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苦戦のひだかTS

  • 2007年05月22日(火) 23時49分
 5月21日と22日の両日にわたり、JRA日高育成牧場(浦河町西舎)を会場に「ひだかトレーニングセール」(主催・ひだか東農協)が開催された。上場申し込みが増えたため、今年は開催を二日間に拡大し、計168頭がエントリー。この中には先月(24日)阪神競馬場にて開催されたJRAブリーズアップセールで売れ残った馬や上場を見合わせた馬などの11頭も含まれる。

公開調教1

 昨年、このセールはかなりの好成績を残した。111頭が上場され、68頭が落札。合計5億1046万8千円を売り上げ、売却率は61.3%を記録した。父ボストンハーバー、母クリスティキャットの牝馬が3885万円という最高価格馬で、以下、父アグネスタキオン、母ミオツクシの牡馬が3150万円。続いて2730万円、2215万5千円と2000万円以上の取引馬が4頭出た。加えて1000万円以上の取引馬も12頭おり、悪天候にもかかわらずかなり活発な市場であったという印象がある。

公開調教2

 そうした流れは当然今年の上場申し込みにも及び、前述の通り、多頭数のエントリーとなったことから、やむなく開催を二日間に延長した。昨年、このセールの前日に札幌競馬場にて開催された「北海道トレーニングセール」が、今年は1か月ずれた(6月25日)ことにより、二日連続の市場が実現することになった。

特設スタンド

 しかし、結果を先に書くが、大方の予想を裏切り、今年のセールはかなり厳しい結果に終わった。

 初日(21日)は、牡46頭、牝30頭の計76頭が上場され、落札は牡20、牝17の計37頭。売り上げは2億8996万8千円。売却率48.68%。

 そして、二日目(22日)はさらに数字が落ち込み、牡38頭、牝36頭の計74頭が上場。落札は牡17、牝12の計29頭。売却率は39.19%に終わった。

 その結果、二日間を通しての合計は、上場が150頭、落札が66頭。売却率は44%ちょうど。昨年よりも何と一気に17ポイントもの落ち込みである。また、売り上げ合計は4億8663万3千円。上場頭数は対前年比で39頭も増加していながら、落札はむしろ2頭減少し、売り上げの合計金額も2383万5千円のマイナスとなった。平均価格は737万円余。これは昨年(750万余)よりも微減に止まったのだが…。

 なお、最高価格馬は牡が5番「イブキピンクレディーの17」の2257万5千円、そして牝馬は49番「チョウカイマリーンの2005」で2205万円。ともに新進のマンハッタンカフェ産駒というのも偶然ではないような気がする。このセールにマンハッタンカフェ産駒は計4頭登場し、完売した。この2頭以外にも630万円の牝馬、1365万円の牡馬がおり、4頭で6457万円余を売り上げた。

最高価格馬

 それにしても、いったいこの落ち込みの原因はどこにあるのだろうか? 二日間とも絶好の好天に恵まれ、春らしい陽気の下、午前中の公開調教から比較展示、そして午後のせり本番と、流れはあくまでスムーズ。少なくとも進行上の問題はなかったように思う。また上場馬の質や量にも大きな要因があったとは思えない。

 ならば、それ以外の何が原因なのか。「どうにも活気に乏しい」「激しく競り合うような馬が少ない」「お台付け価格とバイヤーの付ける価格が合っていない」場内を埋めた多くの人々がこうした沈滞ムードを一様に感じながらも、せりはどんどん進行した。とりわけ売却率の低下した二日目は、ほとんど白けた空気が漂うくらいの時間帯もあり、場内は途中から空席が目立つようにさえなった。
場内風景

 「BTCを利用した密度の濃い調教を積んだ素質馬が多く上場されるレベルの高いトレーニングセール」これがたぶんこのセールのセールスポイントなのだろうが、今後、この路線を突き進むためには、もう日高の生産者が当歳から1歳にかけて売りあぐねたような素材は排除しなければレベルアップは望めまい。少なくとも「売れ残り馬に付加価値をつけて転売する」ような美味しい取引はほとんど実現しないものと思わなければならない。

 最後にもう一点だけ。韓国馬事会がこのセールでも数頭購買した。価格は押して知るべし、なのだが、明らかにお台付け価格が400万円や500万円にはなりそうな上場馬(まあ大半の馬がそうなのだが)に「130万円」「150万円」と声をかけ、場内を白けさせる場面が再々あった。上限200万円ならばいっそ最初からその意思を明示すべきだと思うのだが、どういうわけか“駆け引き”をしてしまうのだ。200万円でさえ、間違いなく赤字の取引にしかならない。だが、一声で「200万円」とコールしてそれで落札できなければその方がはるかに潔いではないか。それをじわじわと様子を窺うように「130万円」「150万円」「160万円」などと少しずつ価格を積み上げて行くやり方にはひどく違和感を感じたことを記しておく。モノには相場というものがあるのだ。こんな買い方では生産者(販売申込者)にとっては何のメリットもないどころか煩わしいだけであると言っておく。植木等が生きていたらきっと「お呼びでない」(シャボン玉ホリデーのコントの中の名台詞)と言ったことだろう。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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