なお、この市場の最高価格馬は22番「Lady’sLegacy2005」の5600万円。浦河に本場のある(有)吉澤ステーブルの上場馬で、この日現地にいてセリを見守っていた同牧場の関係者はこの価格で落札された直後感涙に咽ぶ光景が見られたという。“仕入れ価格”も決して安くないのに加え、故障のリスクと隣り合わせで調教を進めてトレーニングセールにまで持って行く過程を考えると、その気持ちは十分に分かる。1歳市場とは異なり、格段にリスキーなのがトレーニングセールなのだから。

 ところで、私にとっても千葉の市場は“所有馬”が上場されたので他人事などではなかった。余談になるが、5番「ヒャッカリョウラン」(父マーベラスサンデー、牝)という馬を昨年のオータムセールにて仲間内で購入し、新冠町の大作ステーブルに預けて調教を進めていたのだった。

 名義の筆頭は齊藤宗信氏(馬市ドットコム)。オータムセールにおける購買価格は150万円。ビッグレットファームの上場馬だったこの馬を落札し、共同所有することになったのである。千葉でのお台付け価格は400万円。残念ながら主取りに終わったが、市場後すぐオファーがあり、いくらも値引きせずに売却できたと聞いた。

 現地に赴いて市場の模様を自分の目で見たかったのだが、如何せん仕事の都合がつかず千葉行きを断念せざるを得なかった。現地での詳細な市場レポートは、九州も千葉も、そして先月開催されたJRAブリーズアップセールも群馬も、現時点では「馬市ドットコム」が最も充実している。写真も豊富で鮮明なことや個別の落札馬情報にも詳しいことなど、今このサイトに勝るものはちょっと見当たらない。しかもアップが早いのでかなり重宝である。今後しばらく生産地では各種の市場が頻繁に開催されるが、速報はここがたぶんもっとも早く詳細である。

 さていよいよ来週は浦河にて「ひだかトレーニングセール」が二日間にわたり開催される。次回はその模様をお伝えする予定だ。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング